要旨
2023年11月25日、法学研究科の秋山信将教授が執筆した論文、「グローバル・ヘルスレジームにおける調査・検証権限の制度的考察」が『国際政治』第211号「ヘルスをめぐる国際政治」に掲載されました。本論文では、国家主権が前面に押し出されてくる国家安全保障上の脅威に近い感染症パンデミック危機の中で、国際レジームの提供する価値と規範の実効性が担保されるための要因が分析されています。秋山教授はまず、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)の包括的保障措置協定の追加議定書や化学兵器禁止条約(Chemical Weapons Convention)のチャレンジ査察の事例を取り上げ、国家主権を制約する制度の導入が可能になる要因として、技術的実現可能性、社会的要請、政治環境、主権国家の裁量が制度的、政治的に可能になっていることを整理しました。次に、国家と世界保健機関(World Health Organization)の関係性の観点から、国際保健規則(International Health Regulations)の改正とパンデミック時の情報共有及び報告をめぐる制度上の問題を論じています。最後に、公衆衛生分野における国際レジームを通じた感染症対策の実効性向上のために、求められる国際機関の役割と国家主権の対立を乗り越えるための方策について提言しています。