出版物
ミャンマーは「ディストピア」か?
要旨ミャンマーではこれまで機能的な民主化をもたらそうとする動きが見られたこともあったが、権威主義的、さらには「ディストピア」的な政権が維持されてきた。本稿はこのミャンマーの政治的変遷における国軍の役割について分析する。ジョージ・オーウェル(George Orwell)の小説『1984年(Nineteen Eighty-Four)』や映画『アウトブレイク(Outbreak)』などのディストピア・フィクションでは、人間の尊厳の侵害や政治的抑圧が描かれている。これらのフィクションとミャンマー政権の現状は、情報や国家統制などの面で類似している。ディストピアにおいて、世論を動かすための代表的な工作が偽情報の利用である。経済危機の中で軍事政権がどのような政策を打ち出し、一般市民にどのような影響をもたらすかを評価する。
北京の世界的メディア影響力2022年 -チリ(英語)
要旨自由度や人権状況を表すFreedom in the World レポートで知られる米国の機関フリーダム・ハウスは、2022年9月、Beijing’s Global Media Influence 2022という特別報告書を発表しました。GGRアシスタントであるサスチャ・ハニグ・ヌニェズ氏は同レポートの中で、チリにおける中国の偽情報や影響力の度合いについての箇所を共同執筆しました。報告書自体は、世界数十カ国のデジタル、報道、視聴覚メディアにおける中国の影響力工作を探り、中国国民に対する不当対応(過剰反応として)と、表現の自由と民主主義を守る回復力のメカニズムも明らかにしています。本書の成果として、中国国営メディアはもとより、公務員や外交官にも共通する慣習が確認されました。また、ハニグ氏が担当したチリでは、パンデミック時の中国のネガティブなイメージに対抗し、民主主義と並列的な概念を作り出すことを目的として、チリの伝統的なメディアの中に中国がナラティブを変革するような試みを広告や共同出版という形で組み入れていることが筆者等によって解明されました。興味深いことに、北京のシナリオを主に支持していたのはチリのエリート層であり、ジャーナリストや市民社会はこの影響工作を暴き続けていることもわかりました。この報告書は、ボイス・オブ・アメリカ(英語版と中国語版)やチリの独立系メディアEx Anteなどのメディアで引用されました。
終わりなき戦いのなかにある希望なき地の人々
要旨70年間にわたるミャンマー内戦によって、これまでに多数の国内避難民が発生してきたが、2021年以降その数は急増している。筆者は、国内避難民やその支援者にインタビューを行い、戦火によって普段の生活を追われた多くの人々が、居住地や食料、インフラ、そして教育など様々な面において非常に困難な状況に直面していることを報告する。
論壇委員から 正当性利用 秩序揺るがす
要旨市原麻衣子教授は、ロシアがウクライナ侵略に際して宗教という正統性の高い規範をも利用して、国際秩序を侵害しようとしていると指摘する。
〈多思彩々 参院選〉国際秩序形成へ、積極外交を
要旨7月10日の参議院議員選挙を前に、外交問題がどのような意味を持つのか、市原麻衣子教授が考察しています。通常、外交問題は選挙での主要課題ではありませんが、今回の選挙では様相が異なることを指摘し、各政党が外交問題をどのように取り上げているかを解説しています。
アジアからの警鐘 ー揺らいでいるとはいえ、米国の民主主義はその経験を活かしてアジアの民主派を支援できる
要旨アジア地域の安定化要因として貢献してきた民主主義とルールに基づく秩序が脆弱になっており、共通の規範と価値を維持する地域的多国間枠組みの必要性が高まっている。こうした認識を受けて発足した枠組の一つが、1.5トラック・アプローチを目指す「サニーランズ・イニシアティブ(Sunnylands Initiative)」である。これを効果的なものとするためには、アジア諸国は当事者意識を高める必要がある。
規範揺らぐ今、本質的対処を
要旨今後、規範侵害の常態化を防ぐ上で重要なことは、ロシアに譲歩しない姿勢は保ちつつも、非欧米諸国を遠ざけないよう留意して足並みの揃った理解と参画を取り付けていくことである。
アダム・ロバーツ卿は、ウクライナ危機の主な原因は欧米にあるという見方に反論している(ビルマ語)
要旨エコノミスト誌に掲載された「アダム・ロバーツ卿は、ウクライナ危機の主な原因は欧米にあるという見方に反論している」のビルマ語訳。
フン・セン首相のビルマ訪問とカンボジアの国内問題(ビルマ語)
要旨本稿では、カンボジアの人権状況と、ミャンマー問題を解決するためのASEAN議長国への転身について解説している。さらに、中国がカンボジアの議長国に影響を与えていることを、ASEANの政策遂行上の懸念材料として取り上げている。