民主主義・人権プログラム
現実の架け橋 ―VRの操作体験が、難民に対する認識にどう影響するか
出版日2024年1月24日
書誌名Working Paper No. 7
著者名アンドリュー・キルパチ(Andrey Kirpach)
要旨 バーチャルリアリティ(VR)は、従来の媒体とは異なる有益な性質を持っているのだろうか?本研究では、共感誘発刺激として難民に関するドキュメンタリーを視聴した場合の効果を検証し、使用した媒体(VRとコンピュータースクリーン)に基づく効果の強さを比較する。本研究の一環として実施された実験では、VRが「イメージ他者」の視点を持つ課題に対してより効果的に共感を引き出すという証拠は得られなかった。一方で、パースペクティブ・テイキングのタイプ自体が重要な要因である可能性が示される。考察部では、実験結果を批判的文化研究(critical culture studies)の観点から国際関係の文脈におけるVR体験の批評と統合し、VR体験がどのように形成され、体験を生み出す権力構造によってどのように制限されるかを浮き彫りにする。
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現実の架け橋 ―VRの操作体験が、難民に対する認識にどう影響するか

アンドリュー・キルパチ(Andrey Kirpach)
(一橋大学法学部卒業生)
2024年1月24日

利益相反に係る声明

本稿執筆時点で、研究責任者であるアンドレイ・キルパチは、南国アールスタジオ株式会社で長期有給インターンシップを行い、同社から内定を得ていた。同社は拡張現実(Augmented Reality: AR)コンテンツの制作に特化しており、過去には仮想現実(Virtual Reality: VR)コンテンツを制作したことがある。

この点からは、研究責任者の利益相反の可能性が存在する。しかし、同社は本研究を認識していたものの、金銭的な支援も研究内容に関する相談も提供していない。さらに、インターンシップと内定は、研究の結果とは一切関係なく、研究に影響を受けるものでもない。

財政状況の開示

本研究プロジェクトは、一橋大学、いかなる法人、研究責任者以外の個人から一切資金提供を受けていない。設備費および研究参加者への報酬は研究責任者が負担した。

倫理的配慮

本研究は一橋大学研究倫理審査委員会(承認番号:2019C009)の承認を得ている。倫理審査では、利益相反、実験参加者のインフォームド・コンセント、実験参加者への報酬、VR体験が実験参加者に与える影響等が検討された。

1.はじめに

近年、難民キャンプでの生活やアフガニスタンでの女性教育など、社会的・国際的な問題に取り組んだり(Oculus n.d.)、北朝鮮などの通常ではアクセスできない場所へのアクセスを提供したりする仮想現実(Virtual Reality: VR)体験が飛躍的に拡大している(Geere 2017参照)。

国連はVR制作プログラム(United Nations Virtual Reality: UNVR)を設立し、政策立案者や影響力のある人々から金銭的な寄付を引き出すためにVR映画を利用している(UNVR n.d.b; Gürerk & Kasulke 2018; Rose 2018)。プログラムの説明によれば、VRは、その映画コンテンツで描かれたグループに対して体験者が抱く共感を促進する。この共感の増加は、そのグループに対する態度を改善し、例えば好ましい政策転換や金銭的寄付といった向社会的行動(prosocial behavior)を刺激すると考えられている(UNVR n.d.c)。

VR体験と共感、利他主義との関係と同様に、共感に対するVRの効果は学術的に大きな関心を集めている分野である(Ahn et al. 2013; Herrera et al. 2018; Martingano et al.)。

本研究では、難民に関するドキュメンタリーを視聴する際に、VRを使用する場合とコンピュータースクリーンを使用する場合の効果を比較検証し、国際関係の文脈におけるこれらの効果のインプリケーションを考察する。

2. 理論的枠組み

共感とは何か?

先行研究によれば、共感には共通の定義がないといえるだろう。多様な科学の分野の観点から共感が検証されているため、多少重複はあるものの、完全な互換性があるわけではない多くの定義が使用されてきた(Batson & Ahmad 2009; Gerdes et al. 2010; Neumann et al. 2015)。

本研究は、バトソンとアーマッド(Batson and Ahmad 2009)による分類を参考にする。共感に関連する先行研究を概観し、バトソンとアーマッドは様々な文脈で「共感」と呼ばれる4つの異なる心理状態を概説している(表1)。これらは心理的状態のタイプに基づいて分類され、認知状態と感情状態に二分される。前者は、自分や他人がさまざまな状況に置かれることを想像する心的プロセスに焦点を当てる。後者は、ある状況や他人の感情に対する感情的反応に焦点を当てる。

もう1つの広く使われている分類は、共感が異なる個人間で測定され比較されるのか、あるいは同じ個人が異なる時間に測定され比較されるのかという差を強調する。本研究もまた、この分類を採用する。この分類法によれば、共感は人によって異なる特性(資質的共感性、dispositional empathy)、または特定の刺激に対する瞬間的な情動反応(場面的共感性、situational empathy)と考えられる。個人の共感の傾向は、与えられた状況に対する共感的反応に影響を与えるだろう。つまり、資質的共感性(特性的共感性(trait empathy)とも呼ばれる)は場面的共感性の媒介となる(Davis 1983b)。

表1 「集団間関係分野の研究において共感と呼ばれる4つの心理的状況」

タイプ 心理的状態 どのような状態か
認知的・認識的 1.イメージ自己視点 自分自身が、ある人物と同様にある状況に置かれたときにどのように考え、あるいは感じるかを想像すること。
2.イメージ他者視点 他者の状況を踏まえたうえで、その人物がどのように考え、あるいは感じるかをイメージすること。
感情的・情動的 3.感情マッチング 他者が感じているように感じること。
4.共感的関心 困っている人のために感じること。

出典: Batson and Ahmad (2009, p. 144)

表2:場面的共感性と資質的共感性

資質的(特性的)共感性 場面的共感性
他者の感情を想像する性向 他人の状態に対する感情的反応

 

上記で取り上げた定義の枠組みは網羅的なものではなく、どのように共感が概念化されるかに関する例として提示した。社会科学と自然科学の研究を統合し、共感についてより統一的な見解を生み出そうとする取り組みは現在進行形で行われているところである(Gerdes et al. 2010)。

利他主義の源としての共感

主にダニエル・バトソンらによって行われた先行研究は、共感を概念化し、類似のプロセスから区別するための広範な研究を蓄積してきた(Batson & Ahmad 2009)。これらの研究は、個人の利他的行動の源としての共感の潜在的可能性を探り(Batson et al. 1981; Schroeder et al. 1988)、共感を引き出すことが集団間関係の改善につながるかどうかを考察してきた(Batson et al. 1997; Batson & Ahmad 2009)。

3. 先行研究

VR、共感、向社会的行動

イーとベイレンソン(Yee and Bailenson 2006)による初期の研究では、高齢者に対するステレオタイプを軽減するためにVRを使用することが検討された。個人がVRアバターに高齢者として没入することには、高齢者に対する否定的な連想を改善する有意な効果があると、この研究は示唆した。この研究の理論的根拠はパースペクティブ・テイキング(視点取得、以下PTと表記[翻訳者注])で、共感の尺度は用いられていない。

アンほか(Ahn et al. 2013)は、言葉で誘導する従来型のPTと、色覚異常をシミュレートするためにデザインされたVR体験を比較した。著者らは、(1)「一体」感(sense of “oneness”)、(2)色覚異常者に対する態度、(3)援助行動に関して、PT群とVR群の違いを調査した。その結果、これら3つのパラメータは、VR群の方が大きな値を示した。さらに、研究から得られた肯定的な結果は、現実のシナリオにも適用できることを明らかにした。

シュッテとスティリノヴィッチ(Schutte and Stilinović 2017)は、難民に関する360°ドキュメンタリー「Clouds Over Sidra」を利用し、その視聴が参加者の「エンゲージメント」と主人公に向けられた共感に及ぼす影響を分析した。著者らは、エンゲージメントと共感の両方が、スクリーン条件よりもVR条件で有意に高いことを明らかにした。

エレーラほか(Herrera et al. 2018)による研究では、VRと従来型のPTタスクによる介入の即時的効果と長期的効果の両方が調査された。著者らは、VRのPTタスクに参加した参加者は、従来型のPTタスクの参加者よりも「より肯定的な態度を持ち、有意に高い割合でホームレスに対する有益な取り組みを支持する嘆願書に署名した」ことを明らかにした。著者らはイメージ自己(imagine-self)PTタスクを採用し、一体感、共感的関心、個人的苦痛を従来のPTよりも強いレベルで誘発することを明らかにした。この結果は、バトソンほかの理論による予測と一致している。エレーラらの研究では、寄付レベルに対するPTの効果も調査された。しかし、参加者に対する金銭的な報酬は考慮に入れられてはいない。そのため、VR条件の参加者は他の条件の参加者よりも寄付を多く行ったものの、参加者は金銭に対して愛着を持っていなかった可能性があり、結果が信頼できるかどうかは明らかではない。

ギュレルクとカスルケ(Gürerk and Kasulke 2018)は、VRの効果と慈善寄付に焦点を当てた大規模な調査を実施し、これまでの知見を改善した。著者らは、エレーラほか(Herrera et al. 2018)と同様に、イメージ自己PTタスクを採用し、VRと従来型のPTの条件における難民に対する態度の違いを測定した。著者らは、VRが2Dのコンピュータースクリーンで同じビデオを見せるという対照群よりも高い寄付にはつながらないことを明らかにした。

4. 仮説

このテーマに関する先行研究から、本研究は以下の仮説を提示する。

仮説1(VR vs. スクリーン) VRでドキュメンタリーを視聴することは、従来のコンピュータースクリーンで視聴するよりも強い共感的反応を引き出す。

先行研究では、没入感を高めるような媒体を利用することで、より大きな共在性(co-presence)が得られることが繰り返し示唆されてきた(すなわち、描かれた人物がより「リアル」で「存在」しているように感じられるということである)。このような没入感の向上は、より大きな共感的関心(empathetic concern)、個人的苦痛(personal distress)、描かれた登場人物との「一体感」—これらはいずれも共感の代理尺度である―につながっている。

仮説2(PTとインタラクティブ性)対話型の(インタラクティブ)「イメージ自己」PTタスクは、非対話型の(ノンインタラクティブ)「イメージ他者」PTタスクよりも強い共感的反応を引き出す。

エレーラほかによる理論によれば、PTタイプが、生み出される共感的反応の強さに影響する可能性がある(Herrera et al. 2018, p.32)

先行研究では、「イメージ自己」課題は、音声媒体を用いた「イメージ他者」課題よりも共感的反応を引き出すのに効果的であることが確認されている(Myers et al. 2014)。本研究は、VR環境におけるPTタスクについて、これらの結果を検証する。

5. 研究手法

5.1 概要

エレーラほか(Herrera et al. 2018) に倣い、仮説を検証するために、大学生を対象に実験を行った。学生は、VRまたはコンピュータースクリーンのいずれかを使ってドキュメンタリーを視聴した。介入後、共感性を測定するアンケートに回答した。

5.2 手法

  1. 参加者は一連の人口統計学的質問を受ける。
  2. 参加者は2つのグループ(「スクリーン」と「VR」)に振り分けられる。
  3. 介入として、参加者にシリア難民の少女の生活を描いた360°ビデオドキュメンタリー「Clouds Over Sidra」を見せる。
    • 「スクリーン」グループの参加者に対しては、ドキュメンタリーがコンピュータのスクリーン(360°ビデオ)に映し出される。参加者はマウスを使って見る角度を変えることができる。
    • 「VR」グループの参加者は、VR装置を使ってドキュメンタリーを視聴する。参加者は頭部を動かすことで見る角度を変えることができる。
  4. 参加者は、結果変数を測定する介入後のサーベイに回答する。

5.3 参加者

30名の参加者を一橋大学の学生から無作為に選定した。グループ内の分散をコントロールするため、学士課程の日本人学生に限定した。

5.4 介入

刺激:「Clouds Over Sidra」

この調査で「Clouds Over Sidra」を使用した理由は以下の通りである:

  1. この映画は、「共感マシン(empathy machine)」としてのVRの有用性を例証する先駆的な作品として、UNVRキャンペーンや提携するVRプロデューサーによって支持されている。
  2. 国連は、募金会での寄付金増加の原因としてこの映画を挙げている。
  3. 映画における難民の構築されたイメージや、視聴者と描かれた集団との関係を批判的に検証する既存の科学的で有名な文献(Irom 2018; Kool 2016; Nash 2017)があるものの、VR体験が参加者の態度にどのような影響を与えるかについての定量的な側面は欠けている。
  4. 映画の共感誘発効果については、本研究とは異なる方法論を用いた先行研究がある(Schutte & Stilinović 2017)。

設備

介入時には以下の機器が使用された:

  1. ドキュメンタリーの視聴には、13.9インチ画面のノートパソコンが使用された(グループA、スクリーン)。視聴中、音声出力にはイヤホンを使用した。
  2. ドキュメンタリーの視聴には、5.1インチのAndroidベースのスマートフォンとVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)を併用した(グループB、VR)。HMDをスマートフォンの音声出力端子に接続すると、HMDに備え付けられたヘッドフォンから位置情報を考慮したステレオサウンドが出力される。

5.5 介入後サーベイ

アンケートの内容は、以下の変更を加えて、エレーラほか(Herrera et al. 2018)から引用した。

まず、あからさまな人間性の喪失に関する質問項目「n」を削除した。これは、(1)元の研究では介入後に人間性の喪失について有意な結果が得られなかったこと、(2)研究参加者が大学生であることから、この質問が不誠実な回答や無作為な回答を誘発する恐れがあったこと、(3)この質問が本研究で用いた研究質問と理論的枠組みとの関連性が低いこと、からである。

6. 変数

6.1 母集団変数

表3: 統制変数

集団 変数
人口統計的変数 年齢
性別
資質的共感性 共感に関する信念尺度(Beliefs About Empathy Scale)
対人反応性指標(Interpersonal Reactivity Index: IRI)

 

各参加者について、以下の変数が母集団の統制として含まれた。

年齢・性別

これらの要因が状況的共感に大きな影響を与える可能性を示した先行研究があるため(例えば、Gürerk & Kasulke 2018, p.15)、これらの変数を含めた。

共感に関する信念と対人反応性指標(IRI)

これら2つの尺度は、エレーラほか(Herrera et al. 2018)の方法論に従い、本研究に含まれている。これらは、資質的(特性的)共感性の尺度として採用され、2群(「スクリーン」と「VR」)間の統制変数として使用されている。IRIはもともとデイビス(Davis 1983a)が提案した。本研究はエレーラほか(Herrera et al. 2018)に従い、IRIからFantasy(FS)尺度を省いたことに留意されたい。つまり、共感的関心(EC)、個人的苦痛(PD)、PT尺度のみを含めた。

6.2 結果変数

各参加者について、以下の変数を結果(従属)変数として含めた。

表4:結果変数

変数
状況的共感性 共感的関心(Empathic Concern:EC)
個人的苦痛(Personal Distress:PD)
間接的共感性関連尺度(Indirect Empathy-related Indicators) 他者の自己への包摂(Inclusion of Other in Self:IoS)
ソーシャル・プレゼンス(Social Presence)
向社会的結果(Prosocial Outcomes) 難民に対する態度(Attitudes Towards Refugees)

 

共感的関心と個人的苦痛

エレーラほか(Herrera et al. 2018)との一貫性のために、バトソン、アーリー、サルヴァラーニ(Batson, Early, and Salvarani 1997) が導入したこの尺度を本研究に含めた。これは、状況的な共感的関心(EC)と状況的な個人的苦痛(PD)を測定することを意図した質問であることに特徴がある。

自己へ他者の包摂(Inclusion of Other in Self:IoS)

エレーラほか(Herrera et al. 2018)との一貫性のために、アロンほか(Aron et al. 1992)が導入したこの尺度を本研究に含めた。これは、ドキュメンタリーを視聴した結果として、実験参加者が対象とする外集団(難民)に関する自己と他者の融合(self-other merging)を測定するために含まれている。自己と他者の融合は、共感の間接的な指標であると仮定される。

ソーシャル・プレゼンス

この尺度はノヴァクとビオッカ(Nowak and Biocca 2003)が導入し、エレーラほか(Herrera et al. 2018)に従って本研究に含めた。参加者は、ドキュメンタリーに描かれている人々が現実であり、参加者と同じ環境に存在していると感じる程度を示すよう求められた。

ソーシャル・プレゼンス(Social Presence)の感情が高いほど、共感性の程度が高くなることが知られているため、ソーシャル・プレゼンス尺度は間接的な共感の尺度として含めた。

難民への態度(Attitudes Towards Refugees)

この尺度はバトソンほか(Batson et al. 1997)が導入し、その後エレーラほか(Herrera et al. 2018)がホームレスに対する態度を測定するために使用した。なお、ギュレルクとカスルケ(Gürerk and Kasulke 2018)も難民に対する態度(Attitudes Towards Refugees)を測定するためにバトソンほかの尺度を順応させて採用しているが、本研究で用いる尺度はギュレルクとカスルケが開発した尺度を参照せず、独自にハドソンほかの尺度を順応させたものである。

6.3 説明変数

説明変数(独立変数)として以下の尺度を選定した。このセクションの説明変数は、それぞれ仮説1または仮説2に対応している。

媒体

この指標は、参加者がグループA(スクリーン)かグループB(VR)かを表し、仮説1を検証するために使用される。

PTのタイプ

本研究に参加した各参加者については、難民の生活を描写したドキュメンタリーを視聴し、参加者自身が難民の役を引き受ける必要はなかったため、この変数の値は「イメージ他者」とした。

本研究で収集したデータとは別に、エレーラほか(Herrera et al. 2018)の調査結果にアクセスし、以下のように変更した:

  1. PTに一切参加しなかった個人の回答は取り除かれた。
  2. PTタイプを表す新しい列が追加され、値は「イメージ自己」に設定された。これは、その研究の参加者がホームレスの役割を担うよう求められたためである。

最後に、エレーラほかのデータセットを変更し、本研究の一部として収集したデータセットと結合した。こうして得られたデータセットを用いて、仮説2を検証した。

表5:仮説の操作化

仮説 予想
VRとスクリーン 𝐸𝐶𝑣𝑟 > 𝐸𝐶𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝑃𝐷𝑣𝑟 > 𝑃𝐷𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝐼𝑜𝑆𝑣𝑟 > 𝐼𝑜𝑆𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑣𝑟  > 𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝐴𝑡𝑡𝑖𝑡𝑢𝑑𝑒𝑠𝑣𝑟 > 𝐴𝑡𝑡𝑖𝑡𝑢𝑑𝑒𝑠𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
イメージ自己とイメージ他者 𝐸𝐶𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝐸𝐶𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟
𝑃𝐷𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝑃𝐷𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟
𝐼𝑜𝑆𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝐼𝑜𝑆𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟
𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟

>: 集団間の平均には統計的に有意な差があることを示す。

7. 予測される結果

仮説1:VRとスクリーン

仮説1については、状況的な共感的関心(EC)、および共感の間接的指標(IoSによって表現される自己と他者の融合、およびソーシャル・プレゼンス)は、グループB(VR)の参加者の方がグループA(スクリーン)の参加者よりも高いと予測される。

さらに、個人的苦痛(PD)は、グループB(VR)の方がグループA(スクリーン)よりも高いと予想される。これは、VRが提供する没入感の高さに起因する。

最後に、難民に対する態度は、グループA(スクリーン)よりもグループB(VR)の方が高くなると予想される。

仮説2:イメージ自己とイメージ他者

仮説2については、対話型の(インタラクティブ)相互作用のある「イメージ自己」PTタスクは、非対話型の(ノンインタラクティブ)相互作用の少ない「イメージ他者」PTタスクよりも強い共感的反応を引き出す。
と予測される。

したがって、共感的関心(EC)、個人的苦痛(PD)、自己と他者の融合(IoS)、ソーシャル・プレゼンスは、採用された媒体にかかわらず、エレーラほか(Herrera et al. 2018)の実験に参加した人の方が、本研究に参加した人よりも高いと予想される。

難民に対する態度の変数は、「imagine-self」に関連するHerreraらの2018年のデータセットには含まれていなかったため、本分析では除外された。理論的には、難民に対する態度は「イメージ自己」の方が「イメージ他者」よりも高いことが予想されるが、上記のデータの制約により本研究では検証することができない。

8. 結果

8.1 母集団変数の要約

合計30人から回答を得た。

統制変数のそれぞれについて、グループA(スクリーン)とグループB(VR)の間に有意差がないことを確認するために、連続母集団変数のそれぞれを従属変数とし、メディア(スクリーン対VR)変数を説明変数として、多変量分散分析(MANOVA)を実施した。

箱ひげ図を視覚的に分析すると、下位尺度(PT)の1つにわずかな偏りがあることが示唆されるが、統計的検定は、連続変数のいずれにおいても群間に有意差を認めず、無作為割り当てが成功したことがわかる。すべての母集団変数と検定の結果は、付録Aの母集団変数にある。

ジェンダー変数は、連続変数ではないので、多変量分散分析モデルには含まれない。「スクリーン」群と「VR」群間の分布は、群の割り当ての際に均衡が保たれるようにした。

図1:統制変数:スクリーンとVR

8.2 仮説の検証

表6:仮説ごとの結果

仮説 予測 結果(有意水準)
VRとスクリーン 𝐸𝐶𝑣𝑟 > 𝐸𝐶𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝑃𝐷𝑣𝑟 > 𝑃𝐷𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝐼𝑜𝑆𝑣𝑟 > 𝐼𝑜𝑆𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑣𝑟  > 𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
𝐴𝑡𝑡𝑖𝑡𝑢𝑑𝑒𝑠𝑣𝑟 > 𝐴𝑡𝑡𝑖𝑡𝑢𝑑𝑒𝑠𝑠𝑐𝑟𝑒𝑒𝑛
イメージ自己とイメージ自己 𝐸𝐶𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝐸𝐶𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟
𝑃𝐷𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝑃𝐷𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟 𝑃𝐷𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝑃𝐷𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟 ***
𝐼𝑜𝑆𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝐼𝑜𝑆𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟 𝐼𝑜𝑆𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝐼𝑜𝑆𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟 ***
𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑠𝑒𝑙𝑓 > 𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟 𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑠𝑒𝑙𝑓 < 𝑃𝑟𝑒𝑠𝑒𝑛𝑐𝑒𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟 ***

>: 集団間の平均値には統計的に有意な差がある。
有意水準: ∗∗∗ 0.001, ∗∗ 0.01, ∗ 0.05, . 0.1

仮説 1: VRとスクリーン

図2:仮説1:スクリーンとVR

多変量分散分析は、共感的関心、個人的苦痛、自己への他者の包摂、社会的存在、難民に対する態度を従属変数とし、媒体(スクリーンとVR)変数を説明変数として行った。さらに、上記の従属変数を用いて、個別の分散分析(ANOVA)を行った。

全体的な多変量解析の結果は統計的に有意ではなく(p = 0.553)、個々の分散分析の結果も有意ではなかった(それぞれp > 0.2)。

仮説2:PTのタイプ

図3:仮説2:PTのタイプと相互作用

本実験とエレーラほか(Herrera et al. 2018)のデータセットを合わせて多変量分散分析を行い、従属変数を共感的関心(emp)、個人的苦痛(dis)、自己への他者の包摂(ios)、ソーシャル・プレゼンスとした。

多変量解析の結果、結果変数に関して、「イメージ自己」グループの参加者と「イメージ他者」グ ループの参加者との間に統計的に有意な差が示された(p<0.001)。統計的に有意な差が認められなかった共感的関心(Empathic Concern)を除いて、その他のすべての連続従属変数の平 均値については、2 つのグループで有意な差が認められた(すべて p<0.001)。全結果は付録 C にある。

統計的に有意差があった変数については、以下の関係が観察された:

  • 個人的苦痛は、イメージ自己タスクの方がイメージ他者タスクよりも高かった。
  • IoS(自己と他者の融合)は、イメージ自己タスクの方がイメージ他者タスクよりも高かった。
  • ソーシャル・プレゼンスは、イメージ自己タスクの方がイメージ他者タスクよりも低かった。

共感的関心、個人的苦痛、媒体の種類、およびPTタスクの間の関係をさらに検討するために、線形回帰モデルを用いた追加調査が行われた。

二つのモデルを立て、1つは共感的関心について、もう1つは個人的苦痛についてのものとした。どちらの場合も、媒体(スクリーンとVR)とPTタイプ(イメージ自己とイメージ他者)を説明変数として含めた。さらに、関連するIRI下位尺度(それぞれEC(共感的関心)、PD(個人的苦痛))、および年齢と性別を対照変数に含めた。

どちらのモデルからも、媒体の種類と従属変数の間に統計的に有意な関係を見出すことはできなかった。どちらのモデルにおいても、PTタスクのタイプは有意な予測因子だった(共感的関心については負、p<0.05、個人的苦痛については正、p<0.001)。

9. 結果に関する考察

本研究で提唱された仮説のうち、仮説2(PT型)のみが実験結果により支持された。本節の残りの部分では、各仮説に対する結果のインプリケーションについて議論し、それらを先行研究の文脈に位置づける。

仮説1:スクリーンとVR

調査結果の分析では、コンピュータースクリーンよりもVRを選択した方が、より強い共感的反応が得られることを確認する証拠は見つからなかった。これは国連による主張と矛盾しているように考えられる。国連は募金活動において、本研究で採用したものと同じドキュメンタリー(「Clouds Over Sidra」)を使用し、VRを採用しなかった前年と比較して寄付が増加したことを明らかにしている[UNVR n.d.a]。

この矛盾は、VRは感情的共感を向上させるが、認知的共感は向上させないことを示唆する最近のメタ分析(Martingano et al. 2021)によって説明することができるかもしれない。 したがって、寄付の見かけ上の増加は、同情的な感情が瞬間的に喚起されたことによるものであり、難民の視点を想像する能力が向上したことを示すものではないという仮説を立てることができる。

仮説2:PTのタイプ

本研究の一環として収集された証拠から、PTタスクのタイプが対象者の共感に関連する反応に大きく影響する可能性が示唆される。しかし、その具体的な効果は結果変数によって異なるようである。

「イメージ自己」PTタスクでは、他者志向の共感的関心と自己志向の個人的苦痛の混合が生じると予想されるが、「イメージ他者」ではそのような混合は生じないと予想される。この点を考慮すると、個人的苦痛、共感的関心、自己と他者の融合に関する実験結果は、理論的予測と一致しているように思われる。

個人的苦悩は、自分が外集団の一員であることを想像し、その経験を疑似体験しようとするタスクを課された人の方が、外集団のメンバーが自分の経験について話すのを見聞きするだけの人よりも、有意に強いことがわかった。さらに、使用媒体を統制した場合、「イメージ自己」タスクは「イメージ他者」タスクよりも参加者の共感的関心を弱めた。同様に、自己と他者の融合(自己への他者の包摂(IoS)尺度によって測定)は、「イメージ自己」タスクの参加者において有意に高かった。これら3つの発見はすべて、以前に理論化された現象を裏付けている。

ソーシャル・プレゼンスとは、描かれた人物が参加者にとってどの程度「リアル」に感じられるか、また「同じ空間に存在している」と感じられるかどうかを表す。これらの感覚は、「イメージ他者」条件の参加者の方が「イメージ自己」条件の参加者よりも有意に強いことがわかった。これは興味深い発見であり、「イメージ自己」条件の参加者は、シミュレーションに没頭し、個人的な不快感に集中するため、他の登場人物の存在にあまり注意を向けなかったことを示していると考えられる。

研究の限界

概して見ると、この研究の最も重大な限界は標本サイズにある。コーエン(Cohen 1992)は、α = 0.01で2群の分散分析で大きな効果を検出できるようにするためには、少なくとも38人の標本を収集することを推奨している。より小さな効果量を検出できるように、より大きな標本サイズが提案されているのである。仮説1の検証で採用されたサンプルサイズは、α=0.10で大きな効果を検出するためには十分といえる(個人的苦痛は、α=0.07で、2つの媒体条件間で異なることがわかった)。サンプルサイズの関係で、他の効果が検出されなかった可能性もある。

さらに、この研究はサンプリングの方法にも限界がある。参加者を同じ大学の日本人大学生に限定し、特定の年齢層に絞ることで、グループ内分散を緩和することができた。しかし、他の年齢層や社会集団を含む母集団全体に結果を一般化することはできない。

最後に、エレーラほか(Herrera et al. 2018)に含まれている反応を含めたデータセットを使用したため、仮説2の分析結果はサンプルサイズが小さいわけではないが、曖昧である。これは、本研究の方法論はエレーラほかと同じであるものの、コンテンツに描かれた外集団とコンテンツ自体の性質が異なっていたためである。本研究で使用したコンテンツは難民を対象としており、またインタラクティブ性が低かったのに対し、エレーラほかの研究が使用したコンテンツはホームレスに焦点を当て、インタラクティブ性が高かった。このように、本実験とエレーラほかの実験では複数の要因が異なっているため、PTタスクの違いによる効果と、コンテンツの違いによる効果を分離することができない。

国際関係への示唆

VRの利用は学術界からの批判にさらされることもあるが(Kool 2016)、人道的開発コミュニケーションにおける新たなツールであり、被援助者が直面する現実を援助者が没入して垣間見ることで、援助者と被援助者の間のギャップを埋めることが期待されているとも受け止められる(Irom 2018)。

しかし、推進派は国際関係におけるVRの活用に対して有望な未来を描く一方で、重大な問題を考慮する必要がある。

まず、コンテンツの消費に対する共感的反応は、媒体の選択だけでなく、他の要因にも依存する。例えば、コンテンツ消費者と、そのコンテンツで描かれているグループとの間の関係に関するコンテクストが一つの考慮すべき要因として提起されている(Maner & Gailliot 2007)。この研究はさらに、実施されるPTタスクのタイプも役割を果たすことを示している。最後に、最近のメタ調査では、VRは感情的共感を向上させるが、認知的共感は向上させないことが示唆されている(Martingano et al. 2021)。つまり、VR体験が引き起こす効果の形態には限界があると考えられる。

このように、経験的証拠は、集団間の国際関係を改善するために共感を構築するという実際的な政策目標にとって、VRという媒体の選択は成功の決定的要因ではないことを示唆している。

第二に、批評文化学の観点から検討することで、VR体験の限界が明らかになる。VR体験は、伝統的なメディアと同様、それを創造する人々、メディア企業、国際組織の創造的産物である。VR体験は政治的表象であり、必然的に制作者の偏見や枠組みが反映される。視聴者の側では、VR体験と相互作用することで、その体験が是正しようとしていると思われる権力の不均衡そのものが強化されてしまう可能性がある。ブライカー(Bleiker 2001, p. 511) が簡潔に要約しているように、「政治的なものを表現することは、その性質上、不完全であり、知覚者の価値観に縛られる解釈の一形態である」のである。

今回の調査対象である「Clouds Over Sidra」に話を戻すと、ドキュメンタリーを見るという行為を新たな観点から見ることができる。この観点からすれば、資金集めに参加する外交官が、このドキュメンタリーをコンピュータのスクリーンを通して見るか、VRヘッドセットを通して見るかは、ほとんど意味をなさない。

このドキュメンタリーは2人のアメリカ人(ガボ・アロラ(Gabo Arora))とクリス・ミルク(Chris Milk))によって制作され、この二人がカメラの設置位置や、スイッチを入れるタイミングを決定した。360度ドキュメンタリーを平面スクリーンからVRヘッドセットに移すことで、没入感は向上し、作者の存在も隠せるかもしれないが、視聴者、撮影者、描かれた難民の間の力の不均衡は維持される。この不均衡は、使用されている言語によって悪化する。映画制作者は、「現実」と呼ぶことで、自分たちの表現の信頼性が高まると主張しているのだ。

この問題はローズ(Rose 2018、p.143)に要約されている。

参加者に難民への同情を呼びかけ、寄付を促す一方で、遠くの苦しみを伝えるVRドキュメンタリーは、ゴッドミロウ(Godmillow)が指摘する問題に陥る可能性がある。つまり、描写された社会問題の構造的原因に対処せず、視聴者がそうした構造にどのように関与しているかを探らないことで、現状を維持しかねないのだ。

結論として、共感と理解を促進するVRの可能性を否定することは難しい。しかし、この研究は、既存の経験的証拠とともに、媒体以外の要因が、生み出される共感の程度に強く影響することを示唆している。さらに、共感を誘発するVR体験は、既存の権力構造の中で批判的に検討され、制作者の偏見とともに評価される必要がある。他のメディアと同様に、メディアの制作において外集団が主体性を与えられなければ、VRの変革的な力は制限されるかもしれない。結局のところ、VRが向社会的行動を促進する能力は、共感についての理解が進むにつれて、経験的証拠によってさらに裏付けられる必要がある。

今後研究を進めることによってVR、共感、向社会的行動の関係を探ることができる。今後の方向性としては、時間の影響について検討することが挙げられる。つまり、VR体験への曝露時間が長いほど、あるいは頻度が高いほど、共感を育むのに役立つのかどうか、また、このことが態度の長期的な改善につながるのかどうかを検討することである。

さらに、今後の研究では、開発援助におけるVRドキュメンタリーの利用に対する既存の批判に対処するために、VRへの参加が視聴者の難民に対するパターナリスティックな見方を助長するかどうかを検討することも考えられる。

最後に、今後の研究では、実験的社会心理学と国際関係理論を橋渡しするために本研究で行われた試みを発展させ、政策立案者の心を支配するプロセスや、これらのプロセスが政治に影響を与える方法について、より深い洞察を提供することができるだろう。

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付録

A. 母集団変数

表7:母集団変数

年齢 性別 Empathy Beliefs
最小値: 19.00 女性: 14 最小値: 23.00
第一四分位数: 20.00 男性: 14 第一四分位数: 38.25
中央値: 21.00 無回答: 2 中央値: 45.00
平均値: 21.07 平均値: 43.90
第三四分位数: 22.00 第三四分位数: 50.00
最大値: 23.00 最大値: 68.00

 

表8:母集団変数:IRI下位尺度

IRI: EC IRI: PT IRI: PD
最小値.: 11.00 最小値: 10.00 最小値: 6.00
第一四分位数: 15.00 第一四分位数: 13.00 第一四分位数: 9.00
中央値: 18.00 中央値: 14.00 中央値: 13.00
平均値: 17.73 平均値: 14.77 平均値: 12.67
第三四分位数: 20.75 第三四分位数: 17.00 第三四分位数: 15.00
最大値: 27.00 最大値: 20.00 最大値: 21.00

 

多変量分散解析:スクリーン群とVR群の間の母集団変数の差

表9:多変量解析:年齢、IRI下位尺度(EC、PT、PD)、条件間(スクリーンとVR)の共感に関する信念の差

Df Pillai approx F num Df den Df Pr(>F)
媒体 1 0.08292 0.434 5 24 0.8203
残差 28

 

表10:分散解析:条件間の年齢の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
媒体 1 0.000 0.0000 0 1
残差 28 43.867 1.5667

 

表11:分散解析:条件間の共感的関心(IRI下位尺度)の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
媒体 1 0.53 0.5333 0.0309 0.8617
残差 28 483.33 17.2619

 

表12:分散解析:分散解析:条件間のPT(IRI下位尺度)の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
媒体 1 9.633 9.6333 1.3781 0.2503
残差 28 195.733 6.9905

 

表13:分散解析:条件間の個人的苦痛(IRI下位尺度)の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
媒体 1 0.53 0.53333 0.0371 0.8486
残差 28 402.13 14.3619

 

表14:分散解析:条件間の共感に関する信念尺度の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
媒体 1 116.03 116.03 1.0749 0.3087
残差 28 3022.67 107.95

 

B. 仮説1スクリーンとVR

表15:多変量分散解析:二つの条件間における共感的関心、個人的苦痛、自己への他者の包摂、ソーシャル・プレゼンス、難民に対する態度の差

Df Pillai Approx. F num Df den Df Pr(>F)
条件 1 0.14463 0.81161 5 24 0.553
残差 28

 

表16:分散解析:条件間の共感的関心の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
条件 1 12.03 12.033 0.6914 0.4127
残差 28 487.33 17.405

 

表17:分散解析:条件間の個人的苦痛の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
条件 1 30.00 30.00 1.2577 0.2716
残差 28 667.87 23.852

 

表18:分散解析:条件間の自己への他者の包摂の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
条件 1 2.133 2.1333 1.1256 0.2978
残差 28 53.067 1.8952

 

表19:分散解析:条件間のソーシャル・プレゼンスの差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
条件 1 2.13 2.1333 0.1651 0.6876
残差 28 361.87 12.9238

 

表20:分散解析:条件間の難民に対する態度の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
条件 1 4.80 4.800 0.1654 0.6873
残差 28 812.67 29.024

 

C. 仮説2:PTタイプ

表21:多変量分散解析:PTタスク間の共感的関心、個人的苦痛、自己への他者の包摂、ソーシャル・プレゼンスの差

Df Pillai approx F num Df den Df Pr(>F)
PTタイプ 1 0.34464 31.685 4 241 <2.2e016∗∗∗
残差 244

 

表22:分散解析:PTタスク間の共感的関心の差

Df Sum Sq Mean Sq F value Pr(>F)
PTタイプ 1 4 4.0409 0.1783 0.6732
残差 244 5530 22.6639

 

表23:分散解析:PTタスク間の個人的苦痛の差

Df Sum Sq 平均値 Sq F value Pr(>F)
PTタイプ 1 685.1 685.14 22.721 3.221e-06∗∗∗
残差 244 7357.9 30.16
有意水準:
∗∗∗0.001 ∗∗0.01 ∗0.05 . 0.1

 

表24:分散解析:PTタスク間の自己への他者の包摂の差

Df Sum Sq 平均値 Sq F value Pr(>F)
PTタイプ 1 84.38 84.383 30.083 1.033e-07∗∗∗
残差 244 684.42 2.805
有意水準:
∗∗∗0.001 ∗∗0.01 ∗0.05 . 0.1

 

表25:分散解析:PTタスク間のソーシャル・プレゼンスの差

Df Sum Sq 平均値 Sq F value Pr(>F)
PTタイプ 1 1177.2 1177.24 52.24 6.276e-12∗∗∗
残差 244 5498.6 22.54
有意水準: ∗∗∗0.001 ∗∗0.01 ∗0.05 . 0.1

 

【日本語翻訳】
中島崇裕(一橋大学法学部学士課程)
中野智仁(一橋大学国際・公共政策大学院修士課程)

プロフィール

1996年、サンクト・ペテルブルグ(ロシア)生まれ。2020年、一橋大学法学部を卒業。専攻は国際関係論。現在は、東京でソフトウェアエンジニアとして勤務している。