民主主義・人権プログラム
【GGRブラウンバックランチセミナー】難民レジームの歴史
イベント概要
2023年6月30日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は新垣修教授(国際基督教大学 教養学部教授)を講師にお招きし、第17回GGRブラウンバックランチセミナー「難民レジームの歴史」を開催しました。
新垣教授は、難民レジームが可視化されるまでの約四世紀に渡る出来事を紹介しました。第一次大戦以降、難民レジームが国際協力という形で目にみえるようになったことに言及し、当時の難民高等弁務官であるフリチョフ・ナンセンが(難民の)身分証明書と通行許可証の機能を兼ね備えたナンセンパスポートの発行を提案したことは、各国が難民の存在を承認することに貢献したと分析しました。その後、米国のトルーマン大統領の主導により難民条約(1951年)が締結されましたが、難民レジームが冷戦構図の中で発展したため、普遍性を欠くものであったと論じました。そのため世界難民の半分以上を占める国内避難民、気候変動や自然災害を避けて庇護を求める者、紛争から避けて移動する者など、難民レジームでカバーできない人々がいると指摘しました。
続く質疑応答では、難民保護における「保護」の意味や各国での変容、国際難民レジームの形成において最も大きな力を持つ主体はだれかなど、様々な質問が寄せられました。教授は、「どの主体が最も説得力のある解決策を提示できるかによって、力のある主体は国家である場合もあれば、それ以外のアクターである場合もある」と答えました。
【イベントレポート作成】チョン ミンヒ(一橋大学大学院法学研究科 博士後期課程)