出版物

民主主義・人権プログラム

曖昧な「国境」としての香港

著書名市原麻衣子
出版日2024年2月15日

要旨2024年2月15日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「曖昧な「国境」としての香港」が『信濃毎日新聞』に掲載されました。本記事で市原教授は、香港の民主活動家の指名手配を事例とし、香港という場所の特殊性に起因して香港が抱える法的・政治的課題に関して論じています。香港返還後も海外との接触が容易で自由を享受する香港人は、党の影響下にある香港政府が強める抑圧に対抗し、特に19年の反政府デモは象徴的事例になったと述べました。また、強まる反政府的な声を抑え込むために、中国共産党は偽情報の拡散を海外にまで拡大させたと指摘しました。さらに市原教授は、香港政府は新しい国家安全保障条例の制定を準備しており、曖昧な国境としての香港を通じて中国共産党が海外への影響拡大を図る動きに懸念を示しました。

民主主義・人権プログラム

ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ [in English]

著書名サッシャ・ハニグ・ヌニェズ
出版日2024年2月13日

要旨2024年2月13日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏が執筆した記事、「ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ」がThe Diplomatに掲載されました。本記事でハニグ氏は、中国の国営メディアには共通の目的があり、習近平主席からの指示の下、北京の視点に沿った世論の形成が目指されていると述べました。その中で、中国メディア・グループが運営するスペイン語チャンネルのChina Global Television Network (CGTN)と新華通信社、ホラ・チャイナは、異なる戦略を採用し、視聴者への影響力は限定的であるが、特定のトピックに関する動画はより多くの関心を集めており、例えば、文化的な問題や地域の危機に関する動画は、視聴者からの反応が高い傾向にあると指摘しました。

民主主義・人権プログラム

「影響工作」民主国家の脅威

著書名市原麻衣子
出版日2024年1月21日

要旨2024年1月21日に、法学研究科の市原麻衣子教授に関する記事、「『影響工作』民主国家の脅威」が『読売新聞』に掲載されました。この記事は、「影響工作」という言葉は日常生活とは無関係に思われるかもしれないが、実際には深刻な脅威であることを説明しています。例えば、中国が福島原発の処理水を「核汚染水」と呼び、日本産水産物を全面禁輸するなど、様々な手法で日本に対する偽情報を拡散し、日本に影響を及ぼそうとしていたことが挙げられています。さらに影響工作は、民主主義の根幹である選挙にも向けられていると述べた上で、米大統領選におけるロシア、台湾大統領選における中国の選挙介入が偽情報を用いて行われていたことも指摘されています。増大する影響工作の脅威に対して、私たちが取り組むべき対策として、まずアテンション・エコノミーがもたらす弊害を理解すること、次に信頼できる伝統メディアを通じて偽情報の影響力を軽減すること、そして民主主義が弱体化しないように一般市民が意識を高く持ち真の自由に裏打ちされた民主主義を守り続けることの重要性について提言しています。市原教授は、これらの対策は、権威主義国による影響工作への対抗手段として極めて有効であると強調しました。

民主主義・人権プログラム

TikTokの危険性、ラテンアメリカで懸案の議論 [in Spanish]

著書名サッシャ・ハニグ・ヌニェズ
出版日2024年2月14日

要旨2024年2月14日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏が執筆した記事、「TikTokの危険性、ラテンアメリカで懸案の議論」がLa Terceraに掲載されました。本記事でハニグ氏は、インド、米国、ニュージーランドをはじめとする数十カ国の国々が自国内でのTikTokの使用を制限する中、TikTokはラテンアメリカで非常に高い人気を集めていると指摘し、今後TikTokがラテンアメリカ社会にもたらしうる問題と必要な対策について論じました。ハニグ氏は、まずTikTokの使用が世界的に制限された理由として、中国共産党がTikTokを防衛手段として利用するための法制度を整備したこと、TikTokで宣伝されるあるいは制限されるコンテンツを同社が管理しているのか疑問視されること、TikTokを利用する未成年者数が問題になっていること、という三点を挙げました。結論としてハニグ氏は、ラテンアメリカはTikTokの規制に関する議論に消極的だが、データ保護と各国が直面する地政学的な変化を理解し、包括的な議論を展開する必要があると強調しました。

民主主義・人権プログラム

ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ [in English]

著書名サッシャ・ハニグ・ヌニェズ
出版日2024年2月13日

要旨2024年2月13日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏が執筆した記事、「ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ」がThe Diplomatに掲載されました。本記事でハニグ氏は、中国の国営メディアには共通の目的があり、習近平主席からの指示の下、北京の視点に沿った世論の形成が目指されていると述べました。その中で、中央広播電視総台が運営するスペイン語チャンネルの中国国際電視台(China Global Television Network: CGTN)と新華通信社、中国中央電視台(China Central Television: CCTV)は、異なる戦略を採用し、視聴者への影響力は限定的であるが、特定のトピックに関する動画はより多くの関心を集めており、例えば、文化的な問題や地域の危機に関する動画は、視聴者からの反応が高い傾向にあると指摘しました。

民主主義・人権プログラム

TikTokが安全保障に与える影響とTikTok規制の現在

著書名サッシャ・ハニグ・ヌニェズ、市原麻衣子
出版日2024年2月1日

要旨2024年2月1日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏と法学研究科の市原麻衣子教授による共著論文、「TikTokが安全保障に与える影響とTikTok規制の現在」が『情報法制研究』から出版されました。本論考でハニグ氏と市原教授はまず、中国政府が企図するナラティブ形成におけるメディアとSNSプラットフォームの役割について論じました。その上で、TikTokが引き起こす懸念について安全保障上の懸念、アルゴリズムとAIの入力バイアス、若年層と誤解を招く情報、民主主義の観点からの議論などの四つの側面から論じました。その後、欧米におけるTikTok規制の内容を検討し、最後に今後日本が取るべき措置について提言しました。日本は、国家安全保障や子どもの権利などを保護しつつ、恣意性を排除することが求められており、そのためにはSNSプラットフォーム分析、中国の国内法が及ぼす影響を視野に入れた規制の検討、プライバシー権保護を巡る法整備が重要であると論じました。

民主主義・人権プログラム

タイの憲法に見る政党結成の自由

著書名パリン・ジャルサヴィ(Parin Jaruthavee)
出版日2024年5月16日

要旨政党結成の自由は民主主義的価値の根本にあるが、タイではこの自由がしばしば見落とされる傾向がある。権利と自由を守るという本来の目的とは裏腹に、タイの憲法は、うかつにもこうした原則そのものを阻害している。結党に厳しい要件を課し、政党の解散を容易にすることで、憲法は政党に負担を課すだけでなく、政党結成の自由をも制限している。このような制約は、タイ国民の政治参加と代表性を著しく損なう。さらに、政党解散の容易性によりタイの政治状況は操作されることがあり、より広く見るとしばしば政治ゲームの戦略的なチェスの駒として利用される。こうした動きはタイの政治状況をさらに複雑化し、国民の声を真に反映するための憲法改正の必要性を浮き彫りにしている。

民主主義・人権プログラム

日本発の台湾に関する誤情報-ナラティブ分析と新たなナラティブの形成

著書名黒木美里 坂口聡 佐藤正宗
出版日2024年5月13日

要旨偽(誤)情報に対する懸念が高まるなか、どのように対処すればいいのであろうか。本稿は、日本国内から発せられた台湾に関する誤情報を用いて、この問題について検討する。日本経済新聞が2023年2月28日に掲載した「台湾の退役幹部の9割が中国に情報を売っている」との記事は、日本国内で議論を巻き起こしただけでなく、台湾政府が直接に内容の不正確さを指摘するまでに至った。本稿ではまず、この情報に関するファクトチェックを行い、誤情報である可能性が高いと分析する。次に、当該誤情報の対象となるペルソナと誤情報が持つナラティブの詳細な分析を通じて、本誤情報への対抗策を講じる。50歳の既婚者男性で、会社員で管理職を担い、世帯年収850万円、日経新聞の読者である人物をペルソナとして推定し、誤情報が反台湾感情を惹起しうると指摘する。ペルソナが高い関心を持つ経済の観点から対抗ナラティブを形成し、拡散の際の注意点にも触れる。最後に、本稿の限界を指摘しつつ、新聞記事であってさえ正確性に注意しなければならないと結論する。

民主主義・人権プログラム

敵対国を内側から攻撃する影響工作:中国が「語らないもの」の政治性

著書名市原麻衣子
出版日2024年1月25日

要旨2024年1月25日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「敵対国を内側から攻撃する影響工作:中国が「語らないもの」の政治性」が『nippon.com』に掲載されました。本記事で市原教授は、中国による影響工作の近年における手段・規模の拡大と主な目的について論じています。市原教授は習近平政権下での中国共産党の影響工作は、対外宣伝の強化や対外偽情報の利用など、攻撃的に展開されてきたと述べました。また、香港のデモや新型コロナウイルス流行を受けて国際的な非難が高まる中、中国共産党を美化する一方で米国の対応を批判するナラティブを拡散したと指摘しました。そして、中国共産党が影響工作を行う目的は民主主義国を内側から弱体化させることにあるとした上で、その典型例として処理水の海外放出を巡る偽情報の問題を取り上げました。最後に、影響工作のターゲットは我々個々人であり、情報発信者の政治性を意識したうえで情報を摂取することの重要性を強調しました。

民主主義・人権プログラム

私は東京に住むヤンゴン市民です -ジャーナリスト北角裕樹氏インタビュー

著書名チョン・ミンヒ
出版日2024年4月25日

要旨*本稿は、2024年3月11日に行われたインタビューをもとに作成された。