出版物
『リーガルイノベーション入門』が刊行されました
要旨本書では、アカデミア、官公庁、国際機関、規制当局、実務家の英知を集め、リーガルイノベーションについての議論が展開されています。そこでフォーカスされているテーマは、デジタル化、人工知能、ブロックチェーンなどのテクノロジーが法の世界に浸透することで生まれる変化にどう適応するかというものです。 本書は、日進月歩で進化するテクノロジーの進化によって、法の世界はどのような変化を遂げようとしているのかを正確に伝え、リーガルイノベーションを共に考え、深めていくための「招待状」です。本書のもとになったのは一橋大学法学部の集中講義で、主として講義録のスタイルをとりながら、読者にテクノロジーとリーガルイノベーションについて考えを深めていくよう誘う。各講は、各講のポイントと今後の課題が編者により語られる「後日談」、さらには「考えてみよう」という問いで終わるという構成になっています。 本書が扱っている内容は、①リーガルイノベーションの本質とその条件、②人工知能と紛争解決、③アントレプレナーのリーガルイノベーション観、④AI時代のコーポレート・ガバナンス、⑤テクノロジーと法執行、⑥人工知能がリーガル・サービスにもたらす影響、⑦司法アクセスのイノベーションです。
アメリカ労働組合運動の再興? 投票での勝利の法的意味とその先にある長い道のり
要旨新型コロナウィルスや最近の物価上昇を契機としてアメリカの組合運動が活発になり、スターバックス、アマゾンという有名企業で労働組合が代表選挙で勝利を収めました。中窪教授はこの二大企業の事例を素材としながら、選挙の意義や仕組みについて法的観点から論じています。本記事では多数決に基づく排他的な交渉というアメリカ独自の法制が紹介され、その下での労働組合の組織化活動、選挙の申請、選挙キャンペーン、投開票による結果の確定という過程について説明がなされます。さらに、組合が選挙で勝利して団体交渉が開始されても、1年以内に労働協約が締結されない場合には交渉代表の地位を失う可能性もあり、組合の存在が定着するまでは長い道のりがあるとの指摘もなされています。法律改正が実現する見込みは低いため組合にとって厳しい状況は続くものの、時代の変化によって組合が見直される兆しもあり、今後が注目されると中窪教授は述べています。
貸倒損失と債権放棄 ー興銀事件最高裁判決以降の展開
要旨貸倒損失が法人税法上損金算入として認められるかに関する設例を検討した。興銀事件最高裁判決後の裁判例や国税庁によるガイダンスを参照し、債権の回収可能性における債権者側の事情、債権放棄における特別清算の手続き、寄付金該当性の判断などを解説した。
東京高判平25.7.19訟月60・5・1089…公正処理基準―ビックカメラ事件
要旨法人税法固有の観点からの判断として、不動産流動化実務指針に基づく処理の公正処理基準該当性を否定した判決の意義を解説。
最判平16.12.24民集58・9・2637…貸倒れの意義―興銀事件
要旨貸し倒れの認定にあたって、債権者側の特有の事情や経済的環境等を考慮することの可否など、具体的な判断構造を明らかにするものとして重要な異議を持つ判決の解説。
法的観点から見た職場における男女の均等な機会 ー日本の男女雇用機会均等法の現状と課題 (英語)
要旨日本の男女平等法案の根幹である男女雇用機会均等法(EEOA)は、賃金差別、性別を理由とする間接差別、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いなどにおいて課題を抱えている。法の違反に対する法的制裁の強化など、今後EEOAのさらなる強化が検討されるべきであろう。
国際課税ルールの見直しによる市場国課税の導入
要旨経済のデジタル化を進める多国間企業の活動に適切に対応するための国際課税改革の新しい枠組みを紹介し、市場国の課税権を基礎付ける理論、そしてこれらが地方税の議論に与える示唆を検討する。国際課税ルールの変化が地方税制に即座に応用されるものではないが、情報通信技術の発展によって、課税権を基礎付けてきた基準に修正が必要という点は共通し、これからの地方税制を考える上でも示唆があると考えるべきだろう。
法人税の最低税率―GloBEルールの概要および課題
要旨多国間企業による無税・軽課税国を利用した税源浸食・利益移転を実効的に封じるための方策の一つであるGloBEルールの概要と今後の展望。15%という水準で租税競争は緩和されるが、終了するわけではない。
男女の昇格差別とその救済ー兼松事件
要旨同期の男性一般職との賃金格差は男女差別であると主張し、賃金・一時金等の差額と、慰謝料、弁護士費用の支払い等を求めた件(兼松事件)ついて、原判決を変更し、損害賠償請求を一部認容した判決の解説(東京高裁平成20年1月31日の判決)
最高裁(第一小法廷)朝日建物管理株式会社対原告
要旨有期労働契約の期間途中の解雇が無効であった場合の期間満了時の扱いについて判断した最高裁第一小法廷2019年11月7日判決(朝日建物管理事件)の英訳および解説。