出版物
核軍備管理・軍縮の新しいフェーズ
要旨2023年7月31日に、国際・公共政策大学院院長の秋山信将教授が執筆した論文、「核軍備管理・軍縮の新しいフェーズ」が『外交』に掲載されました。本論文は、大国間の軍備管理に必要なレジームの新たな構造計算の構成要素の分析と、その帰結としての核軍縮の基盤を築く方法について考察しています。秋山教授は、冷戦期に構築された軍備管理レジームにおける関連国の目的とレジームを維持させた諸原理がもはや十分に機能していないと指摘しました。その原因として、軍備管理レジームの当事国間の政治的関係の最低限の見解の一致、すなわちガードレールに対して見解の乖離が発生していると論じました。さらに、中国の台頭により、技術的・量的な軍備拡大と中国が有する軍備にかかわる戦略・戦力の不透明性故に、軍備管理レジーム再構築に複雑性が増したと説明しました。これらの問題を目前に、秋山教授は大国間の核政策における原理的見解の差異を解消し、そして外交や経済をも組み合わせて危機を管理する統合軍備管理が必要であると述べました。
(私の視点)広島ビジョンの意義:首脳らを包摂、被爆地の力 秋山信将
要旨2023年6月2日に、朝日新聞にて国際・公共政策大学院長の秋山信将教授の論考「(私の視点)広島ビジョンの意義:首脳らを包摂、被爆地の力」が掲載されました。本記事では、G7サミットが核軍縮において持つ意義が論じられました。秋山教授は、G7広島サミットにおける主要な2つのキーワードであった規範と責任を核軍縮の観点から分析しました。秋山教授は、G7参加国による核戦争反対への共同声明は、戦後長らく守られてきた核兵器不使用の規範の重要性を再確認していると説明しました。また、責任に関しては、国民の安全を守る責任と「核なき世界」を実現する責任、この2つの責任が政治指導者にあることが確認されたと論じました。最後に、秋山教授は広島サミットの経験が直ちに政策に反映されるとは信じがたいが、規範と責任の自覚がいずれ大きな力になるはずと評価しました。
広島G7サミットと核軍縮―重要な議論、さらに求められることは(英語)
要旨2023年5月23日、国際・公共政策大学院長及び法学研究科教授でGGR研究員の秋山信将教授の論考「広島G7サミットと核軍縮―重要な議論、さらに求められることは(原タイトル:The Hiroshima G7 Summit and Nuclear Disarmament: Essential talks were held, but more is now needed)」が、ザ・ディプロマットに掲載されました。秋山教授は、G7サミットで発表された「核軍縮のための広島ビジョン」の位置づけやG7首脳が被爆地に立った意義について論じています。秋山教授は、核軍縮をライフワークとしてきた岸田首相が、広島でサミットを開催した意義を評価しました。さらに「広島ビジョン」は、厳しい国際環境にもかかわらず核軍縮を前面に立てたと論じ、既存の枠組みに則るだけでなく、透明性の向上といった点における新しいイニシアチブを打ち出したと指摘しました。最後に、グローバルガバナンスや核なき世界におけるG7の役割を強調し、国際社会は今回のサミットをより実質的な措置を実行するためのきっかけとするべきだと述べました。
G7核軍縮に関する広島ビジョン 異なる立場の対話尊重を
要旨2023年5月21日、東京新聞に国際・公共政策大学院長及び法学研究科教授でGGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事「G7核軍縮に関する広島ビジョン 異なる立場の対話尊重を 秋山信将・一橋大教授」が掲載されました。この記事は、G7広島サミットにおける核軍縮に関する議論が持つ課題について論じています。秋山教授は、広島サミットではG7の7カ国だけでなく招待国や国際機関も含めた形で、核軍縮への姿勢を示すことが重要だと説明します。また、現在の安全保障環境下でG7首脳が被爆の実相に触れる意義も指摘しました。最後に、首脳声明や広島ビジョンでは核拡散防止条約体制を堅持することが確認されたと指摘し、さらなる協調的施策が求められる中で、立場が異なる国々の対話の場を尊重することが核なき世界に近づく道だと論じました。
核なき世界へ、たとえ遠回りでも 広島サミット、日本の研究者の期待
要旨2023年5月18日、朝日新聞に国際・公共政策大学院長及び法学研究科教授でGGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事「核なき世界へ、たとえ遠回りでも 広島サミット、日本の研究者の期待」が掲載されました。この記事は、「核なき世界」へ向けて、G7が発信すべき内容を論じています。まず、秋山教授は、大国間と地域における緊張の高まりを踏まえると、直線的な「核なき世界」への進展はおそらくないだろうと論じました。その上で、いかなる状況でも核兵器が最終的に使われなかったという実績を積み上げていくことは、遠回りで遅い歩みのように見えるものの、「核なき世界」の実現のためには大切なことだと述べました。また、核の分野において新興国と途上国との連携を強化するためには、各国が置かれている地政学的なリスクの相違に起因する、核兵器に対する認識の差を埋めることが重要だと強調しました。加えて、中国の保有する核兵器については、情報開示が乏しいことから、透明性の面で大きな問題があると説明しました。
ロシア・ウクライナ戦争でのロシアによる核の威嚇 -中国はどのように捉えたのか-
要旨中国は、ロシア・ウクライナ戦争でのロシアの核による威嚇とその結果を受け、自国の核兵器の新たな役割として「他国の直接的な軍事介入の抑止」に注目するとともに、自らの「戦略抑止」の方法に対する自信を深めた。これにより、台湾有事が発生した場合、中国が他国の直接的な軍事介入を抑止するため、核の威嚇を実行に移す可能性が懸念される。
アジア太平洋における新たな戦略的リスクと核不拡散体制への影響―日本からの視点[in English]
要旨2023年3月6日、Asia-Pacific Leadership Network(ALPN)に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授の報告書「Emerging strategic risks in the Asia-Pacific and the impact on the nuclear non-proliferation regime: The Japanese perspective」(英文)が掲載されました。ALPNは、アジア太平洋地域を拠点とする政治、外交、そして軍部の元リーダー、現リーダー、さらには学者やオピニオンリーダーからなるネットワークです。このネットワークは、核兵器が世界にもたらす脅威について考慮を促すために世論に情報を提供すること、そして最終的には核兵器の使用を廃絶することを目的としています。秋山教授は、ALPNのメンバーとして、アジア太平洋における核の状況を日本の視点から捉えて説明することを目的に、当報告書を執筆されました。
新START脱退か、継続か 揺さぶるプーチン氏 試される米政権
要旨2022年2月23日、朝日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事「新START脱退か、継続か 揺さぶるプーチン氏 試される米政権」が掲載されました。この記事は、ロシアが新戦略兵器削減条約(New START)の停止を決定し、バイデン米大統領がウクライナの首都キーウを電撃訪問した直後に掲載されたものです。秋山教授は、ウクライナ侵攻から1年が経つ今、ロシアの決断をどう受け止め、プーチン氏がなぜあのような行動を取ったのかについて解説しました。さらに、ロシアの履行停止判断は、バイデン政権が掲げる軍縮政策を大きく揺さぶり、米国内の政治的分裂を引き起こす可能性があると述べました。最後に、新STARTの更新交渉がさらに停滞する可能性があり、今後の展開を読み解くには、今回の状況に米国がどう対応するか、さらなる精査が必要であると指摘しました。
露の新START発言「極めて政治的」 秋山信将・一橋大大学院教授
要旨2023年2月22日、毎日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『露の新START発言「決めて政治的」』が掲載されました。秋山教授は、プーチン氏による今回の新START条約に関する発言は現状を大きく変えるものではないとしました。それよりは、バイデン米大統領の突然のウクライナ訪問やウクライナ侵攻1周年を受けて、世の中に対して強いメッセージを送る必要があると考えたプーチン氏が行った「高度に政治的」な行動であると説明しました。プーチン氏の狙いは、米国内で新START条約支持派と条約脱退派との対立を引き起こし、米国内の政治を揺さぶることにあるのではないか、と教授は指摘しました。いずれにしても、最近の緊張状態は今後の後継条約に向けた交渉を難航させ、グローバル社会における軍縮の動きに対して大きな脅威となっていると述べました。
核の脅威に「慣れた」世界のその先 侵攻の出口に待つ矛盾とジレンマ
要旨2023年2月20日、朝日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『核の脅威に「慣れた」世界のその先 信仰の出口に待つ矛盾とジレンマ』が掲載されました。秋山教授は、プーチンの核兵器使用の脅しに国際社会が慣れてしまう危険性を指摘しました。このような脅威を軽視することで、ロシアがより攻撃的になり、戦争に思わぬ展開が起こる可能性があると述べました。しかし、教授はまた、いくつかのジレンマがあるため、現在世の中が置かれている戦争状況から簡単に抜け出す方法はないと論じました。ロシアが核兵器を使わずに降伏することが最良のシナリオだと示しつつ、それ以外の可能性も考慮する必要があるとしました。一方、核兵器のない世界を実現するためには、核の廃絶という理念を語るだけではなく、それを具現化するのにいかなる手段が必要なのかを国際社会でアイディアを出し合って合意に向けて努力するべきだと主張しました。最後に、このような話し合いや世界構造の認識が「戦後」の国際秩序の構想につながると議論しました。