2024年5月14日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア特命全権大使をお招きし、GGR特別講演「ジョージア大使館のパブリックディプロマシー」を開催しました。一橋大学国立キャンパスインテリジェントホールで開催された講演には72人の一橋大学の学生および教職員が参加しました。市原麻衣子教授(法学研究科・国際公共政策大学院)の司会で進行し、中野聡一橋大学学長が挨拶で始まりました。レジャバ大使からジョージア大使館のパブリックディプロマシーについてお話をいただき、講演の最後には講演参加者との質疑応答が行われました。
レジャバ大使は、パブリックディプロマシーを始めたきっかけ、その動機や内容について話しました。大使によると、現在の形で発信を行うようになったきっかけは、ジョージアの伝統衣装についてある一般ユーザーとX上でやり取りし、それが拡散したことでした。また大使は、先祖が歴史を通じて大国の脅威から守ってきたジョージアの文化を対外的に発信していきたかったと話しました。大使はさらに、文化だけでなく、政治的な内容も発信しています。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻の直前には他国の駐日大使に働きかけ、侵略反対の姿勢を示しました。ただ、被占領問題といった政治的な問題について声を届けるためには、文化といったソフトな内容を発信し、まずは知ってもらうことが重要であると説明しました。
大使の話の後には、ダヴィド・ゴギナシュヴィリ博士(駐日ジョージア大使館専門分析員)からからジョージアの地理、文化、経済、歴史についての解説がありました。住みやすい環境にあるジョージアでは、初期から文明が発達し、同時に多くの大国から侵略されてきたそうです。それゆえ、ジョージアではアイデンティティを守る意識が強いと解説しました。
講演の最後には、参加者との質疑応答が行われました。日本の在り方や「外国の代理人」法案による若者の国外流出の懸念に関する質問が投げかけられました。大使は、国際的な多様性と自国の文化の両者を尊重する重要性を説きました。また、デモによって意見を政府に届けようとするジョージアの若者の強靭さを強調したうえで、法案の裏にある背景を理解する必要があるという与党の見解を説明しました。
本講演の前には、「侵攻下のウクライナを体験する」と題したバーチャルリアリティ(VR)体験会も実施しました。ジョージアとウクライナが地理的に近接していることを背景に、侵攻下のウクライナをVRで体験するイベントです。VR映像は、THE GAME CHANGERS が作成したものです。20数名の教職員が参加し、映し出される惨状を体感しました。
【イベントレポート作成】
中島崇裕(一橋大学大学院法学研究科修士課程)