その他の研究成果

民主主義・人権プログラム

ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ [in English]

著書名サッシャ・ハニグ・ヌニェズ
出版日2024年2月13日

要旨2024年2月13日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏が執筆した記事、「ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ」がThe Diplomatに掲載されました。本記事でハニグ氏は、中国の国営メディアには共通の目的があり、習近平主席からの指示の下、北京の視点に沿った世論の形成が目指されていると述べました。その中で、中央広播電視総台が運営するスペイン語チャンネルの中国国際電視台(China Global Television Network: CGTN)と新華通信社、中国中央電視台(China Central Television: CCTV)は、異なる戦略を採用し、視聴者への影響力は限定的であるが、特定のトピックに関する動画はより多くの関心を集めており、例えば、文化的な問題や地域の危機に関する動画は、視聴者からの反応が高い傾向にあると指摘しました。

民主主義・人権プログラム

TikTokが安全保障に与える影響とTikTok規制の現在

著書名サッシャ・ハニグ・ヌニェズ、市原麻衣子
出版日2024年2月1日

要旨2024年2月1日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏と法学研究科の市原麻衣子教授による共著論文、「TikTokが安全保障に与える影響とTikTok規制の現在」が『情報法制研究』から出版されました。本論考でハニグ氏と市原教授はまず、中国政府が企図するナラティブ形成におけるメディアとSNSプラットフォームの役割について論じました。その上で、TikTokが引き起こす懸念について安全保障上の懸念、アルゴリズムとAIの入力バイアス、若年層と誤解を招く情報、民主主義の観点からの議論などの四つの側面から論じました。その後、欧米におけるTikTok規制の内容を検討し、最後に今後日本が取るべき措置について提言しました。日本は、国家安全保障や子どもの権利などを保護しつつ、恣意性を排除することが求められており、そのためにはSNSプラットフォーム分析、中国の国内法が及ぼす影響を視野に入れた規制の検討、プライバシー権保護を巡る法整備が重要であると論じました。

民主主義・人権プログラム

敵対国を内側から攻撃する影響工作:中国が「語らないもの」の政治性

著書名敵対国を内側から攻撃する影響工作:中国が「語らないもの」の政治性
出版日2024年1月25日

要旨2024年1月25日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「敵対国を内側から攻撃する影響工作:中国が「語らないもの」の政治性」が『nippon.com』に掲載されました。本記事で市原教授は、中国による影響工作の近年における手段・規模の拡大と主な目的について論じています。市原教授は習近平政権下での中国共産党の影響工作は、対外宣伝の強化や対外偽情報の利用など、攻撃的に展開されてきたと述べました。また、香港のデモや新型コロナウイルス流行を受けて国際的な非難が高まる中、中国共産党を美化する一方で米国の対応を批判するナラティブを拡散したと指摘しました。そして、中国共産党が影響工作を行う目的は民主主義国を内側から弱体化させることにあるとした上で、その典型例として処理水の海外放出を巡る偽情報の問題を取り上げました。最後に、影響工作のターゲットは我々個々人であり、情報発信者の政治性を意識したうえで情報を摂取することの重要性を強調しました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

グローバル・ヘルスレジームにおける調査・検証権限の制度的考察

著書名秋山信将
出版日2023年11月25日

要旨2023年11月25日、法学研究科の秋山信将教授が執筆した論文、「グローバル・ヘルスレジームにおける調査・検証権限の制度的考察」が『国際政治』第211号「ヘルスをめぐる国際政治」に掲載されました。本論文では、国家主権が前面に押し出されてくる国家安全保障上の脅威に近い感染症パンデミック危機の中で、国際レジームの提供する価値と規範の実効性が担保されるための要因が分析されています。秋山教授はまず、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)の包括的保障措置協定の追加議定書や化学兵器禁止条約(Chemical Weapons Convention)のチャレンジ査察の事例を取り上げ、国家主権を制約する制度の導入が可能になる要因として、技術的実現可能性、社会的要請、政治環境、主権国家の裁量が制度的、政治的に可能になっていることを整理しました。次に、国家と世界保健機関(World Health Organization)の関係性の観点から、国際保健規則(International Health Regulations)の改正とパンデミック時の情報共有及び報告をめぐる制度上の問題を論じています。最後に、公衆衛生分野における国際レジームを通じた感染症対策の実効性向上のために、求められる国際機関の役割と国家主権の対立を乗り越えるための方策について提言しています。

連合国の戦後構想と憲章体制へ ―国際刑事法と国際人権法の飛躍的発達

著書名竹村仁美
出版日2023年7月31日

要旨2023年7月31日に、法学研究科教授の竹村仁美教授が分担執筆した『国際人権法の歴史』が出版されました。教授は、「連合国の戦後構想と憲章体制へ ―国際刑事法と国際人権法の飛躍的発達」という章を執筆しています。本稿では、連合国の秩序構想の背景と、戦争犯罪に対する国際的裁判が行われた過程と意義が論じられています。竹村教授はまず、ニュルンベルク裁判と東京裁判で得た教訓としては、ニュルンベルク判決の認めた諸原則が国連総会にて採択されたこと、そして平和に対する罪と人道に対する犯罪が国際法上の犯罪であることが確立したことなどが挙げられると指摘しました。そして、国連憲章体制と国際人権章典の構想・起草に関する歴史を振り返り、ホロコーストが国際人権保障に与えた影響はいかなるものであるかを論じました。最後に、連合国の戦後国際秩序構想が人間的価値の尊重、正義の実現といった普遍的価値を持っていたからこそ、国連が普遍的国際組織として認識されることになり、国際人権法が諸国に支持されるようになったと結論付けました。

民主主義・人権プログラム

日韓はアジアの難民も支援を 〈多思彩々〉

著書名市原麻衣子
出版日2023年8月6日

要旨2023年8月6日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した論考、「日韓はアジアの難民も支援を」が『信濃毎日新聞』に掲載されました。本論考は、ウクライナと同様またはそれ以上に、アジアでも大量に発生している難民を目の当たりにしている日本と韓国が示すべき姿勢を概説しています。市原教授は、まずアフガニスタンとシリアではウクライナと同数、またはそれを超える数の難民が発生していることを説明し、それにもかかわらずなぜこれらの国々が報道で取り上げられないかを分析しました。教授は主権侵害の状況がわかりやすく描写されているウクライナ侵攻に対し、一見国内の政治情勢に起因する難民発生が主権とは無関係に見えるというわかりやすさの違いが差を生んでいると指摘しました。また、攻撃を受けるウクライナと侵攻を行ったロシアという善悪の構図が鮮明に描かれている一方で、その他の国では善悪の枠組みを示すことが難しいことも理由であると論じました。最後に、市原教授は日韓の政府に対し、客観的かつ信頼される難民支援のための、アジアの人道的支援への協力の必要性を論じました。

民主主義・人権プログラム

イスラエル・ハマスを巡る虚偽情報とナラティブにみる国際政治の変容

著書名市原麻衣子
出版日2023年12月8日

要旨2023年12月8日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「イスラエル・ハマスを巡る虚偽情報とナラティブにみる国際政治の変容」が『Foresight』に掲載されました。本記事で市原教授は、イスラエルとハマスを巡る誤情報・偽情報が乱れ飛んでおり、他国政府、政党、トロール、陰謀論者など、多様なレベルのアクターが情報空間を歪め、無視できない影響を与えていると指摘しました。市原教授は、偽情報の拡散メカニズムについて、関心経済モデルが用いられ、情報の真偽や質よりも人々の関心を引き感情に訴えるコンテンツが拡散され、そうした感情に訴える虚偽のコンテンツが驚異的な速度でネット上に拡散されていると説明しました。ファクトチェックやメディアリテラシー教育の必要性が指摘される中、偽情報の出現速度がファクトチェックの速度を大幅に上回ること、人々の感情と行動を操ろうとするアクターは必ずしも偽情報ばかりを拡散するわけではないこと、影響工作を行うアクターが情報ロンダリングを行うこと等から、その効果の限界についても述べられました。最後に市原教授は、軍事力だけでなく情報が、そして当事国だけでなく様々な種類のアクターが影響力を持つ時代にあって、感情と情報に駆り立てられた人々が形成する国際政治を理解し分析するための分析枠組みが必要であると強調しました。

民主主義・人権プログラム

ミャンマー問題、解決へ岐路

著書名市原麻衣子
出版日2023年11月12日

要旨2023年11月12日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「ミャンマー問題、解決へ岐路」が『信濃毎日新聞』に掲載されました。本記事は、ロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が続き、同時進行で勃発する深刻な紛争による世界情勢の不安的化が懸念される中で、世界からの支援も注目も受けることのできないまま継続しているミャンマーにおける内戦に焦点を当てて論じられています。市原教授は、2021年にクーデターを起こして政権を乗っ取った国軍に対し、民主派の挙国一致政府(NUG)と少数民族が、各地で抵抗し続けており、その中でも北東部で開始された「1027作戦」の行方は今後の局面を占うことになると指摘しました。また、北東部における戦闘で生まれた多くの避難民は深刻な食料不足に直面していると述べました。このような状況下でも尚国際社会は実質的な支援を行っておらず、これ以上一般市民の犠牲を防ぐために、アジアの大国としての日本が主導して、ミャンマー問題の解決に動くべきであると強調しました。

民主主義・人権プログラム

「ボリックと彼の中国批判の蜃気楼」に関する論説 [in English]

著書名ハニグ ヌニェズ・サッシャ
出版日2023年10月24日

要旨2023年10月24日、エル・エスペクタドール紙に、法学研究科博士課程在籍のサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏による「ボリックと中国批判の蜃気楼」と題する論説が掲載されました。この記事は、チリ大統領の普遍的人権に関する立場と、彼が中国を訪問した1週間後にスピーチを急遽変更した事例、これらの批判に報復する国々に対抗する際に中小国が負うリスクに関する内容です。ヌニェズ氏は、今日の小国には明確な立場を取る余地があり、人道的紛争においてもそうする権利を持つものの、強力な国際社会なしには不可能であると論じています。また、発展途上国は、自国の経済的潜在力、自由、国際関係に影響を及ぼす可能性のある立場を取ることに慎重な場合が多く、このことは、チリや他の国々がニカラグアやベネズエラの人権問題を批判する明確な立場をとりながら、中国の人権問題を批判しないことの説明にもなるとコメントしました。この記事は8カ国で、『ラ・ナシオン』や『エル・ピタソ』など10のメディアに掲載されています。

グローバルリスク・危機管理プログラム

日本はどのように拡大抑止の信頼性を強化すべきか? [in English]

著書名秋山信将
出版日2023年10月16日

要旨2023年10月16日に、国際・公共政策大学院院長の秋山信将教授が執筆した論文、「日本はどのように拡大抑止の信頼性を強化すべきか?」が日本国際問題研究所のAJISS-Commenttaryに掲載されました。本論文では、ロシアのウクライナ侵攻を経て、拡大抑止への信頼が揺らぐ国際情勢において、日本の拡大抑止の信頼性を高める努力としての「拒否的抑止」にとどまらない「懲罰的抑止」能力の構築、脅威削減のための外交的イニシアティブを追求することの重要性に関して考察しています。秋山教授は、日本の安全保障にとって米国との拡大抑止体制の強化が不可欠であることは当然だが、今必要なのは、日米が他のパートナー諸国と協力して、抑止体制を構成する戦略資産を構築するために迅速に実施できる行動計画、脅威の状況に応じて最適化された戦略資産を効果的に運用するための日米同盟の調整メカニズム、そして確固たる政治的基盤であると指摘しました。また、東アジアの地域レベルで中国による強圧的な行動の余地を増やさないようにするため、日米をはじめとするパートナー諸国が、中国や北朝鮮に対して緊密に連携した統一的なシグナルを発信することが不可欠であり、それと同時に、危機の安定を確保し、将来の軍備管理につながる信頼を構築するために、中国や北朝鮮との戦略的対話を通じた外交努力が必要であると述べました。