その他の研究成果

民主主義・人権プログラム

民主主義に関する世界的な協力は今後どうなるのか?[in English]

著書名市原麻衣子(Richard Youngs (Coordinator), Idayat Hassan, Julia Keutgen, Sook Jong Lee, and Constanza Mazzinaとの共著)
出版日2023年3月13日

要旨2023年3月13日、Forum 2000に一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授が共著した政策提言書「What Is the Future for Global Cooperation on Democracy?(民主主義に関する世界的な協力は今後どうなるのか?)」が公開されました。教授は、民主主義と自由の分野で著名な研究者や学者とともにこの政策報告書を執筆しています。本稿の全体的な目的は、民主主義に関する協力の現状を評価し、2023年3月下旬の第2回サミット開催以降、民主主義サミット(S4D)をどのように進めるべきかを提言することです。著者達はまず、17の特定テーマに分けられた新しい包括的な「コホート」の意義を示しています。そして、これらのコホートが各地域に与えた全般的な影響を評価した上で、2021年に開催された第1回サミット以降、各国政府の取り組みが不足していることを論じています。また、第2回サミットについては、地域の枠を超えた話し合いの場があまり設けられていないことに懸念を示しています。  第2章では、第1回サミット以降に起きた地政学的変化、すなわちロシアのウクライナ侵攻や中国のゼロコロナ政策の転換を取り上げています。こうした政治的ダイナミクスを踏まえ、市原教授と共著者は、S4Dコホートが民主的協調のハイレベルな側面に焦点を当てる必要があると主張しています。サミットに向けた具体的な提案として著者らは、民主主義国家の幅広い層が民主的協調のためのプロセスの舵取りに主体性を感じることができるよう、リーダーシップを共有するよう求めています。その一つは、各地域の大会において主導国を1カ国ずつ選出し、各地域の主導国が集まって1年間の任期で活動を統括することです。さらに、地域主催者が他の地域機関や市民社会組織と提携することで、招待状を誰に送るかという問題を克服することができると提言しています。 最後に著者等は、S4Dは国家中心のアプローチから、世界の民主主義者を包括的に対象としたアプローチに転換すべきであると主張しています。このことは、市民社会組織だけでなく、グローバル・サウスも含めることを意味します。報告書は、政府間構想として出発したサミットが、さまざまな国家やセクターのアクターを取り込んだ官民ネットワークに変化することを提案しています。これは、S4Dが現在のイニシアチブから外れて、「より戦略的で、より包括的で、より調整された民主的な調整」へと向かうことを意味します。

民主主義・人権プログラム

民主主義の恩恵、論じる場に 市原麻衣子(一橋大学大学院教授)〈多思彩々〉

著書名市原麻衣子
出版日2023年3月12日

要旨2023年3月12日、信濃毎日新聞に一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授の記事「民主主義の恩恵、論じる場に」が掲載されました。教授はまず、3月下旬に開催される民主主義サミットを取り上げ、2021年に初めて民主主義サミットが開催された時から多くの変動があったと述べました。例えば、ロシアのウクライナ侵攻や中国の厳しい新型コロナウイルス政策により、権威主義的な政府が抱える問題が浮き彫りになり、民主主義の魅力が増したと指摘しました。一方、民主主義国がロシアや中国に対抗して連携する姿勢を示したことで、国家間の対立や戦争といった安全保障と関係する負のイメージと民主主義の連関が強まって見えるようになったと論じました。教授は、このような安全保障問題と民主主義を関連させて語るアプローチに懸念を示し、自由主義・民主主義の価値を守るためには、民主主義が個人の生活にもたらすポジティブな効果に関する議論が必要であると主張しました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

新START脱退か、継続か 揺さぶるプーチン氏 試される米政権

著書名秋山信将/真田嶺(聞き手)
出版日2022年2月23日

要旨2022年2月23日、朝日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事「新START脱退か、継続か 揺さぶるプーチン氏 試される米政権」が掲載されました。この記事は、ロシアが新戦略兵器削減条約(New START)の停止を決定し、バイデン米大統領がウクライナの首都キーウを電撃訪問した直後に掲載されたものです。秋山教授は、ウクライナ侵攻から1年が経つ今、ロシアの決断をどう受け止め、プーチン氏がなぜあのような行動を取ったのかについて解説しました。さらに、ロシアの履行停止判断は、バイデン政権が掲げる軍縮政策を大きく揺さぶり、米国内の政治的分裂を引き起こす可能性があると述べました。最後に、新STARTの更新交渉がさらに停滞する可能性があり、今後の展開を読み解くには、今回の状況に米国がどう対応するか、さらなる精査が必要であると指摘しました。

民主主義・人権プログラム

若い世代の政治文化の変化が民主主義への信頼の喪失、技術主義的な代替案への好みを誘発[英語]

著書名サッシャ・ ハニグ・ヌニェズ
出版日2023年2月

要旨2023年2月、モンゴル政治教育アカデミーは、GGRリサーチアシスタント兼チリ人国際アナリストのサッシャ・ハニグ・ヌニェズ氏によるレポート「若い世代の政治文化の変化が民主主義への信頼の喪失と技術主義的代替案への好みを誘発」を掲載しました。この詳細なレポートの中で、ヌニェズ氏は、政治文化に関する議論の中心であるべき若い世代に注目しています。なぜなら、地政学的緊張関係や 民主主義国家の弱体化など、現代世界で見られる政治的傾向の影響を最も受ける世代だからだと説明しています。彼女は、この世代は、特に先進国では政治的指導者よりもテクノクラティック指導者に投票する傾向があるが、最近成立した民主主義国家では様々な傾向があることを指摘しています。この状況をより包括的に理解するためには、他の要因も考慮する必要があるとしながらも、若い世代が政策決定のための従来の民主主義のメカニズムに対して示す信頼の欠如を見過ごすことはできず、政府の指導者はこの状況をもっと深刻に受け入れるべきだとヌニェズ氏は主張します。

書評:The Dictator’s Dilemma at the Ballot Box: Electoral Manipulation, Economic Maneuvering, and Political Order in Autocracies [in English]

著書名ウ・ユジン
出版日2023年2月

要旨2023年2月に一橋大学大学院法学研究科専任講師・GGR研究員のウ・ユジン先生が執筆した書評が、米国の雑誌Governanceに掲載されました。ウ先生は東北大学大学院情報科学研究科で准教授を勤めている東島雅昌氏の著書『The Dictator's Dilemma at the Ballot Box: Electoral Manipulation, Economic Maneuvering, and Political Order in Autocracies』をレビューしました。本書で東島氏は、「選挙のジレンマ」という概念を導入し、これを用いて、権威主義体制において選挙が果たす役割や、選挙の透明性と不透明性のバランスが体制の存続にいかに関わってくるかを説明しています。ウ先生は、著者が政治体制を分析するための様々な次元やツールを考慮した統一的な理論を構築し、権威主義に対する理解を広げたことを高く評価しています。また、民主主義国家と独裁国家におけるメディアと露骨な選挙違反の関係など、本書に関連する様々な側面について、さらなる研究が必要であると指摘しています。

グローバルリスク・危機管理プログラム

露の新START発言「極めて政治的」 秋山信将・一橋大大学院教授

著書名秋山信将
出版日2023年2月22日

要旨2023年2月22日、毎日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『露の新START発言「決めて政治的」』が掲載されました。秋山教授は、プーチン氏による今回の新START条約に関する発言は現状を大きく変えるものではないとしました。それよりは、バイデン米大統領の突然のウクライナ訪問やウクライナ侵攻1周年を受けて、世の中に対して強いメッセージを送る必要があると考えたプーチン氏が行った「高度に政治的」な行動であると説明しました。プーチン氏の狙いは、米国内で新START条約支持派と条約脱退派との対立を引き起こし、米国内の政治を揺さぶることにあるのではないか、と教授は指摘しました。いずれにしても、最近の緊張状態は今後の後継条約に向けた交渉を難航させ、グローバル社会における軍縮の動きに対して大きな脅威となっていると述べました。

民主主義・人権プログラム

2035年の世界地図

著書名市原麻衣子(共著)
出版日2023年2月13日

要旨2023年2月13日、一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授の共著書『2035年の世界地図』(朝日新聞出版)が発売されました。本書は市原教授をはじめ、フランスの人口統計学者・歴史学者のエマニュエル・トッド氏やドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏など、幅広い分野で活躍する著名人が共同執筆した著書です。2035年、今から12年後の世界。世界人口が増える中、人口大国の中国や日本は高齢者社会になると予測されています。経済面では中国の国内総生産(GDP)がアメリカのGDPを抜いて世界第1位に、日本はインドやインドネシアに抜かれて世界第5位になると言われています。また、人工知能(AI)なども今よりさらに発達して社会のあらゆる場面において活用されると指摘されています。様々な予測が立てられる中、新型コロナウィルスの流行やロシアのウクライナ侵攻などの予測不可能な事態が起こり、現代の世界は今までにないほどの不確実性に満ち溢れています。そのような世界について、市原教授を含む各分野の専門家や著名人が個々の見据える世界について語っています。

グローバルリスク・危機管理プログラム

核の脅威に「慣れた」世界のその先 侵攻の出口に待つ矛盾とジレンマ

著書名秋山信将
出版日2023年2月20日

要旨2023年2月20日、朝日新聞に一橋大学国際・公共政策大学院院長・GGR研究員の秋山信将教授のインタビュー記事『核の脅威に「慣れた」世界のその先 信仰の出口に待つ矛盾とジレンマ』が掲載されました。秋山教授は、プーチンの核兵器使用の脅しに国際社会が慣れてしまう危険性を指摘しました。このような脅威を軽視することで、ロシアがより攻撃的になり、戦争に思わぬ展開が起こる可能性があると述べました。しかし、教授はまた、いくつかのジレンマがあるため、現在世の中が置かれている戦争状況から簡単に抜け出す方法はないと論じました。ロシアが核兵器を使わずに降伏することが最良のシナリオだと示しつつ、それ以外の可能性も考慮する必要があるとしました。一方、核兵器のない世界を実現するためには、核の廃絶という理念を語るだけではなく、それを具現化するのにいかなる手段が必要なのかを国際社会でアイディアを出し合って合意に向けて努力するべきだと主張しました。最後に、このような話し合いや世界構造の認識が「戦後」の国際秩序の構想につながると議論しました。

民主主義・人権プログラム

自由主義をめぐる分断と日本の役割 [in English]

著書名市原麻衣子
出版日2023年2月9日

要旨2023年2月9日、Discuss Japanに一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授の記事が掲載されました。本記事は、岩波書店の総合雑誌『世界』12月号に掲載された教授の日本語エッセイを翻訳したものです。この論文で市原教授は、アジアでは様々な人権抑圧の試みが行われてきたが、それに人々が反発したことは、個人主義や尊厳の追求がいかに普遍的な価値であるかを証明するものであると論じました。インターネットの普及により、政府の弾圧に対抗するための市民の動員は容易になった一方で、ソーシャルメディアの普及は人々の分断を招いています。こうした社会の分断は日本でも見られますが、中国の言論戦がこうした状況に拍車をかけていると教授は指摘しました。最後に、民主主義の定義を再検討し、サニーランズ・イニシアティブなど、人々の生命、自由、尊厳を守るための取り組みを紹介されました。

民主主義・人権プログラム

信頼性と説得力のある、普遍的な人権外交 そのために必要なものとは

著書名市原麻衣子
出版日2023年2月1日

要旨2023年2月1日、朝日新聞に一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授の記事が掲載されました。市原教授はまず、近年人権を軸とした自由主義的な価値観が弱体化しているとして警鐘を鳴らし、世界各地で起こっている人権侵害問題について説明しました。また、岸田政権のもとで日本が人権外交に乗り出したことを一定程度は評価しつつも、自民党保守派の道具としてこれを扱うべきではないと論じました。最後に、日本が人権外交を推進するためには、国内においても更なる人権尊重を目指す必要があると強調しました。