要旨
2023年12月8日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した記事、「イスラエル・ハマスを巡る虚偽情報とナラティブにみる国際政治の変容」が『Foresight』に掲載されました。本記事で市原教授は、イスラエルとハマスを巡る誤情報・偽情報が乱れ飛んでおり、他国政府、政党、トロール、陰謀論者など、多様なレベルのアクターが情報空間を歪め、無視できない影響を与えていると指摘しました。市原教授は、偽情報の拡散メカニズムについて、関心経済モデルが用いられ、情報の真偽や質よりも人々の関心を引き感情に訴えるコンテンツが拡散され、そうした感情に訴える虚偽のコンテンツが驚異的な速度でネット上に拡散されていると説明しました。ファクトチェックやメディアリテラシー教育の必要性が指摘される中、偽情報の出現速度がファクトチェックの速度を大幅に上回ること、人々の感情と行動を操ろうとするアクターは必ずしも偽情報ばかりを拡散するわけではないこと、影響工作を行うアクターが情報ロンダリングを行うこと等から、その効果の限界についても述べられました。最後に市原教授は、軍事力だけでなく情報が、そして当事国だけでなく様々な種類のアクターが影響力を持つ時代にあって、感情と情報に駆り立てられた人々が形成する国際政治を理解し分析するための分析枠組みが必要であると強調しました。