出版物

グローバルリスク・危機管理プログラム

露の新START発言「極めて政治的」 秋山信将・一橋大大学院教授

著書名秋山信将
出版日2023年2月22日

要旨2023年2月22日、毎日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『露の新START発言「決めて政治的」』が掲載されました。秋山教授は、プーチン氏による今回の新START条約に関する発言は現状を大きく変えるものではないとしました。それよりは、バイデン米大統領の突然のウクライナ訪問やウクライナ侵攻1周年を受けて、世の中に対して強いメッセージを送る必要があると考えたプーチン氏が行った「高度に政治的」な行動であると説明しました。プーチン氏の狙いは、米国内で新START条約支持派と条約脱退派との対立を引き起こし、米国内の政治を揺さぶることにあるのではないか、と教授は指摘しました。いずれにしても、最近の緊張状態は今後の後継条約に向けた交渉を難航させ、グローバル社会における軍縮の動きに対して大きな脅威となっていると述べました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

核の脅威に「慣れた」世界のその先 侵攻の出口に待つ矛盾とジレンマ

著書名秋山信将
出版日2023年2月20日

要旨2023年2月20日、朝日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『核の脅威に「慣れた」世界のその先 信仰の出口に待つ矛盾とジレンマ』が掲載されました。秋山教授は、プーチンの核兵器使用の脅しに国際社会が慣れてしまう危険性を指摘しました。このような脅威を軽視することで、ロシアがより攻撃的になり、戦争に思わぬ展開が起こる可能性があると述べました。しかし、教授はまた、いくつかのジレンマがあるため、現在世の中が置かれている戦争状況から簡単に抜け出す方法はないと論じました。ロシアが核兵器を使わずに降伏することが最良のシナリオだと示しつつ、それ以外の可能性も考慮する必要があるとしました。一方、核兵器のない世界を実現するためには、核の廃絶という理念を語るだけではなく、それを具現化するのにいかなる手段が必要なのかを国際社会でアイディアを出し合って合意に向けて努力するべきだと主張しました。最後に、このような話し合いや世界構造の認識が「戦後」の国際秩序の構想につながると議論しました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

リアリズムの誘惑、リベラリズムの憂鬱 問われる核の役割

著書名秋山信将
出版日2022年11月18日

要旨2022年11月18日に世界のあらゆる問題を取り上げる雑誌『アステイオン』がウクライナ戦争の特集号を出版し、秋山教授の論文が掲載されました。ロシアのウクライナ侵攻によって核兵器の使用及びその役割について多くの議論が展開されてきました。教授はまず、戦時に核保有がもたらす影響を考えるための枠組みを解説し、これを踏まえてロシアのウクライナ侵攻における核戦力の運用を検討しました。ロシアは核の存在を強く意識させるシグナルを何度も送り続けたと指摘し、このシグナリングが米欧の行動をある程度抑止してきたと主張しました。しかし、同時にロシアが作り出した「安定・不安定のパラドクス」は自国の行動を抑止するきっかけにもなっていると説明しました。次に、教授はウクライナ戦争が核軍備管理体制に及ぼしてきた影響と、米ロ双方の動きが国際秩序にもたらす長期的な影響を概説しました。その一つとして、リベラルな国際秩序の中でリアリズム的勢力均衡型秩序を温存してきたということが挙げられます。さらに、核に関する「正義」の議論がいかに相対的かということをTPNWにおける各国の姿勢を踏まえて指摘し、核が「ダブル・スタンダード」で見られていると強調しました。最後に、米ロの対立に加え、米中間でも緊張が高まっていることを考慮し、核がもたらす影響がエスカレートする中で米ロ中の競争と対立を守るためのルールが提供されるべきだと論じました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

岸田首相の「理想」と「現実」 核なき世界をどう考えれば良いのか?

出版日2022年12月1日

要旨2022年12月1日、刊行された朝日新聞の「安保の行方を考える」というインタービュー連載に一橋大学国際・公共政策大学院院長の秋山信将教授のインタービュー記事が掲載されました。教授は、核不拡散条約(NPT)再検討会議に出席した岸田首相の姿勢を評価しつつ、核軍縮を追求するためにはさらなる貢献が必要だと指摘しました。特にロシアによるウクライナへの核の恫喝は「核なき世界」を遠のけた中、日本はいかに核軍縮に向けて行動していくべきかを論じました。さらに、秋山教授は核なき世界という「理想」と安全保障環境の悪化という「現実」をどう結びつけるかについてご自身の見解を述べられました。そして、今後日本で開催される重要な国際会議において日本が達成するべき核問題の目標を提言しました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

日本のジレンマ 核廃絶を主張しながら核抑止力に依存

出版日2022年9月17日

要旨ロシアによる核兵器使用の現実味が増している中、秋山信将教授が核使用を法的観点から説明し、核軍縮や核廃絶に向けて日本が取るべき行動について解説しました。教授は、ウクライナ戦争におけるロシアの核をめぐる言動に関して、核を使用すること自体は法的に禁じられていないとしつつも、この一連の行動は核抑止論、核廃絶論の両方を強化したと指摘しました。また、来年の5月にG7サミットを主催する日本が、核に依存しない世界を構築するために、核兵器について考える場を提供することが大事だと主張しました。日本は、核禁止条約への加盟を最終目標とするべきだとしつつ、北東アジアを核のない地域にするためには慎重かつ地道に取り組む必要があるとしました。最後に、8月下旬に行われたNPT再検討会議における各国の動向を踏まえ、改めて核保有国と核廃絶国が集まって議論する国際会議の意義を示しました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

NPT再び決裂 緊張下、どう信頼醸成 秋山信将・一橋大学大学院教授

出版日2022年8月28日

要旨2022年8月26日に核拡散防止条約(NPT)再検討会議が最終文書を採択できないまま閉幕しました。日本政府代表団のアドバイザーとして会議のプロセスを見守った秋山教授が今後のNPT再検討会議で主要な課題となる「信頼醸成」と「危機管理」について論じました。教授は今回の再検討会議の特徴を述べた上で、今後の再検討会議で各国が足並みを揃えて共通の課題に取り組むためにはどのような働きかけが必要かについての見解を述べました。

グローバルリスク・危機管理プログラム
AKIYAMA Nobumasa

ロシアの核の脅し・中国の発言力…NPT会議に異変、秋山教授が解説

出版日2022年8月21日

要旨秋山教授がアメリカのニューヨーク州にある国連本部で8月21日から8月26日まで開催された核不拡散条約(NPT)の再検討会議に出席し、そこでの論点を解説しました。教授は2000年からNPT再検討会議に出席した経験を通して、今回の会議のポイントを述べ、ロシアによるウクライナ侵攻が会議にもたらした影響や参加国が議論した内容について説明しました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

核禁条約会議閉幕 政治的思惑の克服課題

著書名秋山信将
出版日2022年6月25日

要旨6月23日にウィーンで閉幕した核禁条約会議に関し、多くの国が会議に参加し、揃って核廃絶の重要性を指摘したことは意義があったとする一方で、会議を通じて見えた核禁条約の課題や核軍縮における日本の役割も指摘する。

グローバルリスク・危機管理プログラム

福島 –処理水の海洋放出を非政治化する

著書名秋山 信将
出版日2022年7月5日

要旨2021年4月13日、日本政府は福島第一原子力発電所の処理水を海洋放出する方針を発表したが、これについて中国と韓国からは、近隣諸国との適切な協議がされていないとの批判の声が上がった。今回の放出は科学的知見に基づいた国際基準の下で行われるため、過度に感情的になったり政治問題化したりすることは、東アジア地域への風評被害、外交関係の悪化といった影響を及ぼしかねない。日中韓3ヵ国が取り組むべきなのは、東京電力が環境基準を守りながら海洋放出を行うための枠組みの創出、および原子力に対する安全・緊急時対応に関する地域間協力の制度化であると筆者は論じる。海洋放出問題を脱政治化させ、本当に必要なアプローチをとることが、3ヵ国全体にとっても望ましいと議論する。

グローバルリスク・危機管理プログラム

ロシア・ウクライナ戦争が終わらせた米ロ軍備管理体制 -核の恫喝が対中抑止に持つ含意(下)

著書名秋山信将
出版日2022年6月14日

要旨現状維持国家(米国)、現状変更国家(中国)、衰退国家(ロシア)の戦略的目標が違う以上、この三者で軍備管理体制を築くのは容易ではない。また極超音速滑空体の開発などにより、核・非核アセットの境界もあいまいになっている。冷戦期の制度設計がついに真の終焉を迎えるなか、日本は新たな制度の模索にどう関わって行くべきか。