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ロシアの核の脅し・中国の発言力…NPT会議に異変、秋山教授が解説
要旨秋山教授がアメリカのニューヨーク州にある国連本部で8月21日から8月26日まで開催された核不拡散条約(NPT)の再検討会議に出席し、そこでの論点を解説しました。教授は2000年からNPT再検討会議に出席した経験を通して、今回の会議のポイントを述べ、ロシアによるウクライナ侵攻が会議にもたらした影響や参加国が議論した内容について説明しました。
核禁条約会議閉幕 政治的思惑の克服課題
要旨6月23日にウィーンで閉幕した核禁条約会議に関し、多くの国が会議に参加し、揃って核廃絶の重要性を指摘したことは意義があったとする一方で、会議を通じて見えた核禁条約の課題や核軍縮における日本の役割も指摘する。
福島 –処理水の海洋放出を非政治化する
要旨2021年4月13日、日本政府は福島第一原子力発電所の処理水を海洋放出する方針を発表したが、これについて中国と韓国からは、近隣諸国との適切な協議がされていないとの批判の声が上がった。今回の放出は科学的知見に基づいた国際基準の下で行われるため、過度に感情的になったり政治問題化したりすることは、東アジア地域への風評被害、外交関係の悪化といった影響を及ぼしかねない。日中韓3ヵ国が取り組むべきなのは、東京電力が環境基準を守りながら海洋放出を行うための枠組みの創出、および原子力に対する安全・緊急時対応に関する地域間協力の制度化であると筆者は論じる。海洋放出問題を脱政治化させ、本当に必要なアプローチをとることが、3ヵ国全体にとっても望ましいと議論する。
ロシア・ウクライナ戦争が終わらせた米ロ軍備管理体制 -核の恫喝が対中抑止に持つ含意(下)
要旨現状維持国家(米国)、現状変更国家(中国)、衰退国家(ロシア)の戦略的目標が違う以上、この三者で軍備管理体制を築くのは容易ではない。また極超音速滑空体の開発などにより、核・非核アセットの境界もあいまいになっている。冷戦期の制度設計がついに真の終焉を迎えるなか、日本は新たな制度の模索にどう関わって行くべきか。
ロシア・ウクライナ戦争が終わらせた米ロ軍備管理体制 -核の恫喝が対中抑止に持つ含意(上)
要旨ロシアが行った核の恫喝は、核を地域レベルの戦闘でも「使える」兵器へと変貌させた。米国は、ロシア、中国と新たな規制構築を行わざるを得ないだろう。ただ、冷戦期からの米ロの軍備管理体制が基盤にしてきた秩序の前提自体が壊れている。
「安定―不安定のパラドクス」の現実 ロシア・ウクライナ戦争で露わになった「核の恫喝の下でのハイブリッド戦争」とは
要旨「核の恫喝の下でのハイブリッド戦争」という戦略環境のなかで、日本はどのように核のリスクに対処していくべきなのかについて、抑止態勢のあり方、戦略的競争を規定する軍備管理の役割、そして核の国際秩序の基調となるべき規範という三つのレベルから論じる。
二つのモラルを繋ぐ共通の目標に向かって ーローマ法王と米国大統領の言葉 (英語)
要旨核兵器の非人道性を強調する「理想主義」的見解と国際安全保障における核兵器の意義を認める「現実主義」的見解との間の乖離を、両者が依拠する倫理体系の違いから論じる。核の倫理と抑止力に関するローマ教皇ヨハネ・パウロ二世とレーガン大統領の関係を参照し、両者の溝を埋める可能性を探す。
ウクライナ侵攻の波紋 秋山信将さん、松田康博さん
要旨核さえ持てば抑止できるなどという大ざっぱな議論ではなく、大きな国家戦略と目標から安全保障戦略、必要な装備へと順序立てた思考をすべきだ。