その他の研究成果

EUにおける一事不再理(ne bis in idem)原則と相互信頼

著書名中西優美子
出版日2023年7月

要旨2023年7月に、法学研究科の中西優美子教授が執筆した判例研究、「EUにおける一事不再理(ne bis in idem)原則と相互信頼」が『自治研究』に掲載されました。この判例研究は、2016年に判示されたKowwowski事件(C-486/14)を取り扱っています。この事件では、刑事法における重要原則の1つとして捉えられる、一事不再理原則の適用が問題となっています。一事不再理原則は、日本法でも見られるものですが、EUにおいては、1か国ではなく、EU構成国全体に適用されることになっています。そのため、構成国間の相互信頼が重要になってきます。EU司法裁判所は、一事不再理の原則と相互信頼の間のバランスをとったものであると評価しました。

EUと新しい資本主義・民主主義

著書名中西優美子
出版日2023年6月22日

要旨2023年6月22日に、法学研究科の中西優美子教授が分担執筆した報告書、「EUと新しい資本主義・民主主義」が21世紀政策研究所に掲載されました。本報告書では、経済成長を優先させる新自由主義的な資本主義と民主主義が内包している問題を反省し、アップデートに向けてEUにおける資本主義と民主主義の在り方を検討しています。中西教授は、「GXと新しい資本主義」と「EUにおけるサステナビリティと将来世代」の項を担当しています。「GXと新しい資本主義」の項では、社会のあるべき姿について長期的なビジョンを提示する循環経済の概念とその実施、そして若者を中心に企業に対して責任を追及する気候訴訟について説明しています。「EUにおけるサステナビリティと将来世代」においては、将来世代を意識した文書が増えていると同時に、中には拘束力を有する規定も制定されていると述べています。

民主主義・人権プログラム

アジアにおける国境を超える影響工作と人権への影響 [In English]

著書名市原麻衣子
出版日2023年6月28日

要旨2023年6月28日に一橋大学法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した論文「アジアにおける国境を超える影響工作と人権への影響」がGlobal Asiaに掲載されました。本論文は、権威主義国家による越境的な影響工作、とりわけ中国のアジア諸国に対する工作の構造とその影響を解説しています。市原教授は、中国の影響工作の影響を最も多く受けている地域がアジアであると指摘しています。権威主義国家の影響工作が他国家の経済的不平等と政治的分断、そして市民の行動傾向を利用していると説明しています。また、諸人権を攻撃の的にしている影響工作は、権威主義国家内で発生している人権問題や政治的不安定性を隠すのが目的であると論じています。最後に、市原教授は影響工作に関する最先端の研究、ファクトチェック、カウンターナラティブの形成を通じた対抗手段の必要性を強調しています。

EUにおける人権・環境デューディリジェンス

著書名中西優美子
出版日2023年5月

要旨2023年5月に、法学研究科の中西優美子教授が行った公開講義の論考、「EUにおける人権・環境デューディリジェンス」が『如水会々報』にて掲載されました。本論考は、環境の保護と人権の尊重に関連して、EUがいかなる措置をとっているか、そして企業と社会に期待されるあるべき姿は何かを説明しています。中西教授は、EUでは環境と人権に関する行動計画の策定やその着実な実施のための文書、そして構成国に法的義務を課す法律等が採択されていると概説しました。また、教授は定められた法律を企業に遵守させるためのメカニズムが講じられており、NGOや国民が国を相手に訴訟を提起していると述べました。最後に、中西教授は人権の尊重と環境保護の責任は消費者と投資家にもあること、そして将来世代を考えて行動する必要性があることを強調しました。

民主主義・人権プログラム

日本の民主主義におけるデジタル分野課題への取り組みの漸進的な動き [in English]

著書名市原麻衣子
出版日2023年4月28日

要旨2023年4月28日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した論文、「日本の民主主義におけるデジタル分野の課題への取り組みの漸進的な動き」がAsia Democracy Research Networkから出版されました。本論文は、民主主義において必ずしもプラスに働くとは限らないデジタル技術に関する考察と、関連問題に対する近年の日本の取り組みを紹介しています。市原教授は、デジタル分野の発展は市民間不信、個人情報保護の侵害、そして政府による抑圧の容易化等の問題が発生していると指摘しました。これらの問題に対し、日本政府が輸出規制や人権に対するイニシアティブの発揮、偽情報に対抗するポジションの新設、ファーウェイへの規制等、諸処置に取り組んでいると説明しました。最後に、市原教授は偽情報が作り出すナラティブに対抗するナラティブが必要であり、そのためには権威主義アクターの戦略を特定した上でのナラティブ形成をすべきであると論じました。

日本・EU間の経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定 (SPA)の発展―環境・エネルギー事項を中心に―

著書名中西優美子
出版日2023年3月

要旨2023年3月に、法学研究科の中西優美子教授が共同執筆した報告書、「日本・EU間の経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定 (SPA)の発展―環境・エネルギー事項を中心に―」が日本エネルギー研究所にて掲載されました。本報告書は、日本とEUの間で結ばれた経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定(SPA)の意義と今後の展開を、コロナ禍や気候変動、ウクライナ戦争等の世界情勢の変化を考慮して考察しています。中西教授は、EPAに関して気候変動を意識したうえで、エネルギー効率を促進する協力の在り方の側面があると説明しました。他方、SPAについては気候変動問題に加えてウクライナ戦争が発生する中、SPAに法的基盤の構築と役割と法的拘束力を与える文がみられると述べました。最後に、近年の日EU定期首脳会談では両協定の運用に関する具体的で実質的な議論が行われており、エネルギー問題の顕著化に対応する重要な協力体制になると評価しました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

(私の視点)広島ビジョンの意義:首脳らを包摂、被爆地の力 秋山信将

著書名秋山信将
出版日2023年6月2日

要旨2023年6月2日に、朝日新聞にて国際・公共政策大学院長の秋山信将教授の論考「(私の視点)広島ビジョンの意義:首脳らを包摂、被爆地の力」が掲載されました。本記事では、G7サミットが核軍縮において持つ意義が論じられました。秋山教授は、G7広島サミットにおける主要な2つのキーワードであった規範と責任を核軍縮の観点から分析しました。秋山教授は、G7参加国による核戦争反対への共同声明は、戦後長らく守られてきた核兵器不使用の規範の重要性を再確認していると説明しました。また、責任に関しては、国民の安全を守る責任と「核なき世界」を実現する責任、この2つの責任が政治指導者にあることが確認されたと論じました。最後に、秋山教授は広島サミットの経験が直ちに政策に反映されるとは信じがたいが、規範と責任の自覚がいずれ大きな力になるはずと評価しました。

女性に対する暴力及びDVの防止に関するイスタンブール条約をめぐるEUの締結権限と締結手続

著書名中西優美子
出版日2023年5月

要旨2023年5月に、一橋大学大学院法学研究科の中西優美子教授が執筆した論文、「女性に対する暴力及びDVの防止に関するイスタンブール条約をめぐるEUの締結権限と締結手続」が自治研究にて掲載されました。本論文は、女性に対する暴力及びDVの防止に関する条約、いわゆるイスタンブール条約をめぐってのEUの権限に対する裁判所意見を取り扱っています。本件において裁判所はEUと構成国とが共有する対外権限を有する分野、要するにEUが排他的権限を有する分野でない場合でも、EUが単独で国際条約を締結することが可能と判示しました。また、本件の裁判所意見がすべてのEU構成国が参加していない混合協定での締結の可能性を示唆したことから、今後同様の条約における批准が増える可能性があると中西教授は評価しました。

EU法の優位原則と国内裁判所の先決裁定を求める権利の保障

著書名中西優美子
出版日2023年2月

要旨2023年2月に、一橋大学法学研究科教授の中西優美子教授が執筆した論文、「EU法の優位原則と国内裁判所の先決裁定を求める権利の保障」が自治研究から出版されました。本論文は、ルーマニアにおいて法の支配や裁判官等に対する懲罰責任が問題となった事件で、EU法の優位原則と国内裁判所の先決裁定手続きの意義について解説しています。中西教授は、本判決で司法裁判所がEU法に反する場合、上位の裁判所たる憲法裁判所の判決であっても無視することを国内の通常裁判所に義務付けたことと、同様に下級審の通常裁判所が司法裁判所に先決裁定を求める権利は憲法裁判所の判決を問わず保証されると判断を下していると説明しました。また、中西教授は通常裁判所が「EU」裁判所として司法裁判所との協力関係を尊重する点に注目しつつも、EU法の優位性自体が特定の規定に基づくものではなく、司法裁判所の排他的管轄権も同じく解釈によるものである等の問題が残っていると評価しました。

ロヒンギャ危機と国際刑事裁判所 [in English]

著書名竹村仁美
出版日2023年5月31日

要旨2023年5月31日に、一橋大学大学院法学研究科の竹村仁美教授の著書、『ロヒンギャ危機と国際刑事裁判所』がシュプリンガー社から出版されました。この書籍は、国際刑事裁判所(ICC)とロヒンギャ危機の関係を厳密に検証しています。本書は、特にICCとロヒンギャ問題との関連に焦点を当てながら、ICCの現代的課題を浮き彫りにしています。ミャンマーはICC規程の非締約国であることから、ロヒンギャ危機とICCの関係は複雑になっています。本書は、現在進行中のこの問題について最新の情報をもとに国際法の観点から分析を行うものです。竹村教授は、ロヒンギャ危機の歴史の説明、ロヒンギャ危機とICCの関係性、ICJのガンビア対ミャンマー事件とICCの進展との関連の議論などを本書で展開しています。そしてICCの正当性、実効性、効率性に関する最終的な評価に関しても議論しています。