GGR Issue Briefings / Working Papers

民主主義・人権プログラム

中国・ジョージア関係 ―チェスボードの新たな一手か?

著書名アナ・ドリツェ
出版日2024年4月9日

要旨2024年1月13日、ジョージア与党のハイレベル代表団が中国を訪問した。中国とヨーロッパを結ぶ中央回廊イニシアティブ(Middle Corridor Initiative)に関連して、中国とのつながりを強化することを目的としていた。ジョージアが支持するこのイニシアティブは、ロシアを経由する北ルートが困難になったことでより一層重要性を増した。中国は、一帯一路構想への投資と参画を通して、ジョージアで活発に活動している。今回の訪問は、2023年の戦略的パートナーシップ声明の後に続くものであり、重要な節目となった。しかし、パートナーシップの具体的な性質は未だ漠然としており、ジョージアの外交政策の優先事項はロシアと西側の同盟国との関係に重点が置かれている。声明は政治的・経済的・文化的紐帯を深めることを目的とするものの、実質的な成果は不明瞭だ。コーカサス地域に対する歴史的な関心を念頭に置くと、ロシア、米国、トルコといった他の地域プレイヤーを考慮することが重要となる。ジョージアの中国への転換は外交政策のアプローチの変化を表している。しかし、コーカサスの複雑な地政学的ダイナミクスの中で、二国間関係への影響は不明瞭なままだ。

民主主義・人権プログラム

偽情報は世界最大の民主主義国をいかに蝕むか

著書名ニランジャン・サフー(Niranjan Sahoo)
出版日2024年3月29日

要旨インドは世界最大の民主主義国家であるにもかかわらず、新型コロナウィルス感染症(以下、コロナ)流行初期にフェイクニュースが急増するなど、重大な偽情報の危機に直面している。最近では、国民の半数以上が偽情報にさらされており、偽情報はインド国内の膨大なインターネット・ユーザーによって増幅されている。フェイクニュースの拡散には、与党インド人民党(Bharatiya Janata Party: BJP)の支援を受ける右派インフルエンサーが大きく寄与している。彼らはSNSを用いて分断を導くナラティブを広め、政敵を標的にしている。これは国内の緊張、特に宗教的少数派に対する憎悪感情を高めるだけでなく、インドの民主主義を弱体化させている。ファクトチェッカーや政府による一定の対策はあるものの、インドにおける偽情報対策は依然として一筋縄ではいかない。

民主主義・人権プログラム

デジタル影響工作対策の課題—なぜEU・アメリカは中露イランの手法に対応できないのか?

著書名一田和樹
出版日2024年3月11日

要旨EUやアメリカで行われているデジタル影響工作対策は偽情報への対処を中心としたもので、それに関連して海外からの干渉や大手SNSプラットフォームなどへの対処が含まれている。しかし、中露伊(中国、ロシア、イラン)の作戦の主たる狙いは相手国の国内にすでに存在する分断や不信を広げることであり、偽情報や大手SNSプラットフォームの利用はその方法のひとつにすぎない。中露伊は他の選択肢を用いてEUやアメリカの対策を回避できるためEUやアメリカの対策の効果は限られた範囲に留まっている。攻撃主体の狙いが相手国内の分断や不信である以上、防御側にとって自国の社会全体を含めた状況の把握は対処ならびに調査研究の前提となる。しかし実際の調査研究ではケーススタディが多く、全体像が調査研究されることは稀であるため有効な知見が乏しい。全体像を欠いた対症療法となっている現在の対策は無差別な警告を発する警戒主義に陥りがちで、結果として分断と不信を広げている可能性がある。デジタル影響工作への対策においては全体像の把握と共有を優先することが重要である。

民主主義・人権プログラム

断片化した声 ―香港と海外における民主主義をめぐる闘い

著書名アリック・リー
出版日2024年2月14日

要旨香港の状況は悪化している。活動家に対する地元当局の抑圧的な行動は増加し、抑圧の対象は国境を越えて海外の香港人にも及んでいる。活動家や支持者の逮捕、海外での法律執行の拡大から明らかなように、弾圧は自由と民主的価値の著しい侵食を象徴している。報道の自由と民主主義に関する世界的な指標における香港の順位の低下や、香港からの移民の顕著な増加は、このような悲惨な状況を反映している。しかし、時間の経過とともに、香港のディアスポラは、新しい環境における個々人の旅によって形成されるアイデンティティの変容を経験しており、コミュニティの感覚の変化が見られ、故郷の状況に対する反応には相違が生じている。この挑戦は、政治的抑圧、移住、アイデンティティ、自由と民主主義の尽きることのない探求といった、より広範なテーマを浮き彫りにしている。

民主主義・人権プログラム

現実の架け橋 ―VRの操作体験が、難民に対する認識にどう影響するか

著書名アンドリュー・キルパチ(Andrey Kirpach)
出版日2024年1月24日

要旨バーチャルリアリティ(VR)は、従来の媒体とは異なる有益な性質を持っているのだろうか?本研究では、共感誘発刺激として難民に関するドキュメンタリーを視聴した場合の効果を検証し、使用した媒体(VRとコンピュータースクリーン)に基づく効果の強さを比較する。本研究の一環として実施された実験では、VRが「イメージ他者」の視点を持つ課題に対してより効果的に共感を引き出すという証拠は得られなかった。一方で、パースペクティブ・テイキングのタイプ自体が重要な要因である可能性が示される。考察部では、実験結果を批判的文化研究(critical culture studies)の観点から国際関係の文脈におけるVR体験の批評と統合し、VR体験がどのように形成され、体験を生み出す権力構造によってどのように制限されるかを浮き彫りにする。

民主主義・人権プログラム

指数型分布族埋め込みで可視化するレコード・チャイナの言説

著書名呉 東文
出版日2023年12月25日

要旨本稿では、ベイズ機械学習の手法である指数型族埋め込みを利用して、レコード・チャイナ(Record China)から出版される記事の中にどのような言説が含まれているかを分析する。具体的には、指数型族埋め込みを利用してレコード・チャイナ記事の中の単語の意味を推定する。推定の結果、中国が自国の民主主義が優れているという主張と、アメリカこそが脅威になっているという言説が定量的に確認できた。今後データ量が拡張されれば、レコード・チャイナの言説の変化やレコード・チャイナの言説と日本の一般的なメディアの言説の違いなどの可視化も可能になるだろう。(論稿の内容はあくまでも個人の見解であり、著者が所属するディップ株式会社とは一切関係ない。)

民主主義・人権プログラム

構造トピックモデルを用いたレコード・チャイナの分析

著書名呉 東文
出版日2023年12月13日

要旨本稿では、レコード・チャイナ(Record China)のテキストデータを使用して、運営者がどのような言説を広めようとしているのかを分析する。分析を通じて、レコード・チャイナというサイト名を持っているものの、日韓関係の負の側面に関連する記事が多いことが判明した。具体的には、慰安婦問題や旭日旗をめぐる韓国の日本に対する批判や、韓国側の行動に関連する記事が見られる。また、中国関連の報道に関しては、中国が国際協調で影響力を発揮していることや、中国の経済力と技術力の高さを強調する内容が目立つ。これはいずれも中国がアメリカと対等な関係にあるか、もしくはアメリカを越えていることを見せようとしている意図が背後にあると思われる。これはいずれも一橋大学の市原麻衣子教授の過去の別手法・別データを使った研究でも実証されたことであるため、信憑性は高いといえよう。ただし、ここで強調しておきたいのは、本記事は二年間かつ単独のメディアのみを使った分析であるため、エビデンスの強さに限界がある。例えば、分析で判明した傾向は果たしてレコード・チャイナにしか見られない傾向なのか、それとも他の日本語のメディアにも見られるような言説なのかがわからない。これは、今後データを追加することでよりはっきり識別できる。

民主主義・人権プログラム

2023年マレーシア州議会選挙 —「統一政府」の展望—

著書名ムハマド・タキユディン・イスマイル
出版日2023年11月27日

要旨2022年11月に行われた前回のマレーシア総選挙(GE15)以降、マレーシアの政治情勢は大きく変化し、特にパカタン・ハラパン=バリサン・ナショナル(PH-BN)連立政権といった新たな政治連合の形成が注目された。しかしながら、「統一政府」と呼ばれ、アンワル・イブラヒム(Anwar Ibrahim)率いるPH-BNは、マレー系有権者から確実な支持を得ることはできなかった。2023年8月に行われたマレーシア州議会選挙の結果は、PH-BNがペリカタン・ナショナル(Perikatan Nasional:PN)に精神的敗北(moral defeat)を喫したことで、このシナリオをさらに裏付けるものとなった。マレー系有権者をなだめるためにマレーシア政府がより保守的になるかどうかは、現時点では不明である。

民主主義・人権プログラム

ミャンマー紛争地への人道支援 ―現地の状況

著書名今村真央
出版日2023年11月28日

要旨ミャンマーでは、人道支援活動の内容と効果の検証が求められている一方で、検証する方法が欠如しているという状況が長らく続いた。ヒューマニタリアン・アウトカムズ(Humanitarian Outcomes: HO)の調査は遠隔アンケートを用いて、ミャンマーで実施されている多様な人道支援活動の効果について有用な示唆に富んでいる。国際機関が展開する公式の援助プログラムが厳しい制限を受けていること、一方でインフォーマルな支援活動がミャンマーの広い範囲において既に浸透していることをHOの調査結果は示している。

民主主義・人権プログラム

アメリカにおけるESG投資の拡大と論争 ―グローバル・ガバナンスへの示唆

著書名御代田 有希
出版日2023年11月3日

要旨2015年に持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)が採択されて以来、環境(Environment)、社会(Social)、コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance)から構成されるESG投資が注目を集めている。ESG投資には、持続可能な社会を実現しようとする社会的な使命を持つ人々、リスクに敏感な投資家、学界などのさまざまなステークホルダーから関心が寄せられている。しかしアメリカではESGに反対する動きが拡大しており、共和党議員はESG関連の財務リスク管理を妨げ、ESG投資の成長を阻害しようとしている。本稿は、アメリカにおけるESG投資を巡る対立の背景と理由を探り、グローバル・ガバナンスに対する示唆を検討する。

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その他の研究成果

グローバルリスク・危機管理プログラム

グローバル・ヘルスレジームにおける調査・検証権限の制度的考察

著書名秋山信将
出版日2023年11月25日

要旨2023年11月25日、法学研究科の秋山信将教授が執筆した論文、「グローバル・ヘルスレジームにおける調査・検証権限の制度的考察」が『国際政治』第211号「ヘルスをめぐる国際政治」に掲載されました。本論文では、国家主権が前面に押し出されてくる国家安全保障上の脅威に近い感染症パンデミック危機の中で、国際レジームの提供する価値と規範の実効性が担保されるための要因が分析されています。秋山教授はまず、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)の包括的保障措置協定の追加議定書や化学兵器禁止条約(Chemical Weapons Convention)のチャレンジ査察の事例を取り上げ、国家主権を制約する制度の導入が可能になる要因として、技術的実現可能性、社会的要請、政治環境、主権国家の裁量が制度的、政治的に可能になっていることを整理しました。次に、国家と世界保健機関(World Health Organization)の関係性の観点から、国際保健規則(International Health Regulations)の改正とパンデミック時の情報共有及び報告をめぐる制度上の問題を論じています。最後に、公衆衛生分野における国際レジームを通じた感染症対策の実効性向上のために、求められる国際機関の役割と国家主権の対立を乗り越えるための方策について提言しています。

連合国の戦後構想と憲章体制へ ―国際刑事法と国際人権法の飛躍的発達

著書名竹村仁美
出版日2023年7月31日

要旨2023年7月31日に、法学研究科教授の竹村仁美教授が分担執筆した『国際人権法の歴史』が出版されました。教授は、「連合国の戦後構想と憲章体制へ ―国際刑事法と国際人権法の飛躍的発達」という章を執筆しています。本稿では、連合国の秩序構想の背景と、戦争犯罪に対する国際的裁判が行われた過程と意義が論じられています。竹村教授はまず、ニュルンベルク裁判と東京裁判で得た教訓としては、ニュルンベルク判決の認めた諸原則が国連総会にて採択されたこと、そして平和に対する罪と人道に対する犯罪が国際法上の犯罪であることが確立したことなどが挙げられると指摘しました。そして、国連憲章体制と国際人権章典の構想・起草に関する歴史を振り返り、ホロコーストが国際人権保障に与えた影響はいかなるものであるかを論じました。最後に、連合国の戦後国際秩序構想が人間的価値の尊重、正義の実現といった普遍的価値を持っていたからこそ、国連が普遍的国際組織として認識されることになり、国際人権法が諸国に支持されるようになったと結論付けました。

民主主義・人権プログラム

日韓はアジアの難民も支援を 〈多思彩々〉

著書名市原麻衣子
出版日2023年8月6日

要旨2023年8月6日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した論考、「日韓はアジアの難民も支援を」が『信濃毎日新聞』に掲載されました。本論考は、ウクライナと同様またはそれ以上に、アジアでも大量に発生している難民を目の当たりにしている日本と韓国が示すべき姿勢を概説しています。市原教授は、まずアフガニスタンとシリアではウクライナと同数、またはそれを超える数の難民が発生していることを説明し、それにもかかわらずなぜこれらの国々が報道で取り上げられないかを分析しました。教授は主権侵害の状況がわかりやすく描写されているウクライナ侵攻に対し、一見国内の政治情勢に起因する難民発生が主権とは無関係に見えるというわかりやすさの違いが差を生んでいると指摘しました。また、攻撃を受けるウクライナと侵攻を行ったロシアという善悪の構図が鮮明に描かれている一方で、その他の国では善悪の枠組みを示すことが難しいことも理由であると論じました。最後に、市原教授は日韓の政府に対し、客観的かつ信頼される難民支援のための、アジアの人道的支援への協力の必要性を論じました。

民主主義・人権プログラム

イスラエル・ハマスを巡る虚偽情報とナラティブにみる国際政治の変容

著書名市原麻衣子
出版日2023年12月8日

要旨2023年12月8日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「イスラエル・ハマスを巡る虚偽情報とナラティブにみる国際政治の変容」が『Foresight』に掲載されました。本記事で市原教授は、イスラエルとハマスを巡る誤情報・偽情報が乱れ飛んでおり、他国政府、政党、トロール、陰謀論者など、多様なレベルのアクターが情報空間を歪め、無視できない影響を与えていると指摘しました。市原教授は、偽情報の拡散メカニズムについて、関心経済モデルが用いられ、情報の真偽や質よりも人々の関心を引き感情に訴えるコンテンツが拡散され、そうした感情に訴える虚偽のコンテンツが驚異的な速度でネット上に拡散されていると説明しました。ファクトチェックやメディアリテラシー教育の必要性が指摘される中、偽情報の出現速度がファクトチェックの速度を大幅に上回ること、人々の感情と行動を操ろうとするアクターは必ずしも偽情報ばかりを拡散するわけではないこと、影響工作を行うアクターが情報ロンダリングを行うこと等から、その効果の限界についても述べられました。最後に市原教授は、軍事力だけでなく情報が、そして当事国だけでなく様々な種類のアクターが影響力を持つ時代にあって、感情と情報に駆り立てられた人々が形成する国際政治を理解し分析するための分析枠組みが必要であると強調しました。

民主主義・人権プログラム

ミャンマー問題、解決へ岐路

著書名市原麻衣子
出版日2023年11月12日

要旨2023年11月12日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「ミャンマー問題、解決へ岐路」が『信濃毎日新聞』に掲載されました。本記事は、ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が続き、同時進行で勃発する深刻な紛争による世界情勢の不安的化が懸念される中で、世界からの支援も注目も受けることのできないまま継続しているミャンマーにおける内戦に焦点を当てて論じられています。市原教授は、2021年にクーデターを起こして政権を乗っ取った国軍に対し、民主派の挙国一致政府(NUG)と少数民族が、各地で抵抗し続けており、その中でも北東部で開始された「1027作戦」の行方は今後の局面を占うことになると指摘しました。また、北東部における戦闘で生まれた多くの避難民は深刻な食料不足に直面していると述べました。このような状況下でも尚国際社会は実質的な支援を行っておらず、これ以上一般市民の犠牲を防ぐために、アジアの大国としての日本が主導して、ミャンマー問題の解決に動くべきであると強調しました。

民主主義・人権プログラム

「ボリックと彼の中国批判の蜃気楼」に関する論説 [in English]

著書名ハニグ ヌニェズ・サッシャ
出版日2023年10月24日

要旨2023年10月24日、エル・エスペクタドール紙に、法学研究科博士課程在籍のサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏による「ボリックと中国批判の蜃気楼」と題する論説が掲載されました。この記事は、チリ大統領の普遍的人権に関する立場と、彼が中国を訪問した1週間後にスピーチを急遽変更した事例、これらの批判に報復する国々に対抗する際に中小国が負うリスクに関する内容です。ヌニェズ氏は、今日の小国には明確な立場を取る余地があり、人道的紛争においてもそうする権利を持つものの、強力な国際社会なしには不可能であると論じています。また、発展途上国は、自国の経済的潜在力、自由、国際関係に影響を及ぼす可能性のある立場を取ることに慎重な場合が多く、このことは、チリや他の国々がニカラグアやベネズエラの人権問題を批判する明確な立場をとりながら、中国の人権問題を批判しないことの説明にもなるとコメントしました。この記事は8カ国で、『ラ・ナシオン』や『エル・ピタソ』など10のメディアに掲載されています。

グローバルリスク・危機管理プログラム

日本はどのように拡大抑止の信頼性を強化すべきか? [in English]

著書名秋山信将
出版日2023年10月16日

要旨2023年10月16日に、国際・公共政策大学院院長の秋山信将教授が執筆した論文、「日本はどのように拡大抑止の信頼性を強化すべきか?」が日本国際問題研究所のAJISS-Commenttaryに掲載されました。本論文では、ロシアのウクライナ侵攻を経て、拡大抑止への信頼が揺らぐ国際情勢において、日本の拡大抑止の信頼性を高める努力としての「拒否的抑止」にとどまらない「懲罰的抑止」能力の構築、脅威削減のための外交的イニシアティブを追求することの重要性に関して考察しています。秋山教授は、日本の安全保障にとって米国との拡大抑止体制の強化が不可欠であることは当然だが、今必要なのは、日米が他のパートナー諸国と協力して、抑止体制を構成する戦略資産を構築するために迅速に実施できる行動計画、脅威の状況に応じて最適化された戦略資産を効果的に運用するための日米同盟の調整メカニズム、そして確固たる政治的基盤であると指摘しました。また、東アジアの地域レベルで中国による強圧的な行動の余地を増やさないようにするため、日米をはじめとするパートナー諸国が、中国や北朝鮮に対して緊密に連携した統一的なシグナルを発信することが不可欠であり、それと同時に、危機の安定を確保し、将来の軍備管理につながる信頼を構築するために、中国や北朝鮮との戦略的対話を通じた外交努力が必要であると述べました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

核軍備管理・軍縮の新しいフェーズ

著書名秋山信将
出版日2023年7月31日

要旨2023年7月31日に、国際・公共政策大学院院長の秋山信将教授が執筆した論文、「核軍備管理・軍縮の新しいフェーズ」が『外交』に掲載されました。本論文は、大国間の軍備管理に必要なレジームの新たな構造計算の構成要素の分析と、その帰結としての核軍縮の基盤を築く方法について考察しています。秋山教授は、冷戦期に構築された軍備管理レジームにおける関連国の目的とレジームを維持させた諸原理がもはや十分に機能していないと指摘しました。その原因として、軍備管理レジームの当事国間の政治的関係の最低限の見解の一致、すなわちガードレールに対して見解の乖離が発生していると論じました。さらに、中国の台頭により、技術的・量的な軍備拡大と中国が有する軍備にかかわる戦略・戦力の不透明性故に、軍備管理レジーム再構築に複雑性が増したと説明しました。これらの問題を目前に、秋山教授は大国間の核政策における原理的見解の差異を解消し、そして外交や経済をも組み合わせて危機を管理する統合軍備管理が必要であると述べました。

民主主義・人権プログラム

中ロの選挙介入に揺れる米国

著書名市原麻衣子
出版日2023年7月31日

要旨2023年7月31日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した論文、「中ロの選挙介入に揺れる米国」が『外交』に掲載されました。本論文は、2022年の米中間選挙を事例に中ロの選挙介入の活発化と米国への影響を分析しています。市原教授は、ロシアと中国は米国社会を分断させるための偽情報拡散を含む影響工作を行っており、中でも22年の中間選挙は2016年から介入が確認できたロシアに加えて選挙介入を躊躇した中国が方向転換して介入を開始した選挙であったと論じています。また、市原教授は米国内で市民、立法府、そして司法府の領域を横断して対抗策に向けた動きがみられる一方で、それに反対する意見も存在し、揺れ戻しが発生していると論じました。最後に、教授は今後行うべき対応として、民間主導の偽情報対策を講じること、国内の分断の原因になっている制度を是正すること、そして国内の経済格差を是正することを強調しました。

民主主義・人権プログラム

G7が築いた国際連携の両義性──メディアに求められる新たな秩序像の提言

著書名市原麻衣子
出版日2023年7月

要旨2023年7月に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した論文、「G7が築いた国際連携の両義性──メディアに求められる新たな秩序像の提言」が新聞研究に掲載されました。本論文は、G7広島サミットの成果と課題を、海外からの評価を参照し分析する内容です。市原教授は、まず広島サミットで安全保障秩序に対するG7間の結束及びG7を超えた国際連携の構築を目指すことを明らかにしたと論じました。また、教授は今回のサミットでは中露を国際秩序への挑戦者と位置づけその脅威を確認したと説明しました。さらに、市原教授は広島サミットが民主主義に言及するスタンスにおいて、秩序の現状維持に留まっていると主張しました。そして民主主義を弱体化させる国内の要因を過小評価していることに問題があると指摘しました。最後に、教授は人間の尊厳が守られる国際秩序像の形成に貢献するメディアの役割を期待すると述べました。

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