その他の研究成果
立憲主義のためには改憲が必要!? 研究者が問う「憲法の使い方」
滞在、帰国、移住: 英米のアジア系博士号取得者の移動先 [in English]
将来世代に対する権利と義務 [in English]
国家安全保障とデジタル・ プラットフォーム規制の現状
要旨2024年4月、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「国家安全保障とデジタル・ プラットフォーム規制の現状が法律時報にて掲載されました。本記事で市原教授は、国家安全保障上の脅威がデジタル・プラットフォーム上でどのように引き起こされているのか、そして安全保障の確保のためのデジタル・プラットフォーム規制について米国を事例として分析しています。市原教授は、各デジタル・プラットフォームは、関心経済モデルの下に形成され、感情的なコンテンツが人目につきやすい場所に配置されることから、感情を揺さぶる偽情報も拡散しやすくなり、ポピュリスト政治家が大衆動員に利用しやすくなっていると指摘しました。また、SNSの登場により、デジタル・プラットフォームが国際政治に与える影響が飛躍的に拡大したことに言及し、デジタル・プラットフォームを利用した影響工作の脅威について説明しました。さらに、一時的な規制の妥当性について判断は難しいが、米国のプラットフォーマーを含めて安全保障や国家間関係を安定させるために統一的な規制の策定の必要性を強調しました。
衛星画像を用いた中国の戦略核戦力増強の現状に関する分析
要旨2024年3月4日に、法学研究科の秋山信将教授が共同で執筆した論文、「衛星画像を用いた中国の戦略核戦力増強の現状に関する分析」が『東京大学先端科学技術研究センター創発戦略研究オープンラボ』に掲載されました。本論文では、中国が内陸部で進めている大陸間弾道ミサイル基地建設の状況を分析し、その進捗状況を明らかにするとともに、グローバルな軍事バランスに及ぼす影響について考察しています。まず、新疆ウイグル自治区の哈密におけるサイロ建設状況について、衛星画像を利用して分析した結果、サイロに大陸間弾道ミサイルが装填されているかは明らかにならなかったものの、ロシアに類似するサイロ発射型の開発が推測できると指摘しました。さらに、中国の核戦略の変化について、2030年代半ばにおいては、核優越、あるいは最大限抑止の確立が中国の目標に含まれている可能性は排除できないと論じました。最後に、中国の核態勢と米中の軍事バランスについて5つのシナリオを提示しながら考察し、地域レベルでも相互抑止を制度化するような軍備管理の成立の重要性を強調しました。
教養としての法学・国際関係学:学問への旅のはじまり
要旨2024年2月20日に、一橋法学・国際関係学レクチャーシリーズ刊行委員会が編集した『教養としての法学・国際関係学:学問への旅のはじまり』が出版されました。GGRに所属する多くの研究者が本書に寄稿しています。本シリーズは、法学および国際関係学に関心のある人が、分野の全体像を手軽に把握できるようにすることを目的としています。各分野の最新の研究成果やトピックを取り上げつつ、一橋大学大学院法学研究科・法学部の研究力を示すとともに、社会に還元する役割も果たしています。読者はこのシリーズを通じて、現代社会を生き抜くうえで必要な法学および国際関係学の基本的な教養を身につけることができます。
スペイン語圏YouTubeにおける中国国営メディアの存在感の分析[in English]
要旨2024年2月16日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏が執筆した論文「スペイン語圏YouTubeにおける中国国営メディアの存在感の分析」がフリーダムハウスから出版されました。本論文でハニグ氏は、中国国営メディアの世界的な拡大が進む中、コンテンツ分析などの手法を用いて、2016年以降に公開された14,000本以上のYouTube動画における中国メディア・グループのスペイン語番組の存在感、リーチ、ナラティブ、戦略を検証しました。China Global Television Network (CGTN)と新華通信社、ホラ・チャイナが公開した動画をケーススタディとして比較分析することを通して、それらのリーチと影響力は限定的であると述べました。また、テーマの絞り込み、視聴者のターゲティング、他国政府のナラティブの増幅など、多様な戦略があるものの、視聴者の関心を引き、フォロワーを増やし、政治的視点をさりげなく主張するために、大量のコンテンツ制作に注力しているという共通点が浮かび上がると指摘しました。
曖昧な「国境」としての香港
要旨2024年2月15日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「曖昧な「国境」としての香港」が『信濃毎日新聞』に掲載されました。本記事で市原教授は、香港の民主活動家の指名手配を事例とし、香港という場所の特殊性に起因して香港が抱える法的・政治的課題に関して論じています。香港返還後も海外との接触が容易で自由を享受する香港人は、党の影響下にある香港政府が強める抑圧に対抗し、特に19年の反政府デモは象徴的事例になったと述べました。また、強まる反政府的な声を抑え込むために、中国共産党は偽情報の拡散を海外にまで拡大させたと指摘しました。さらに市原教授は、香港政府は新しい国家安全保障条例の制定を準備しており、曖昧な国境としての香港を通じて中国共産党が海外への影響拡大を図る動きに懸念を示しました。
ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ [in English]
要旨2024年2月13日に、法学研究科博士課程に在籍するサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏が執筆した記事、「ラテンアメリカにおける中国のYouTubeプロパガンダ」がThe Diplomatに掲載されました。本記事でハニグ氏は、中国の国営メディアには共通の目的があり、習近平主席からの指示の下、北京の視点に沿った世論の形成が目指されていると述べました。その中で、中国メディア・グループが運営するスペイン語チャンネルのChina Global Television Network (CGTN)と新華通信社、ホラ・チャイナは、異なる戦略を採用し、視聴者への影響力は限定的であるが、特定のトピックに関する動画はより多くの関心を集めており、例えば、文化的な問題や地域の危機に関する動画は、視聴者からの反応が高い傾向にあると指摘しました。