その他の研究成果
最判平16.12.24民集58・9・2637…貸倒れの意義―興銀事件
要旨貸し倒れの認定にあたって、債権者側の特有の事情や経済的環境等を考慮することの可否など、具体的な判断構造を明らかにするものとして重要な異議を持つ判決の解説。
法的観点から見た職場における男女の均等な機会 ー日本の男女雇用機会均等法の現状と課題 (英語)
要旨日本の男女平等法案の根幹である男女雇用機会均等法(EEOA)は、賃金差別、性別を理由とする間接差別、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いなどにおいて課題を抱えている。法の違反に対する法的制裁の強化など、今後EEOAのさらなる強化が検討されるべきであろう。
中国における法とマニュアル ―司法のあり方をめぐって-
要旨「法の手引書/マニュアル」は裁判実務や訴訟、教育での利用をはじめ歴史的、文化的に多様な形式を持ち、本書では現代における政策遂行上の機能やメディアの言説の立法への作用などが示された。本章は、「新中国」の法とマニュアルの関係を振り返り、その特徴と機能についての検討を行い、その核心にあるものを模索するものである。
EU英国間の貿易協力協定の概要―主権の観点に注目して
要旨EUと英国の間で合意されたTCA(Trade and Cooperation Agreement)をめぐる主権・権限にかかわる事項を概観し、TCAがどのようにEUと英国の関係を規定しているかを明らかにする。
「ウクライナは核を放棄したからロシアに侵攻された」という議論が見逃していること
要旨ウクライナが核を放棄しなかったらロシアに侵攻されることはなかったのではないかという言説に対し、ウクライナの非核化がほぼ唯一の選択肢であったことを主張しその経緯を分析する。
EUにおけるレインボー家族の親子承認義務
要旨EU司法裁判所の判例研究(C-490/20 V.M.A.事件) 同性婚等を認めるということはEUレベルでは規律されず、国内法により規律されている。本事件では、同性婚が認められているEU構成国(スペイン)とそうでない構成国(ブルガリア)の間の相互承認およびEU市民の自由移動が問題となった。同事件では、EU法の適用の貫徹と国家アイデンティティの尊重という相容れにくい対象の均衡をどのようにとるか、EU司法裁判所の判断が注目された。
「宅基地使用権」の改革とその到達点
要旨農村の長期停滞と貧困に直面した党国家当局は、農村の宅地を「実物」の財産として利用する方策を模索しはじめた。本章では、この宅地使用権について、財産権化という見地から問題の所在を明らかにしたうえで、試行の様相と規定の変化を分析するとともに、理論の様相と対立点を明らかにすることで、現状の到達点と今後の展望を示している。
国際課税ルールの見直しによる市場国課税の導入
要旨経済のデジタル化を進める多国間企業の活動に適切に対応するための国際課税改革の新しい枠組みを紹介し、市場国の課税権を基礎付ける理論、そしてこれらが地方税の議論に与える示唆を検討する。国際課税ルールの変化が地方税制に即座に応用されるものではないが、情報通信技術の発展によって、課税権を基礎付けてきた基準に修正が必要という点は共通し、これからの地方税制を考える上でも示唆があると考えるべきだろう。
グローバル化する東欧とアメリカ ―デタント・東西貿易・債務問題 (益田実・齋藤嘉臣・三宅康之編著 、法律文化社)
要旨東欧経済が資本主義市場経済に組み込まれて行く過程を「東欧のグローバル化」と考え、それに対するアメリカの対応を検討する。アメリカは経済的手段を行使することで対外政策の変化や政治体制の改革を促すことを期待したが、この対応によってアメリカが東欧に行使し得た影響力には限界があったことを明らかにする。