民主主義・人権プログラム
【EHESS /一橋合同Ph.D. ワークショップ】民主主義と人権 ー社会科学の観点
日にち2023年4月17日
時間17:00-19:00
開催場所オンライン
イベント概要

2023年4月17日、一橋大学とフランスの高等社会科学研究院(L’École des hautes études en sciences sociales: EHESS)は、合同Ph.D.ワークショップ「民主主義と人権 ー社会科学の観点」をオンラインで開催しました。このワークショップは、両大学の関係を強化し、学生の研究成果の共有を促進することを目的としています。

本ワークショップでは、一橋大学の市原麻衣子教授とEHESSのLechevalier Sebastien教授が、それぞれ2つのセッションの議長を務めました。

セッション1では、第一グループが東アジアにおける難民の法的および人道的な取り扱いについて議論しました。EHESS博士課程学生のYusuke Kunitomo氏は、日本における難民支援のための法的手段の利用と、これらの活動に従事する弁護士の動機について発表しました。一方、一橋大学博士課程学生のチョン・ミンヒ氏は、アジアでの難民保護における市民社会の役割に焦点を当て、中国、日本、韓国の状況を比較しました。そしてセッション1の第二グループは、哲学的なアプローチから人権について議論しました。哲学のEHESS博士課程学生のLouis Duplatre氏は、フランスにおける同性婚の文脈から、制度の存在論的性質と中立性に疑問を投げかけました。政治学のEHESS博士課程学生のFelipe Freller氏は、マルクス、トクヴィル、およびフランスにおける1980年代の知識人の人権論争における自由主義の伝統の解釈について議論しました。最後に第三グループは、経済分析に焦点を当てました。一橋大学大学院法学研究科特任講師(ジュニア・フェロー)の御代田有希氏は、日本の年金基金が環境・社会に配慮した取り組みを行っているトラックにどのように投資し、どのように退職予定者に利益をもたらしているかについて発表しました。最後に、同じく一橋大学大学院法学研究科特任講師(ジュニア・フェロー)の深澤一弘氏は、欧米における労働運動と規制、人権、自由貿易協定との関係について発表し、労働者を含む非国家アクターが、どのように交渉に影響を与えることができるかについて議論しました。

セッション2には、一橋大学とEHESSの博士課程学生6人が参加し、3つのトピックについて議論しました。宗教問題に関して、EHESSのMayuko Yamamoto氏は、イスラームとイスラーム分離主義について、「イスラームは、危機に瀕した民主主義の試金石として機能するのか?」という問いを基に発表を行いました。発表後、参加者からはバイオポリティクスに関する質問が提起され、フランス政府がムスリムだけでなく、フランス社会に組み込まれているキリスト教徒も制限していることが言及されました。そして次の発表では、一橋大学博士課程学生の鈴木涼平氏が、名護市長選挙のケース分析をもとに「どのようなファクターが偽情報拡散の要因となっているのか?」という問いを取り上げました。鈴木氏の発表を受けてLechevalier教授は、偽情報の影響を定量化するための研究計画について質問しました。その後、一橋大学博士課程学生の守谷優希氏が、国際秩序や安全保障、日本とEUの関係といった自身の研究関心に基づいて、「自由で開かれた国際秩序」に関する理論的研究を発表しました。中でも守谷氏は、比較事例研究と過程追跡を行うための研究手法に焦点を当てて発表しました。守谷氏の発表後は、一橋大学博士課程学生Prakrit Rakwong氏が「なぜ米国の同盟国は、中国に対して異なった戦略的行動をとるのか?」というクエスチョンに基づく研究を発表し、当発表についてLechevalier教授は、研究の改善のために歴史的な偶然性を考慮することを提案しました。次に、一橋大学博士課程学生の田中秀一氏が、ポスト独裁時代のパラグアイにおける一党支配に焦点を当てた研究を発表しました。セッション2の最後には、一橋大学博士課程学生のChoe Inhyuk氏が「国会議員は、いつ他国に対して敵対的または好意的な発言をするのか?」というリサーチ・クエスチョンに基づく発表を行いました。

以上のように、両大学の12人の参加者が興味深いトピックを持ち寄り発表しました。二つのセッションの終了後には、教授や参加者が質問やコメントを交換しました。そしてワークショップは、一橋大学副学長の山田敦教授の閉会の辞によって終了しました。

 

【イベントレポート作成】
サッシャ・ハニグ・ヌニェズ(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)
ニン・テ・テ・アウン(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)
中野 智仁(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)