民主主義・人権プログラム
【GGRトークセッション】中国憲政史から中華圏の動向を読み解く
日にち2024年2月22日
時間16:30〜17:30
開催場所別館104教室
イベント概要

2024年2月22日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は中村元哉教授(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻教授)を講師にお招きし、GGRトークセッション「中国憲政史から中華圏の動向を読み解く」を開催しました。

中村教授は、まず中国には憲政(憲法により国家権力を統制することを通じて、個人の権利と自由を保障する概念)の歴史が存在すると述べた上で、中国の憲政史は110年という時間軸を有し、世界の憲政潮流とも大きく関わっていたと説明しました。実際に中国憲政史の概略を示しながら、中国では満州事変(1931年)及び日中戦争(1937年)を経て日本とは対極に憲法制定の動きが加速したという事実を強調しました。そして日本国憲法と同時期に中華民国憲法が制定され、これが後に台湾へと移植され、様々な改正を経て今日の台湾政治の基盤になったと説明しました。中村教授は、台湾の民主化は20世紀後半以降の台湾国内の自助努力による部分も大きいが、その出発点として中華民国憲法の存在があるのではないかと指摘した上で、そうしたことも踏まえて考えなければ現在の台湾についても十分に理解できないのではないかと問いかけました。さらに、憲政をとりまく状況の一つに、政治思想がいかに発展するかという点が重要なポイントになると述べました。政治思想の一つに自由主義があり、近代中国にもリベラリズムが存在したと指摘した上で、20世紀前半の中国には制度によって自由や人権をいかに保障していくのかという動きが存在していたと論じました。しかし近代中国のリベラリズムはその後、中国大陸で生きながらえることはできず、台湾及び香港に分散することになったと説明しました。

質疑応答セッションでは、革命や内戦の近代中国のイメージの形成と広がりに関する見解や20世紀の中国における憲法制定や選挙制度の背景や位置づけ、第二次世界大戦後の香港におけるリベラルな土壌とその影響に関する質問など様々な質問と議論が展開されました。最後にまとめとして中村教授は、現代中国において憲政に関わる動きが存在していたということ、そしてその動きは世界の憲政潮流とも密接に関係していたことを強調しました。また、20世紀後半以降の中華圏を巡る動向を分析する際、大陸中国を見るだけでは不十分であり、香港や台湾も含めたトライアングルで見ていく必要があると指摘しました。

【イベントレポート作成】

渡邉 英瑠(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)