【GGRブラウンバッグランチセミナー】ロシアの侵略がポーランドにおける民主主義・人権の価値に与えた影響
日にち2023年2月8日
時間12:00-13:15
開催場所マーキュリータワー3302
イベント概要

2023年2月8日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)はクリストフ・クラコフスキー氏(カルロ・アルベルト大学院大学 専任講師)を迎え、第12回GGRブラウンバクランチセミナー「ロシアの侵略がポーランドにおける民主主義・人権の価値に与えた影響」を開催しました。

クラコフスキー氏は、ポーランド国内のウクライナ難民に対する態度の変化を調査するサーベイ実験の結果を報告しました。ポーランドは、ロシアによるウクライナへの侵略によって発生した難民の最大受け入れ国であり、2022年9月時点ではポーランド世論の73%がウクライナ難民の受け入れに賛成しています。こうした状況に関してクラコフスキー氏などの研究チームは「ウクライナ難民をめぐる政治的メッセージの変化や、戦争費用の高騰によって、ウクライナ難民に対する態度は変化するのか」という問いを立て、2022年と2023年の2回、ポーランド国民の合計約1万人に対してサーベイを行いました。サーベイでは、ロシアによるウクライナ侵略がポーランド国内に与える社会的・経済的にネガティブな影響に関するいくつかの言説を提示し、与えられた言説によって、難民に対する態度がどのように変化するのかを調査しました。サーベイの分析結果のうち、特筆すべき事項として以下の2点が挙げられます。1点目は、ネガティブなメッセージを受けとっても、ウクライナ難民への支持は揺るがないということです。その一方で、2点目は、ポーランドの女性は、男性に比べてウクライナ難民に対してネガティブな態度を持つということです。1点目に関しては、アンチ・ロシアな傾向がポーランド国内でも非常に強く、逆にアンチ・ウクライナな態度はタブー視されていること、日常的なウクライナ人との接触(見かけるのではなく、話すこと)がウクライナ難民への支援を増加させること、そしてポーランド国内での強いパターナリズムなどが、ウクライナ難民に対する揺るがない支持の要因になっているということです。また2点目の要因については、ポーランドの女性は男性に比べてパターナリスティックではないこと、そしてウクライナの女性はジェンダー平等に関して時代遅れの考えを抱いていることなどが挙げられました。

質疑応答には一橋大学の学生・教員約20名が参加し、活発な議論がなされました。サーベイ結果に関する質問では、女性がウクライナ難民に対してネガティブな印象を持つ要因として、女性は男性よりも子どもの教育や家事を担っており、難民流入がもたらす負の影響に気づきやすいのではないか、という指摘がありました。また、ロシアの侵略が成功した場合、ポーランドの安全保障が脅かされるという恐怖や、他国からの難民受け入れに対する期待・プレッシャーが、ポーランド社会をウクライナ支援に向かわせているのでは、という指摘もありました。クラコフスキー氏は、こうした意見に賛同した上で、これまでヨーロッパ内で「弱い」立場にあったポーランドが、ウクライナ難民を受け入れることで「強くなった」ことを周囲に見せたいという社会的な意思が、ウクライナへの支援にポジティブな影響を与えているのではないかと述べました。

【イベントレポート作成】
中野 智仁(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)