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2023年7月28日に、法学研究科の青野利彦教授が執筆した章である「国際関係史としての冷戦史」が収められた書籍、『世界歴史 22 冷戦と脱植民地化 Ⅰ』が、岩波書店より出版されました。本章で青野教授は、冷戦をこれまでの東西二つの陣営の間の安全保障とイデオロギーをめぐる対立であるという捉え方だけでなく、国力やイデオロギーも異なる様々な国家や政治主体間の相互関係を踏まえた「国際関係史」としての研究が行われていることについて言及されました。次に、東西陣営の形成過程や形態、機能性の違いなどに触れ、冷戦が被支配国の脱植民地化にどのような影響を与えたかを論じつつ、第三世界の国々の対応についても説明しました。そして、核戦力やデタントについても取り上げ、米ソの核抑止だけでなく同盟国との拡大抑止に対する信頼性の揺らぎについて言及し、また米中ソによるデタントの展開と限界についても説明されました。冷戦が終焉に向かった要因は、米ソだけでない複数の国家の複合的な過程として捉え直されている現在についても述べられました。結びには、冷戦の終焉には時差や地域差があったと指摘し、世界中の人々が恒常的な「暴力」に晒されたという点も踏まえ、冷戦史を複合的に理解していく必要性を論じました。