その他の研究成果

最近の石垣島に於ける媽祖宮の建立計画について ― トポスの歴史と「ホリスティック・ツーリズム」の可能性

著書名石塚 英樹
出版日2022年10月

要旨2022年10月にホリスティックサイエンス学術協議会会報誌の最新号が発行され、GGR研究員で、一橋大学大学院法学研究科に所属している石塚英樹教授の論文が掲載されました。当論考は教授による現地調査を踏まえ、沖縄県石垣島で近年進んでいる媽祖宮の建立計画について記録し、数世紀にさかのぼってその歴史的背景を考察するものです。また、八重山の精神風土が開かれた海洋文化に支えられていること、また、その故に、ホリスティック・ツーリズムの可能性を秘めていることを論じています。

民主主義・人権プログラム

歴史の参照はムダか SNS情報過剰時代にデータベース化する過去

出版日2022年10月16日

要旨2022年10月16日からオンライン配信が始まった「朝日地球会議2022」に一橋大学大学院法学研究科・GGR研究員の市原麻衣子教授が参加しました。教授は、コロナ後の時代に関する仏独の2人の専門家へのインタービューをもとに、民主主義と今後の経路について他の参加者と共に討議しました。また、他の登壇者と共に議論しながら、ロシアによるウクライナ4州の併合を例にとって、選挙の正当性を使った自由を抑圧する動きが各地で起こっていると主張しました。さらに、混沌とした世の中を理解するためには、過去から学ぶことが重要だと指摘しました。最後に、新しい価値観が増える世の中において、日本は、民主主義推進のために米国などの同盟国に頼るばかりでなく、自ら積極的にこれを実施していく必要があると論じました。

安倍晋三の葬儀で日本が分裂[スペイン語]

出版日2022年9月27日

要旨2022年9月27日にスペインの新聞EL PAÍSに安倍晋三元首相の国葬についての記事が掲載され、GGR研究員、かつ一橋大学法学研究科/国際・公共政策大学院教授である竹村仁美教授のコメントが紹介されました。記事では、安倍政権の主要な出来事や成果が紹介されており、それらと葬儀に対して多くの人々が抗議する理由の関連性についても言及されています。そして、最も長く在職した首相の国葬が迅速に行われた一方で、一部の法律家は国葬の正当性に疑問を呈したことが紹介され、国葬実施に対する反対の声も取り上げられています。さらにこの記事は、安倍首相を殺害した山上徹也容疑者の生い立ち、統一教会との関係性、そして彼が受ける可能性のある刑罰について考察しています。その中で竹村教授は、精神鑑定の結果によって山上容疑者が受ける可能性のある刑罰が異なる点を論じています。

グローバルリスク・危機管理プログラム

日本のジレンマ 核廃絶を主張しながら核抑止力に依存

出版日2022年9月17日

要旨ロシアによる核兵器使用の現実味が増している中、秋山信将教授が核使用を法的観点から説明し、核軍縮や核廃絶に向けて日本が取るべき行動について解説しました。教授は、ウクライナ戦争におけるロシアの核をめぐる言動に関して、核を使用すること自体は法的に禁じられていないとしつつも、この一連の行動は核抑止論、核廃絶論の両方を強化したと指摘しました。また、来年の5月にG7サミットを主催する日本が、核に依存しない世界を構築するために、核兵器について考える場を提供することが大事だと主張しました。日本は、核禁止条約への加盟を最終目標とするべきだとしつつ、北東アジアを核のない地域にするためには慎重かつ地道に取り組む必要があるとしました。最後に、8月下旬に行われたNPT再検討会議における各国の動向を踏まえ、改めて核保有国と核廃絶国が集まって議論する国際会議の意義を示しました。

リーガル・イノベーションプログラム
リーガルイノベーション入門

『リーガルイノベーション入門』が刊行されました

著書名角田美穂子一橋大学法学研究科教授、フェリックス・シュテフェック(Felix Steffek) ケンブリッジ大学法学部准教授 共同編集
出版日2022年3月

要旨本書では、アカデミア、官公庁、国際機関、規制当局、実務家の英知を集め、リーガルイノベーションについての議論が展開されています。そこでフォーカスされているテーマは、デジタル化、人工知能、ブロックチェーンなどのテクノロジーが法の世界に浸透することで生まれる変化にどう適応するかというものです。 本書は、日進月歩で進化するテクノロジーの進化によって、法の世界はどのような変化を遂げようとしているのかを正確に伝え、リーガルイノベーションを共に考え、深めていくための「招待状」です。本書のもとになったのは一橋大学法学部の集中講義で、主として講義録のスタイルをとりながら、読者にテクノロジーとリーガルイノベーションについて考えを深めていくよう誘う。各講は、各講のポイントと今後の課題が編者により語られる「後日談」、さらには「考えてみよう」という問いで終わるという構成になっています。 本書が扱っている内容は、①リーガルイノベーションの本質とその条件、②人工知能と紛争解決、③アントレプレナーのリーガルイノベーション観、④AI時代のコーポレート・ガバナンス、⑤テクノロジーと法執行、⑥人工知能がリーガル・サービスにもたらす影響、⑦司法アクセスのイノベーションです。

民主主義・人権プログラム

北京の世界的メディア影響力2022年 -チリ(英語)

著書名BCハン、サスチャ・ハニグ・ヌニェズ
出版日2022年9月

要旨自由度や人権状況を表すFreedom in the World レポートで知られる米国の機関フリーダム・ハウスは、2022年9月、Beijing’s Global Media Influence 2022という特別報告書を発表しました。GGRアシスタントであるサスチャ・ハニグ・ヌニェズ氏は同レポートの中で、チリにおける中国の偽情報や影響力の度合いについての箇所を共同執筆しました。報告書自体は、世界数十カ国のデジタル、報道、視聴覚メディアにおける中国の影響力工作を探り、中国国民に対する不当対応(過剰反応として)と、表現の自由と民主主義を守る回復力のメカニズムも明らかにしています。本書の成果として、中国国営メディアはもとより、公務員や外交官にも共通する慣習が確認されました。また、ハニグ氏が担当したチリでは、パンデミック時の中国のネガティブなイメージに対抗し、民主主義と並列的な概念を作り出すことを目的として、チリの伝統的なメディアの中に中国がナラティブを変革するような試みを広告や共同出版という形で組み入れていることが筆者等によって解明されました。興味深いことに、北京のシナリオを主に支持していたのはチリのエリート層であり、ジャーナリストや市民社会はこの影響工作を暴き続けていることもわかりました。この報告書は、ボイス・オブ・アメリカ(英語版と中国語版)やチリの独立系メディアEx Anteなどのメディアで引用されました。

グローバルリスク・危機管理プログラム

NPT再び決裂 緊張下、どう信頼醸成 秋山信将・一橋大学大学院教授

出版日2022年8月28日

要旨2022年8月26日に核拡散防止条約(NPT)再検討会議が最終文書を採択できないまま閉幕しました。日本政府代表団のアドバイザーとして会議のプロセスを見守った秋山教授が今後のNPT再検討会議で主要な課題となる「信頼醸成」と「危機管理」について論じました。教授は今回の再検討会議の特徴を述べた上で、今後の再検討会議で各国が足並みを揃えて共通の課題に取り組むためにはどのような働きかけが必要かについての見解を述べました。

グローバルリスク・危機管理プログラム
AKIYAMA Nobumasa

ロシアの核の脅し・中国の発言力…NPT会議に異変、秋山教授が解説

出版日2022年8月21日

要旨秋山教授がアメリカのニューヨーク州にある国連本部で8月21日から8月26日まで開催された核不拡散条約(NPT)の再検討会議に出席し、そこでの論点を解説しました。教授は2000年からNPT再検討会議に出席した経験を通して、今回の会議のポイントを述べ、ロシアによるウクライナ侵攻が会議にもたらした影響や参加国が議論した内容について説明しました。

リーガル・イノベーションプログラム

アメリカ労働組合運動の再興? 投票での勝利の法的意味とその先にある長い道のり

著書名中窪裕也
出版日2022年8月号

要旨新型コロナウィルスや最近の物価上昇を契機としてアメリカの組合運動が活発になり、スターバックス、アマゾンという有名企業で労働組合が代表選挙で勝利を収めました。中窪教授はこの二大企業の事例を素材としながら、選挙の意義や仕組みについて法的観点から論じています。本記事では多数決に基づく排他的な交渉というアメリカ独自の法制が紹介され、その下での労働組合の組織化活動、選挙の申請、選挙キャンペーン、投開票による結果の確定という過程について説明がなされます。さらに、組合が選挙で勝利して団体交渉が開始されても、1年以内に労働協約が締結されない場合には交渉代表の地位を失う可能性もあり、組合の存在が定着するまでは長い道のりがあるとの指摘もなされています。法律改正が実現する見込みは低いため組合にとって厳しい状況は続くものの、時代の変化によって組合が見直される兆しもあり、今後が注目されると中窪教授は述べています。

『ベイビー・ブローカー』に見る日韓映画界のハイブリッド化

著書名権容奭
出版日2022年8月号

要旨5月に開催されたカンヌ国際映画祭で見事2冠に輝いた大ヒット作『ベビー・ブローカー』は日本人監督がプロデュースした韓国映画である。日本の著名な映画監督である是枝裕和監督のもと、ソン・ガンホ、ガン・ドンウォン、ぺ・ドゥナ、IUなど韓国の錚々たる俳優・女優が結集し、日韓両国のみならず、グローバル社会からも高い評価を受けた作品となった。本稿で、権容奭准教授は日韓の過去と現在の関係を踏まえた上で日本人韓国が韓国で映画を撮影することの意義を明らかにしている。さらに、是枝監督とソンのチームワークや韓国で最も人気のある歌手であるIUを起用した是枝監督の決断について教授は論じている。最後に、権教授は日韓両国が映画制作においてコラボレーションをすることが外交上の緊張を乗り越えるための新たな局面をもたらす可能性があることを指摘する。