民主主義・人権プログラム
【GGRブラウンバックランチセミナー】現代フィリピンにおける福祉と暴力―「生まれ変わり」の希望のなかで
イベント概要
2023年11月15日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、日下渉教授(東京外国語大学 大学院総合国際学研究院 教授)を講師にお招きし、第22回GGRブラウンバックランチセミナー「現代フィリピンにおける福祉と暴力―「生まれ変わり」の希望のなかで」を開催しました。日下教授は、1997年フィールド調査を始め、現代フィリピン社会と政治を研究してきました。
日下教授は、かつてピープルパワー革命を起こしたフィリピン国民が強権を求めるようになった理由を、フィリピン社会の「生まれ変わり」だと分析しました。人間関係が人々の全ての生活を支えていた2000年前後は自由が優先され、2010年代以降は、自由も民主主義でもない「規律(disiplina)」がフィリピン社会に蔓延したと説明しました。そして、グローバルサービス産業が経済成長をもたらした一方、安定した成功までを手にしていない多数の人々が「規律(disiplina)」に共鳴していると分析しました。教授は、「新たな英雄」や「自己犠牲」ナラティブが、彼らを新自由主義の労働市場で働かせる言説として機能し、「自己犠牲」を避け不正に利益を追求する者(伝統的エリートと犯罪者)に「規律(disiplina)」を要求しつつ、国家には「ケア」を求めるようになったのが福祉と暴力の共存をもたらしたと論じました。
【イベントレポート作成】
チョン・ミンヒ(一橋大学大学院法学研究科 博士後期課程)