その他の研究成果
書評:The Silent Guns of Two Octobers: Kennedy and Khrushchev Play the Double Game [in English]
要旨2022年12月19日に発売された学術誌Diplomacy and Statecraftに一橋大学大学院法学研究科の青野利彦教授が執筆した書評が掲載されました。本稿において、青野教授はセオドア・ヴォーヒーズ氏著『The Silent Guns of Two Octobers: Kennedy and Khrushchev Play the Double Game』という本をレビューしています。この本は、1961年から1962年にかけての核戦争を回避するためのメカニズムについて考察しています。多くの人はこの時期、特にキューバ危機までの期間を核戦争に最も近かった時期と認識しています。しかし、ヴォーヒーズはそれに対して、1962年は「驚くほど平和な時期」であったと主張し、その根拠を詳細に述べています。この本について、青野教授は、キューバ危機の理解に貢献したと評価する一方で、ヴォーヒーズ氏の議論に必ずしも全面的に賛成しているわけではないとしています。
クーデター2年、ミャンマーの明日は? 自国民に銃口、遠のく民主化 避難民増加 目を向けて
要旨2023年1月30日、一橋大学大学院法学研究科の市原麻衣子教授が中日新聞に掲載された記事に登場しました。ミャンマーでクーデターが起こってから2年経った現在でも、ミャンマー国内において国軍と国民の間で対立が続いています。市原教授はこのミャンマーの現状に関して、日本のASEANに対する姿勢がいかにミャンマー国内に影響を及ぼしているかについて論じました。ASEANの議長国が変わる今年、日本はミャンマー国軍に対して効果的な働きかけができるようにASEAN諸国と共同歩調を図るべきだと主張しました。最後に教授は、岸田政権はウクライナからの避難民は積極的に受け入れてきた一方で、ミャンマーからの避難民はさほど受け入れていない現状を指摘しました。そして、日本が海外に発信するメッセージの一貫性を保つために、ミャンマー難民の受け入れ態勢も整えるべきだと強調しました。
国際刑事裁判所の検察官の裁量
要旨2022年12月25日、一橋大学大学院法学研究科の竹村仁美教授の著書『国際刑事裁判所の検察官の裁量』が発売されました。本書は教授の既刊の論文を編纂した論文集であり、令和4年度法学研究科選書となっています。国際刑事裁判所(ICC)設立のためのローマ規程の発効から20年が経ち、益々注目を浴びるようになったICCの本質を、教授は検察官の裁量の点から検討しています。本書は最初にICCの機能や歴史を紹介した後に日本の検察官とICCの検察官を比較しています。さらに、ICCに対する協力義務やICCの管轄権についても説明し、検察局の訴追戦略に関しても論じています。
日本における偽情報への対処法 -ロシア・ウクライナ戦争からの教訓[英文]
要旨2022年12月に『アジアの民主主義に対する偽情報の影響(英語名:Impact of Disinformation on Democracy in Asia)』レポートが出版され、一橋大学大学院法学研究科の市原麻衣子教授の論稿が掲載されました。教授はまず、ロシア・ウクライナ戦争に関するロシアの偽情報やプロパガンダが、いかに日本の言説空間を混乱させているかを示しています。この情報操作の影響は日本では前例がなく、情報操作の課題と適切な対応策を分析する上で有益なケーススタディであると指摘しています。このような背景から、本稿では、ロシア・ウクライナ戦争に関連する日本の情報操作の状況、現在の情報操作への対策、および課題を克服するための推奨政策について論じています。
キューバ危機60年 その教訓は?―「第三者」に大事な役割
要旨2022年10月10日に発売された中日新聞に一橋大学大学院法学研究科の青野利彦教授の記事「キューバ危機60年 その教訓は?―「第三者」に大事な役割」が掲載されました。教授は記事の中で、キューバ危機においては第三者が重要な役割を果たした面があり、現在起こっている大国間の対立においても第三者が活躍できる可能性があると論じました。まず、教授はキューバ危機に至るまでの経緯を詳細に振り返り、米ソの両者が目論みと違う結果を招いたことによって危機が深刻化したと述べました。また、この危機の中で第三国には危機の展開を左右する余地はなかったと考えられてきましたが、実際は「そうではなかった」と主張しました。例えば、キューバ危機においては英国や国連が米ソの軍事力衝突に至らないように懸命に動きました。これを受けて、近年の大国間対立においても第三国の市民が重要な役割を果たす可能性があると強調しました。
ルックバック2002
要旨2022年12月8日に岩波書店が発行している雑誌『世界』の2023年1月号が出版され、一橋大学大学院法学研究科の権容奭准教授の論文が掲載されました。日韓・日朝・北米関係が安定しない今日の世の中を省みて、教授はタイトルの通り、時を2002年に戻したいとを述べられています。その理由として21世紀に突入する頃から日韓で友好ムードが広がり、W杯が共同開催されたことを取り上げます。さらには、2002年に発表された日朝平壌宣言は日朝関係が正常化する可能性を秘めていたと論じます。教授は、この日韓と南北・日朝と東アジアが連動するパラダイムを「幻の2002年体制」と称し、この体制に「再接続」するためには2002年の出来事を振り返りながら、市民的連帯に期待しなければいけないと主張しました。
流行っています:テクノクラシー 〜ジェネレーションXのテクノクラシー的統治への嗜好は、将来の権威主義への新たな道が開けることにつながるか?[英語]
要旨2022年12月2日にGGRアシスタントのサッシャ・ハニグ・ヌニェスの記事が、自由民主主義の促進と擁護を目的とする英文雑誌『American Purpose』に投稿されました。本稿でハニグ・ヌニェス氏は、若い世代が選挙で選ばれた政治家よりもテクノクラシーを好む傾向があることを指摘し、こうした傾向が非自由主義的あるいは権威主義的な政府を正当化し、選挙で選ばれた議員の重要性を損なわせることになると警告しました。また、フェイクニュースや偽情報がいかに民主主義における政治家の拒絶に寄与しているか、そして最近のパンデミックがこの傾向をさらに推し進めたかを示しました。民主主義の崩壊を防ぐために、テクノクラートへの支持を潜在的な脅威として完全なる排除を目指すのではなく、民主主義国家の軸として再認識し、活用すべきだとハニグ・ヌニェス氏は主張しました。
キューバ危機60年 その教訓は?―「第三者」に大事な役割
要旨2022年10月10日に発売された中日新聞に一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の青野利彦教授の記事「キューバ危機60年 その教訓は?―「第三者」に大事な役割」が掲載されました。教授は記事の中で、キューバ危機においては第三者が重要な役割を果たした面があり、現在起こっている大国間の対立においても第三者が活躍できる可能性があると論じました。まず、教授はキューバ危機に至るまでの経緯を詳細に振り返り、米ソの両者が目論みと違う結果を招いたことによって危機が深刻化したと述べました。また、この危機の中で第三国には危機の展開を左右する余地はなかったと考えられてきましたが、実際は「そうではなかった」と主張しました。例えば、キューバ危機においては英国や国連が米ソの軍事力衝突に至らないように懸命に動きました。これを受けて、近年の大国間対立においても第三国の市民が重要な役割を果たす可能性があると強調しました。
『中国的民主』の挑戦(2)
要旨2022年11月に『一橋法学』の最新号が出版され、一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の但見亮教授の論文が掲載されました。本稿では、中国外交部が出した白書「美国民主情況」の内容を詳細に検討しています。教授は、その目的を「美国」の「民主情況」自体を分析することではなく、中国外交部による「美式民主」(American-style Democracy)批判の内容及びその様相の検討を通じて、中国(外交部)の「民主」論を明らかにするというように位置付けています。この考察を通じて、「美式」に替わる新たな「普遍」として示される「中国式」の絵姿ないしその位置づけ、そしてその先に浮かぶ世界の今後についても展望することを目的としています。
法人は、取締役になることができないのか?(2・完)
要旨2022年11月に『一橋法学』の最新号が出版され、一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の酒井太郎教授の論文が掲載されました。本稿は、『一橋法学』7月号に掲載された先生の論考の後編となっています。日本の会社法では、法人が取締役になることは認められていません(第331条第1項第1号)。本稿では、この規定が理論的に正当化されるのかどうかを検討しています。また、法人が取締役になることに政策的な正当性、技術的な意義があるのかについても検討しています。この問題は古くから議論されてきましたが、2005年の会社法制定に伴い、議論のベースとなる規制の主要な構造が大きく変化しています。本稿では、この会社規則の変更が、これまでの議論で説明されてきた合理性に影響を与えるかどうかという観点から、株式会社の取締役適格性について議論しています。