要旨
2023年2月に、一橋大学法学研究科教授・GGR研究員の但見亮教授の論文「中国法の視点から‐「中国式法治」とは何か」が『比較法研究』第83巻に掲載されました。 但見教授は、香港国家安全維持法を「香港の中国化」と位置づけ、「中国化」の基準となる中国の「法治」と「民主」について考察しています。教授はまず、中国における「法治」は中国共産党指導の下、党の政策目標の実現を目指すものだと説明します。また、「民主」に関しては、「統一」や「団結」が強調され、党と一体的に位置づけられていると論じました。このように、中国式の「統治」と「民主」は民主主義国家のそれとは相当程度異なる概念だと述べました。 また、教授は習近平指導部発足後の「新時代」における権力集中や昨今のゼロコロナ政策は、これらの概念の変化を示さないと指摘します。むしろ党の指導による「法治」とそのもとで全体の利益の促進を目指す「民主」が強化・貫徹されている証左だと論じました。