出版物
〈多思彩々〉アジアの「反抑圧」官民連携で
要旨2022年10月30日に刊行された信濃毎日新聞の〈多思彩々〉コラムに一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授の記事が掲載されました。教授は、アジアで拡大している言論弾圧の動きに対して、各国の政府は民間の協力を得ながら反抑圧を押し進める必要があると説明しました。第二次世界大戦後、アジア各国の政府は内政不干渉原則のもとで他国との関係性を保ってきた一方で、現代は権威主義的な政府に反対する民間リーダーが数多く活躍しています。市原教授は、本年日本で開催されたサニーランド・イニシアティブを例に取り、言論弾圧に晒される人々をサポートするためには、このような官民の連携が欠かせないと指摘しています。
習近平後のチリ[スペイン語]
要旨2022年11月8日、GGRアシスタントのサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏の記事が、イギリスのフィナンシャル・タイムズと提携しているチリの新聞「Diario Financiero」に掲載されました。この記事の中でハニグ・ヌニェズ氏は、再度中国のトップに選ばれた習近平指導者の再選がもたらす意義を説明し、中国で権威主義と予測不可能性が強まることによって、経済的協力国のチリ経済が被害を受けると警鐘を鳴らしています。チリは貿易や資金調達の面で中国に経済的に依存しているため、中国で起こったことはチリにも大きな影響を与えるという前提で、チリ政府が中国の動向を注視する必要があると筆者は主張しています。
世界はもっと、良くできる、朝日地球会議2022
要旨2022年10月16日からオンライン配信が始まった「朝日地球会議2022」に一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授が参加し、コロナによるアジアの民主主義の変化と今後日本がとるべき行動について指摘しました。教授は、他の登壇者と共に議論しながら、コロナ禍において政府に権力が集中するようになったことや、複雑な社会情勢を乗り越えるためには、歴史を参照する必要があることを強調しました。最後に、新しい価値観が増える世の中において、日本は、民主主義推進のために米国などの同盟国に頼るばかりでなく、自ら積極的にこれを実施していく必要があると論じました。また、本記事では市原教授が参加した討論だけでなく、「朝日地球会議2022」の他の対話も含まれています。
歴史の参照はムダか SNS情報過剰時代にデータベース化する過去
要旨2022年10月16日からオンライン配信が始まった「朝日地球会議2022」に一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授が参加しました。教授は、コロナ後の時代に関する仏独の2人の専門家へのインタービューをもとに、民主主義と今後の経路について他の参加者と共に討議しました。また、他の登壇者と共に議論しながら、ロシアによるウクライナ4州の併合を例にとって、選挙の正当性を使った自由を抑圧する動きが各地で起こっていると主張しました。さらに、混沌とした世の中を理解するためには、過去から学ぶことが重要だと指摘しました。最後に、新しい価値観が増える世の中において、日本は、民主主義推進のために米国などの同盟国に頼るばかりでなく、自ら積極的にこれを実施していく必要があると論じました。
ポーランドにおけるLGBTQ+コミュニティの現状と保護
要旨本稿では、ポーランドにおけるLGBTQ+の人々の状況を、将来実現可能な政策を議論する素地を提供するために人間の安全保障の観点から分析する。最終的な目標は、ポーランドのLGBTQ+コミュニティが直面している状況を改善し、抱えている問題を解決することに加えて、当問題の二つの主要アクターである現ポーランド政府とLGBTQ+コミュニティの両方にとって受け入れ可能な望ましい政策提言を行うことである。そのために、本稿ではまず、ポーランドのLGBTQ+コミュニティの現状を、その法的地位、現行の政策、及び与党の政治家の行動を分析して説明する。また、解決すべき問題への理解を深めるために、現状がLGBTQ+の人々に与える影響についても検証を行う。その次のステップでは、3つの異なる政策オプションを、その功罪とともに紹介し、各アクターの予想される反応から、どの程度実現可能なのかを探る。最後に、両方のアクターにとって有益であり、かつ実現可能な政策提言を行う。すなわち、LGBTQ+をヘイトクライムから法的に保護し、完全な平等を与えない一方、同じ市民としての理解を促進するという妥協案である。これは、LGBTQ+のコミュニティにとって最も望ましい結果ではないかもしれないが、LGBTQ+の人々にとっては個人の安全が増し、保守的な現ポーランド政府にとっても好都合な結果をもたらす可能性を意味するものである。
ミャンマーは「ディストピア」か?
要旨ミャンマーではこれまで機能的な民主化をもたらそうとする動きが見られたこともあったが、権威主義的、さらには「ディストピア」的な政権が維持されてきた。本稿はこのミャンマーの政治的変遷における国軍の役割について分析する。ジョージ・オーウェル(George Orwell)の小説『1984年(Nineteen Eighty-Four)』や映画『アウトブレイク(Outbreak)』などのディストピア・フィクションでは、人間の尊厳の侵害や政治的抑圧が描かれている。これらのフィクションとミャンマー政権の現状は、情報や国家統制などの面で類似している。ディストピアにおいて、世論を動かすための代表的な工作が偽情報の利用である。経済危機の中で軍事政権がどのような政策を打ち出し、一般市民にどのような影響をもたらすかを評価する。
北京の世界的メディア影響力2022年 -チリ(英語)
要旨自由度や人権状況を表すFreedom in the World レポートで知られる米国の機関フリーダム・ハウスは、2022年9月、Beijing’s Global Media Influence 2022という特別報告書を発表しました。GGRアシスタントであるサスチャ・ハニグ・ヌニェズ氏は同レポートの中で、チリにおける中国の偽情報や影響力の度合いについての箇所を共同執筆しました。報告書自体は、世界数十カ国のデジタル、報道、視聴覚メディアにおける中国の影響力工作を探り、中国国民に対する不当対応(過剰反応として)と、表現の自由と民主主義を守る回復力のメカニズムも明らかにしています。本書の成果として、中国国営メディアはもとより、公務員や外交官にも共通する慣習が確認されました。また、ハニグ氏が担当したチリでは、パンデミック時の中国のネガティブなイメージに対抗し、民主主義と並列的な概念を作り出すことを目的として、チリの伝統的なメディアの中に中国がナラティブを変革するような試みを広告や共同出版という形で組み入れていることが筆者等によって解明されました。興味深いことに、北京のシナリオを主に支持していたのはチリのエリート層であり、ジャーナリストや市民社会はこの影響工作を暴き続けていることもわかりました。この報告書は、ボイス・オブ・アメリカ(英語版と中国語版)やチリの独立系メディアEx Anteなどのメディアで引用されました。
終わりなき戦いのなかにある希望なき地の人々
要旨70年間にわたるミャンマー内戦によって、これまでに多数の国内避難民が発生してきたが、2021年以降その数は急増している。筆者は、国内避難民やその支援者にインタビューを行い、戦火によって普段の生活を追われた多くの人々が、居住地や食料、インフラ、そして教育など様々な面において非常に困難な状況に直面していることを報告する。
論壇委員から 正当性利用 秩序揺るがす
要旨市原麻衣子教授は、ロシアがウクライナ侵略に際して宗教という正統性の高い規範をも利用して、国際秩序を侵害しようとしていると指摘する。
〈多思彩々 参院選〉国際秩序形成へ、積極外交を
要旨7月10日の参議院議員選挙を前に、外交問題がどのような意味を持つのか、市原麻衣子教授が考察しています。通常、外交問題は選挙での主要課題ではありませんが、今回の選挙では様相が異なることを指摘し、各政党が外交問題をどのように取り上げているかを解説しています。