その他の研究成果

欧州人権裁判所によるアムネスティの取扱いーアムネスティと重大な人権侵害に対する国家の捜査・訴追義務との関係性

著書名竹村仁美
出版日2021年

要旨比較的多くの場合、紛争を経験した国では、広範囲にわたる恩赦が移行期の「取引」の一部となっている。これらの恩赦は、国内の政治プロセスにおける元戦闘員間の分裂を減衰し、治安部門の改革を奨励し、和平交渉中にエリートの政治的妥協を可能にするための手段とみなされることが多い。紛争中の破綻国家においては、戦争犯罪や人道に対する犯罪、そして時には集団殺害犯罪(ジェノサイド)などといった国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪に匹敵する人権侵害が行われることも少なくない。他方で、国際刑事法の発展段階は、国際法が関係国家に対して国際法上の犯罪の訴追・処罰を義務づけているかどうかという視座を指標として計られてきた側面がある。国際法上、国家実行において、国際法上の犯罪の取締義務と恩赦との関係は曖昧なままとなってきた。欧州人権裁判所大法廷によれば、現代国際法上、民間人の故意の殺害など、基本的人権の重大な侵害に相当する行為に対する恩赦は、そのような行為を訴追し、処罰する一般に認められている国家の義務とは相容れないため、容認できないと見る傾向が強まっている。本稿では、欧州人権裁判所が、重大な人権侵害を構成する犯罪への締約国による恩赦に対してどのような態度をとっているのかを明らかにしていく。

リーガル・イノベーションプログラム

アメリカにおける男女雇用平等法理の展開―ジリアン・トーマス氏の著書を手がかりとして

著書名中窪裕也
出版日2021年6月

要旨『雇用差別と闘うアメリカの女性たちー最高裁を動かした10の物語』を手がかりにし、1964年公民権法(Civil Rights Act of 1964)の第7編の下における性差別法理の展開、関連判例、および現在までの法制の動きの概観。いくつかの事件を除いては、女性が個人として使用者を相手に訴訟を提起したのであり、これらが積み重なって今日まで法理が形成されてきたという点には、アメリカらしさが現れている。

民主主義・人権プログラム

公平性の罠−−日本の高齢者にとってのワクチン予約システムと混乱(英語)

著書名市原麻衣子
出版日2021年6月15日

要旨本論文は、日本のワクチン流通システムが直面した政治的、技術的、制度設計上の問題を指摘し、特に高齢者向けの問題を取り上げている。筆者は、公平性よりも個人の特性に焦点を当てた方が、ワクチン接種計画の遂行には良かったのではないかと提案している。

グローバルリスク・危機管理プログラム

福島:処理水の海洋放出を非政治化する(英語)

著書名秋山信将
出版日2021年6月

要旨2011年の福島原発事故に関連した処理水の放出に関する日本の方針、日本の発表に対する各ステークホルダーの反応を取り上げる。

リーガル・イノベーションプログラム

コロナ禍の拡大と第137回大会

著書名中窪裕也
出版日2021年5月

要旨コロナ禍を契機に様々な変化の波が押し寄せており、新しい状況を見すえたより良い社会システムを構築することも、労働法学の重要な課題である。

リーガル・イノベーションプログラム

デジタルプラットフォーム規制を巡る欧州の動向

著書名生貝直人
出版日2021年5月

要旨EUの各種デジタルプラットフォーム(DPF)規制改革において、2014年以降から現在の欧州委員会に至るまでのDPF関連制度改革、法案を紹介する。

民主主義・人権プログラム

アジアの多国間主義と民主主義 (スペイン語)

著書名市原麻衣子
出版日2021年5月

要旨本文論では、2000年代前半までにアジアで構築された制度や協力の枠組みにおいて、具体的な成果が少ないことを指摘する。政治的な不安定さや中国などの権威主義勢力の台頭は、この地域における民主主義の拡大にとっての課題である。これを防ぐための答えは、協力、新興民主主義国の統合、制度化に基づいており、COVID-19の流行により、これはさらに困難になる可能性がある。

セウォル号事件、フェミニズム…作品性と大衆性を兼備した韓国の社会派映画5選

著書名権容奭
出版日2021年5月10日

要旨韓国映画には政治や権力を果敢に批判し、歴史・社会問題に触れる作品が多い。しかも作品性と大衆性を兼備する点が強みだ。とりわけ、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を弾劾に追い込んだ「ろうそく革命」の前後、2015~17年には社会派映画が数多く誕生した。

民主主義・人権プログラム

電子部品の需要とグローバル化への挑戦(スペイン語)

著書名ハニグ・サスチャ
出版日2021年5月6日

要旨本出版物では、いくつかの主要な商品が不足したことを、パンデミックの初期にいくつかの国が取った態度と関連づけ、それらが中南米に与えた影響について述べている。

民主主義・人権プログラム

変容する「人権・民主主義外交」-民主主義国の国際連携と日本のあり方

著書名市原麻衣子
出版日2021年5月

要旨バイデン政権は人権・民主主義の保護とそれに基づく外交を中核に位置付け、新たな路線の基軸は国際連携による人権・民主主義の推進となった。背後には、自由主義的国際秩序の後退に加え、国際社会の米国に対する認識変化を自覚する米政権・識者の姿がある。