要旨
2023年7月31日に、法学研究科教授の竹村仁美教授が分担執筆した『国際人権法の歴史』が出版されました。教授は、「連合国の戦後構想と憲章体制へ ―国際刑事法と国際人権法の飛躍的発達」という章を執筆しています。本稿では、連合国の秩序構想の背景と、戦争犯罪に対する国際的裁判が行われた過程と意義が論じられています。竹村教授はまず、ニュルンベルク裁判と東京裁判で得た教訓としては、ニュルンベルク判決の認めた諸原則が国連総会にて採択されたこと、そして平和に対する罪と人道に対する犯罪が国際法上の犯罪であることが確立したことなどが挙げられると指摘しました。そして、国連憲章体制と国際人権章典の構想・起草に関する歴史を振り返り、ホロコーストが国際人権保障に与えた影響はいかなるものであるかを論じました。最後に、連合国の戦後国際秩序構想が人間的価値の尊重、正義の実現といった普遍的価値を持っていたからこそ、国連が普遍的国際組織として認識されることになり、国際人権法が諸国に支持されるようになったと結論付けました。