一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、2023年4月22日から23日にかけて、GGR集中セミナー「偽情報に対抗し民主主義を守るには」フォローアップセッションを開催しました。今回のセッションには、各グループの参加者、GGRリサーチ・アシスタントを含め計18名が参加しました。本セッションでは、各グループのテーマに関連する偽情報の拡散パターンの分析と、偽情報に対抗するカウンターナラティブの形成に向けた議論が行われました。
台湾グループは、日本の新聞社の読者データからペルソナを設定しました。新聞記事が偽情報拡散の契機になった事例を踏まえ、信頼できる新聞社からカウンターナラティブを発信するなど、ある偽情報に対して効果的なカウンターナラティブを形成する戦略を検討しました。日韓関係グループは、排外主義的な思想を持つネットユーザーをペルソナとして設定し、偽の反韓言説が同様の思想を持つ特定のバブル内で拡散していることに注目しました。ただ、ペルソナを偽情報の発信者とバブル内の受信者の双方に設定しているため、より具体的に偽情報・ペルソナを設定する必要があるという指摘がありました。沖縄グループは、沖縄県知事選挙前後の偽情報に取り組み、県知事選挙立候補者を中国のスパイとする言説を発信しているグループに注目しました。ペルソナ設定においては、オンライン上でこうしたナラティブを発信している側ではなく、沖縄の有権者に変更する必要性が指摘されました。最後にワクチングループは、ワクチンを忌避する、育児中でオーガニック志向のある女性をペルソナとして設定しました。ワクチングループは質疑応答を受けて、より感情を重視し、ペルソナに適したカウンターナラティブを作成することを今後の方針としました。
2日目は、湯淺墾道教授(明治大学公共政策大学院 ガバナンス研究科)が、偽情報に対抗する取り組みの現状と今後の課題に関する講義を行いました。偽情報に対抗する取り組みとして、アメリカの連邦軍や州の例が挙げられ、具体的には、民主主義体制に危険を及ぼす選挙介入やサイバー攻撃に防御・対抗するアクターの努力に言及しました。質疑応答において湯淺教授は、アメリカ連邦軍の事例を踏まえ、日本における偽情報への対抗手段の現状と課題を詳細に述べました。
【イベントレポート作成】
チョン・ミンヒ(一橋大学大学院法学研究科 博士後期課程)
中野 智仁(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)