GGR Issue Briefings / Working Papers
国境を越えて ― 能登半島地震と香港人コミュニティの対応
要旨石川県能登半島地震は、在日香港人から気遣いの気持ちを集めただけでなく、日本香港協会の長年の伝統であるチャリティー活動の恩恵を受けた。この震災を受けて、日本香港協会は直ちに被災地を支援するための義援金キャンペーンを開始した。外部への働きかけと支援をより多く行うため、同協会はソーシャルメディア等を効果的に活用し、国内外にキャンペーンを拡散した。オンラインキャンペーンと並行して、一部の香港人は被災地で直接ボランティア活動に加わり、身体的にも精神的にも支援に尽力した。この出来事は、在日香港人コミュニティの意識も高め、将来起こり得る緊急事態への備えを強化したうえ、日本のコミュニティとの地域的、そして世界的な絆をより強固なものにした。
リベラルな国際秩序のリベラルな特徴―理解への補助線とリベラルな要素の類型
要旨国際秩序とは、学問領域としての国際関係学と現実の国際関係の双方における中心的課題であり、その概念と実状の正確な把握は極めて重要である。本稿の目的は、包括的に総体を理解することが極めて困難な「リベラルな国際秩序(liberal international order: LIO)」とも称される第二次世界大戦後の国際秩序について、リベラルな要素・特徴に着目することで理解を深めることである。間主観的なものであるLIOを把握するにあたっては、リベラリズムの思想からLIOの内実を解釈するのではなく、既存の議論においてリベラルと捉えられた要素や特徴を振り返る。また、それらを政治的、経済的、社会的、国際関係理論的なリベラルな要素や特徴に分類し、統合的に記述することでLIOに関する理解の発展への貢献を企図する。
ハシナ最後の抵抗 -クオータ運動、学生の蜂起、バングラデシュ民主主義の未来
要旨バングラデシュは、16年間シェイク・ハシナに統治されてきた。その間、不正投票がはびこり、有権者は脅迫され、反対派は暴力的に弾圧されたことで、民主主義が損なわれてきた。しかし、学生を中心とするクオータ制度をめぐる反対運動と、それに続く蜂起によって、流れは変わり始めた。最終的に、ハシナは政権から追い出され、軍主導の暫定政権が樹立された。このような変化にもかかわらず、バングラデシュは依然として民主主義を模索しており、ハシナの長期間にわたる非民主的な統治からの回復に苦闘している。
タイの憲法に見る政党結成の自由
要旨政党結成の自由は民主主義的価値の根本にあるが、タイではこの自由がしばしば見落とされる傾向がある。権利と自由を守るという本来の目的とは裏腹に、タイの憲法は、うかつにもこうした原則そのものを阻害している。結党に厳しい要件を課し、政党の解散を容易にすることで、憲法は政党に負担を課すだけでなく、政党結成の自由をも制限している。このような制約は、タイ国民の政治参加と代表性を著しく損なう。さらに、政党解散の容易性によりタイの政治状況は操作されることがあり、より広く見るとしばしば政治ゲームの戦略的なチェスの駒として利用される。こうした動きはタイの政治状況をさらに複雑化し、国民の声を真に反映するための憲法改正の必要性を浮き彫りにしている。