要旨
2023年4月に法学研究科教授の中西優美子教授が執筆した論文、「EU予算保護のためのコンディショナリティ規則と法の支配」がEU法研究に掲載されました。本論文は、EU復興基金に関連し採択されたコンディショナリティ規則が法の支配の尊重を前提としている仕組みを問題視したポーランドの取消し請求に対する欧州司法裁判所(以下司法裁判所)の判断について解説しています。中西教授は、第2次法廷判決にあたる本判決で法の支配の遵守を義務付ける仕組みが設定され、司法裁判所がこの措置がEU法と合致すると判断したと確認しました。そのうえで、司法裁判所は法の支配を規定するEU条約2条を法的基礎とし、諸々の場面でその価値を保護する措置が必要であり、EU加盟国にはその価値を遵守する義務があると判断したと説明しました。更に、中西教授は、本件をEUのアイデンティティが何であるかを初めて司法分野で示した事例と評価し、今後法の支配を含む諸原則が司法判断の対象となりやすくなった点で、本判決のEU法発展における意義を大きく評価しました。