出版物
ロシア・ウクライナ戦争でのロシアによる核の威嚇 -中国はどのように捉えたのか-
要旨中国は、ロシア・ウクライナ戦争でのロシアの核による威嚇とその結果を受け、自国の核兵器の新たな役割として「他国の直接的な軍事介入の抑止」に注目するとともに、自らの「戦略抑止」の方法に対する自信を深めた。これにより、台湾有事が発生した場合、中国が他国の直接的な軍事介入を抑止するため、核の威嚇を実行に移す可能性が懸念される。
アジア太平洋における新たな戦略的リスクと核不拡散体制への影響―日本からの視点[in English]
要旨2023年3月6日、Asia-Pacific Leadership Network(ALPN)に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授の報告書「Emerging strategic risks in the Asia-Pacific and the impact on the nuclear non-proliferation regime: The Japanese perspective」(英文)が掲載されました。ALPNは、アジア太平洋地域を拠点とする政治、外交、そして軍部の元リーダー、現リーダー、さらには学者やオピニオンリーダーからなるネットワークです。このネットワークは、核兵器が世界にもたらす脅威について考慮を促すために世論に情報を提供すること、そして最終的には核兵器の使用を廃絶することを目的としています。秋山教授は、ALPNのメンバーとして、アジア太平洋における核の状況を日本の視点から捉えて説明することを目的に、当報告書を執筆されました。
新START脱退か、継続か 揺さぶるプーチン氏 試される米政権
要旨2022年2月23日、朝日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事「新START脱退か、継続か 揺さぶるプーチン氏 試される米政権」が掲載されました。この記事は、ロシアが新戦略兵器削減条約(New START)の停止を決定し、バイデン米大統領がウクライナの首都キーウを電撃訪問した直後に掲載されたものです。秋山教授は、ウクライナ侵攻から1年が経つ今、ロシアの決断をどう受け止め、プーチン氏がなぜあのような行動を取ったのかについて解説しました。さらに、ロシアの履行停止判断は、バイデン政権が掲げる軍縮政策を大きく揺さぶり、米国内の政治的分裂を引き起こす可能性があると述べました。最後に、新STARTの更新交渉がさらに停滞する可能性があり、今後の展開を読み解くには、今回の状況に米国がどう対応するか、さらなる精査が必要であると指摘しました。
露の新START発言「極めて政治的」 秋山信将・一橋大大学院教授
要旨2023年2月22日、毎日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『露の新START発言「決めて政治的」』が掲載されました。秋山教授は、プーチン氏による今回の新START条約に関する発言は現状を大きく変えるものではないとしました。それよりは、バイデン米大統領の突然のウクライナ訪問やウクライナ侵攻1周年を受けて、世の中に対して強いメッセージを送る必要があると考えたプーチン氏が行った「高度に政治的」な行動であると説明しました。プーチン氏の狙いは、米国内で新START条約支持派と条約脱退派との対立を引き起こし、米国内の政治を揺さぶることにあるのではないか、と教授は指摘しました。いずれにしても、最近の緊張状態は今後の後継条約に向けた交渉を難航させ、グローバル社会における軍縮の動きに対して大きな脅威となっていると述べました。
核の脅威に「慣れた」世界のその先 侵攻の出口に待つ矛盾とジレンマ
要旨2023年2月20日、朝日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『核の脅威に「慣れた」世界のその先 信仰の出口に待つ矛盾とジレンマ』が掲載されました。秋山教授は、プーチンの核兵器使用の脅しに国際社会が慣れてしまう危険性を指摘しました。このような脅威を軽視することで、ロシアがより攻撃的になり、戦争に思わぬ展開が起こる可能性があると述べました。しかし、教授はまた、いくつかのジレンマがあるため、現在世の中が置かれている戦争状況から簡単に抜け出す方法はないと論じました。ロシアが核兵器を使わずに降伏することが最良のシナリオだと示しつつ、それ以外の可能性も考慮する必要があるとしました。一方、核兵器のない世界を実現するためには、核の廃絶という理念を語るだけではなく、それを具現化するのにいかなる手段が必要なのかを国際社会でアイディアを出し合って合意に向けて努力するべきだと主張しました。最後に、このような話し合いや世界構造の認識が「戦後」の国際秩序の構想につながると議論しました。
リアリズムの誘惑、リベラリズムの憂鬱 問われる核の役割
要旨2022年11月18日に世界のあらゆる問題を取り上げる雑誌『アステイオン』がウクライナ戦争の特集号を出版し、秋山教授の論文が掲載されました。ロシアのウクライナ侵攻によって核兵器の使用及びその役割について多くの議論が展開されてきました。教授はまず、戦時に核保有がもたらす影響を考えるための枠組みを解説し、これを踏まえてロシアのウクライナ侵攻における核戦力の運用を検討しました。ロシアは核の存在を強く意識させるシグナルを何度も送り続けたと指摘し、このシグナリングが米欧の行動をある程度抑止してきたと主張しました。しかし、同時にロシアが作り出した「安定・不安定のパラドクス」は自国の行動を抑止するきっかけにもなっていると説明しました。次に、教授はウクライナ戦争が核軍備管理体制に及ぼしてきた影響と、米ロ双方の動きが国際秩序にもたらす長期的な影響を概説しました。その一つとして、リベラルな国際秩序の中でリアリズム的勢力均衡型秩序を温存してきたということが挙げられます。さらに、核に関する「正義」の議論がいかに相対的かということをTPNWにおける各国の姿勢を踏まえて指摘し、核が「ダブル・スタンダード」で見られていると強調しました。最後に、米ロの対立に加え、米中間でも緊張が高まっていることを考慮し、核がもたらす影響がエスカレートする中で米ロ中の競争と対立を守るためのルールが提供されるべきだと論じました。
岸田首相の「理想」と「現実」 核なき世界をどう考えれば良いのか?
要旨2022年12月1日、刊行された朝日新聞の「安保の行方を考える」というインタービュー連載に一橋大学国際・公共政策大学院院長の秋山信将教授のインタービュー記事が掲載されました。教授は、核不拡散条約(NPT)再検討会議に出席した岸田首相の姿勢を評価しつつ、核軍縮を追求するためにはさらなる貢献が必要だと指摘しました。特にロシアによるウクライナへの核の恫喝は「核なき世界」を遠のけた中、日本はいかに核軍縮に向けて行動していくべきかを論じました。さらに、秋山教授は核なき世界という「理想」と安全保障環境の悪化という「現実」をどう結びつけるかについてご自身の見解を述べられました。そして、今後日本で開催される重要な国際会議において日本が達成するべき核問題の目標を提言しました。
日本のジレンマ 核廃絶を主張しながら核抑止力に依存
要旨ロシアによる核兵器使用の現実味が増している中、秋山信将教授が核使用を法的観点から説明し、核軍縮や核廃絶に向けて日本が取るべき行動について解説しました。教授は、ウクライナ戦争におけるロシアの核をめぐる言動に関して、核を使用すること自体は法的に禁じられていないとしつつも、この一連の行動は核抑止論、核廃絶論の両方を強化したと指摘しました。また、来年の5月にG7サミットを主催する日本が、核に依存しない世界を構築するために、核兵器について考える場を提供することが大事だと主張しました。日本は、核禁止条約への加盟を最終目標とするべきだとしつつ、北東アジアを核のない地域にするためには慎重かつ地道に取り組む必要があるとしました。最後に、8月下旬に行われたNPT再検討会議における各国の動向を踏まえ、改めて核保有国と核廃絶国が集まって議論する国際会議の意義を示しました。
NPT再び決裂 緊張下、どう信頼醸成 秋山信将・一橋大学大学院教授
要旨2022年8月26日に核拡散防止条約(NPT)再検討会議が最終文書を採択できないまま閉幕しました。日本政府代表団のアドバイザーとして会議のプロセスを見守った秋山教授が今後のNPT再検討会議で主要な課題となる「信頼醸成」と「危機管理」について論じました。教授は今回の再検討会議の特徴を述べた上で、今後の再検討会議で各国が足並みを揃えて共通の課題に取り組むためにはどのような働きかけが必要かについての見解を述べました。
ロシアの核の脅し・中国の発言力…NPT会議に異変、秋山教授が解説
要旨秋山教授がアメリカのニューヨーク州にある国連本部で8月21日から8月26日まで開催された核不拡散条約(NPT)の再検討会議に出席し、そこでの論点を解説しました。教授は2000年からNPT再検討会議に出席した経験を通して、今回の会議のポイントを述べ、ロシアによるウクライナ侵攻が会議にもたらした影響や参加国が議論した内容について説明しました。