出版物
「ロシア・トゥデイ」のチリへの静かな到来 -プロパガンダと言論の自由への挑戦
要旨2025年6月、ロシアの国営メディア「ロシア・トゥデイ(Russia Today)」がチリの公共テレビで放送を開始した。これは事前の通告なしに、また放送権を獲得していた民間企業との契約によって行われた。このことは、契約の透明性の欠如と、外国による情報操作・干渉(Foreign information manipulation and interference: FIMI)キャンペーンの潜在的影響という疑惑により、大きな緊張を引き起こした。本稿では、この出来事がもたらす潜在的な影響について考察し、認知戦争とハイブリッド脅威に関する現在の安全保障上の議論が、南米の安定した民主主義国家にまで及んでいることを示す。
太平洋における覇権の喪失(スペイン語)
トランプ第2期政権下における非自由主義への世界的防波堤としての日本(英語)
巨人に立ち向かう―中国共産党のグローバルな反民主主義キャンペーンを阻止する香港発のカウンター・ナラティブ
要旨*この論文は2024年4月10日に実施されたインタビューをもとに作成された。
外部連携ー地政学的パワーの手段としての技術移転:政治・経済・安全保障の視点からの考察(スペイン語)
影響工作を巡る懸念 ―研究者の役割と課題
要旨本報告書は、沖縄の潜在的な操作対象層が、中国が行う外国による情報操作と干渉(Foreign Information, Manipulation and Interference: FIMI)をどのように認識しているかを分析するものである。こうした秘密裏の影響工作は、民主主義国家の世論を誘導し、政策に影響を与えることを目的としている。ソーシャルメディアやデジタルプラットフォームの世界的な普及により、これらの活動は民主的な議論や社会の安定を脅かす可能性がある。しかし本研究では、現地における実際の影響が、従来の研究や世論において過大評価されている傾向があることが明らかになった。FIMI活動に対する理解と対応力を高めるためには、以下の4つの課題を検討する必要がある。すなわち、1)FIMIが介入する地域固有の文脈、2)研究者が分析の対象とするレベル、3)活動で用いられるナラティブの起源、4)関与する対象グループである。これらの要素を踏まえて影響活動のインパクトを分析することで、民主主義社会におけるFIMIへのより効果的な対応につながることが期待される。
日本のミレニアル世代・Z世代が民主主義に与える影響
要旨民主的ガバナンスの持続可能性を確保するためには、若い世代が政策決定プロセスに積極的に関与することが極めて重要である。東北アジアにおける伝統的な政治制度と新たに登場する政治的アクターとの間のギャップに対応するため、アジア民主主義研究ネットワーク(ADRN)は共同研究を実施し、日本、韓国、台湾、モンゴルの事例を検討する一連のワーキングペーパーを発表した。これらの論文では、各国の若者が民主主義をどのように捉えているかを探り、政府・政党・市民社会組織を含む関係者に対して提言を行っている。
妄想的な選挙運動への対策
要旨選挙手続きは、人々が自らの代表者を選び、その代表者が人々の意思を発展させ遂行する義務を担うということから、民主主義にとって極めて重要である。そのため、選挙運動が実施される。選挙運動は一般的に、政党が目指す意図や発展要領を反映するものだ。それは候補者自身と同様(あるいはそれ以上)に重要で説得力を持つ。しかしながら、世の中のあらゆるものと同じく、選挙運動にも実現可能なものと非現実(妄想)[1] 的なものがある。実現可能な選挙運動は、有権者が自国のために十分な情報を得た上で投票することを可能にするが、非現実的なものは有権者に誤った情報を与えると考えられる。そうした選挙運動が人々に影響を与え得るにもかかわらず、言論の自由の重要性からそうした選挙運動を直接に規制する詳細な法律は未だ策定されていない。本稿では、有権者の力を強化し、民主的社会におけるより健全なシステムを構築するために、選挙運動に関する法的な枠組みと、妄想的な選挙運動への対策について説明する。
在日クルド人に関する偽情報への対策とカウンターナラティブの設計
要旨在日クルド人をめぐる偽情報や誤情報がオンライン空間で急増している。在日クルド人をめぐる偽情報は、単なる入管制度や法制度上の課題にとどまらず、民族差別というより深刻な社会問題である。本稿は、偽情報をめぐる現状を分析し、効果的なカウンターナラティブを提示し、政策提言を行う。まずX(旧Twitter)の投稿を分析し、2023年の川口市での事件以降、在日クルド人に関する投稿量が爆発的に増加し、その中で犯罪や治安悪化といった社会的不安を喚起する偽情報が拡散されたことを明らかにする。その上で、偽情報の拡散に関与するアクターと、その受容を促す心理的要因に注目し、個々人が抱える「個人的不安」と「社会的不安」が排外主義的ナラティブの浸透を可能にしている点を指摘する。このような不安を抱える層に対するカウンターナラティブを検討し、個人的不安を抱える層には在日クルド人を「共感可能な隣人」として描く戦略、社会的不安を抱える層にはクルド人が社会規範を共有し共存可能な存在であることを示す戦略、さらに両者に共通する接触仮説に基づく肯定的交流の促進を提案する。本稿の分析を踏まえ、①カウンターナラティブ戦略の効果検証と精緻化、②在日クルド人の法的地位安定化を含む制度的課題への対応、③多文化共生社会の基盤強化に向けた社会的支援の拡充について、政策提言を行う。








