GGR Issue Briefings / Working Papers

民主主義・人権プログラム

ミャンマー活動家の回想 ―祖国のために日本での苦難を乗り越え、レジリエンスを育む

著書名アウン ニン テ テ
出版日2024年7月1日

要旨*この論文は、2024年3月1日に実施されたインタビューをもとに作成された。

民主主義・人権プログラム

タイの憲法に見る政党結成の自由

著書名パリン・ジャルサヴィ(Parin Jaruthavee)
出版日2024年5月16日

要旨政党結成の自由は民主主義的価値の根本にあるが、タイではこの自由がしばしば見落とされる傾向がある。権利と自由を守るという本来の目的とは裏腹に、タイの憲法は、うかつにもこうした原則そのものを阻害している。結党に厳しい要件を課し、政党の解散を容易にすることで、憲法は政党に負担を課すだけでなく、政党結成の自由をも制限している。このような制約は、タイ国民の政治参加と代表性を著しく損なう。さらに、政党解散の容易性によりタイの政治状況は操作されることがあり、より広く見るとしばしば政治ゲームの戦略的なチェスの駒として利用される。こうした動きはタイの政治状況をさらに複雑化し、国民の声を真に反映するための憲法改正の必要性を浮き彫りにしている。

民主主義・人権プログラム

日本発の台湾に関する誤情報-ナラティブ分析と新たなナラティブの形成

著書名黒木美里 坂口聡 佐藤正宗
出版日2024年5月13日

要旨偽(誤)情報に対する懸念が高まるなか、どのように対処すればいいのであろうか。本稿は、日本国内から発せられた台湾に関する誤情報を用いて、この問題について検討する。日本経済新聞が2023年2月28日に掲載した「台湾の退役幹部の9割が中国に情報を売っている」との記事は、日本国内で議論を巻き起こしただけでなく、台湾政府が直接に内容の不正確さを指摘するまでに至った。本稿ではまず、この情報に関するファクトチェックを行い、誤情報である可能性が高いと分析する。次に、当該誤情報の対象となるペルソナと誤情報が持つナラティブの詳細な分析を通じて、本誤情報への対抗策を講じる。50歳の既婚者男性で、会社員で管理職を担い、世帯年収850万円、日経新聞の読者である人物をペルソナとして推定し、誤情報が反台湾感情を惹起しうると指摘する。ペルソナが高い関心を持つ経済の観点から対抗ナラティブを形成し、拡散の際の注意点にも触れる。最後に、本稿の限界を指摘しつつ、新聞記事であってさえ正確性に注意しなければならないと結論する。

民主主義・人権プログラム

私は東京に住むヤンゴン市民です -ジャーナリスト北角裕樹氏インタビュー

著書名チョン・ミンヒ
出版日2024年4月25日

要旨*本稿は、2024年3月11日に行われたインタビューをもとに作成された。

民主主義・人権プログラム

ジャーナリズムと文化的アイデアの視点から見た香港のアクティビズム

著書名スラストリ
出版日2024年4月24日

要旨*本稿は、2024年2月27日に行われたインタビューをもとに作成された。

民主主義・人権プログラム

中国・ジョージア関係 ―チェスボードの新たな一手か?

著書名アナ・ドリツェ
出版日2024年4月9日

要旨2024年1月13日、ジョージア与党のハイレベル代表団が中国を訪問した。中国とヨーロッパを結ぶ中央回廊イニシアティブ(Middle Corridor Initiative)に関連して、中国とのつながりを強化することを目的としていた。ジョージアが支持するこのイニシアティブは、ロシアを経由する北ルートが困難になったことでより一層重要性を増した。中国は、一帯一路構想への投資と参画を通して、ジョージアで活発に活動している。今回の訪問は、2023年の戦略的パートナーシップ声明の後に続くものであり、重要な節目となった。しかし、パートナーシップの具体的な性質は未だ漠然としており、ジョージアの外交政策の優先事項はロシアと西側の同盟国との関係に重点が置かれている。声明は政治的・経済的・文化的紐帯を深めることを目的とするものの、実質的な成果は不明瞭だ。コーカサス地域に対する歴史的な関心を念頭に置くと、ロシア、米国、トルコといった他の地域プレイヤーを考慮することが重要となる。ジョージアの中国への転換は外交政策のアプローチの変化を表している。しかし、コーカサスの複雑な地政学的ダイナミクスの中で、二国間関係への影響は不明瞭なままだ。

民主主義・人権プログラム

偽情報は世界最大の民主主義国をいかに蝕むか

著書名ニランジャン・サフー(Niranjan Sahoo)
出版日2024年3月29日

要旨インドは世界最大の民主主義国家であるにもかかわらず、新型コロナウィルス感染症(以下、コロナ)流行初期にフェイクニュースが急増するなど、重大な偽情報の危機に直面している。最近では、国民の半数以上が偽情報にさらされており、偽情報はインド国内の膨大なインターネット・ユーザーによって増幅されている。フェイクニュースの拡散には、与党インド人民党(Bharatiya Janata Party: BJP)の支援を受ける右派インフルエンサーが大きく寄与している。彼らはSNSを用いて分断を導くナラティブを広め、政敵を標的にしている。これは国内の緊張、特に宗教的少数派に対する憎悪感情を高めるだけでなく、インドの民主主義を弱体化させている。ファクトチェッカーや政府による一定の対策はあるものの、インドにおける偽情報対策は依然として一筋縄ではいかない。

民主主義・人権プログラム

デジタル影響工作対策の課題—なぜEU・アメリカは中露イランの手法に対応できないのか?

著書名一田和樹
出版日2024年3月11日

要旨EUやアメリカで行われているデジタル影響工作対策は偽情報への対処を中心としたもので、それに関連して海外からの干渉や大手SNSプラットフォームなどへの対処が含まれている。しかし、中露伊(中国、ロシア、イラン)の作戦の主たる狙いは相手国の国内にすでに存在する分断や不信を広げることであり、偽情報や大手SNSプラットフォームの利用はその方法のひとつにすぎない。中露伊は他の選択肢を用いてEUやアメリカの対策を回避できるためEUやアメリカの対策の効果は限られた範囲に留まっている。攻撃主体の狙いが相手国内の分断や不信である以上、防御側にとって自国の社会全体を含めた状況の把握は対処ならびに調査研究の前提となる。しかし実際の調査研究ではケーススタディが多く、全体像が調査研究されることは稀であるため有効な知見が乏しい。全体像を欠いた対症療法となっている現在の対策は無差別な警告を発する警戒主義に陥りがちで、結果として分断と不信を広げている可能性がある。デジタル影響工作への対策においては全体像の把握と共有を優先することが重要である。

民主主義・人権プログラム

断片化した声 ―香港と海外における民主主義をめぐる闘い

著書名アリック・リー
出版日2024年2月14日

要旨香港の状況は悪化している。活動家に対する地元当局の抑圧的な行動は増加し、抑圧の対象は国境を越えて海外の香港人にも及んでいる。活動家や支持者の逮捕、海外での法律執行の拡大から明らかなように、弾圧は自由と民主的価値の著しい侵食を象徴している。報道の自由と民主主義に関する世界的な指標における香港の順位の低下や、香港からの移民の顕著な増加は、このような悲惨な状況を反映している。しかし、時間の経過とともに、香港のディアスポラは、新しい環境における個々人の旅によって形成されるアイデンティティの変容を経験しており、コミュニティの感覚の変化が見られ、故郷の状況に対する反応には相違が生じている。この挑戦は、政治的抑圧、移住、アイデンティティ、自由と民主主義の尽きることのない探求といった、より広範なテーマを浮き彫りにしている。

民主主義・人権プログラム

現実の架け橋 ―VRの操作体験が、難民に対する認識にどう影響するか

著書名アンドリュー・キルパチ(Andrey Kirpach)
出版日2024年1月24日

要旨バーチャルリアリティ(VR)は、従来の媒体とは異なる有益な性質を持っているのだろうか?本研究では、共感誘発刺激として難民に関するドキュメンタリーを視聴した場合の効果を検証し、使用した媒体(VRとコンピュータースクリーン)に基づく効果の強さを比較する。本研究の一環として実施された実験では、VRが「イメージ他者」の視点を持つ課題に対してより効果的に共感を引き出すという証拠は得られなかった。一方で、パースペクティブ・テイキングのタイプ自体が重要な要因である可能性が示される。考察部では、実験結果を批判的文化研究(critical culture studies)の観点から国際関係の文脈におけるVR体験の批評と統合し、VR体験がどのように形成され、体験を生み出す権力構造によってどのように制限されるかを浮き彫りにする。