【GGRブラウンバックランチセミナー】ESG投資とは何か ―グローバル・イシューと企業活動の交差
日にち2023年4月19日
時間12:30-13:30
開催場所マーキュリタワー3302教室
イベント概要

2023年4月19日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、御代田有希氏(一橋大学大学院法学研究科特任講師(ジュニアフェロー))を迎え、第14回GGRブラウンバックランチセミナー「ESG投資とは何か ―グローバル・イシューと企業活動の交差」を開催しました。

セミナー序盤、御代田氏は、Environment(環境)、Social(社会)、Corporate Governance(コーポレートガバナンス)に配慮した投資であるESG投資が勃興している背景について、①グローバル・イシューとして気候変動や人権リスクが顕在化していること、②環境・社会が企業に与える影響に加えて、企業が環境・社会に与える影響を考慮すべきだという「ダブル・マテリアリティ」という考え方が企業や投資家の間で広がっていることを指摘しました。こうしたESG投資の考え方は、2006年に国連が策定したPRI(Principle for Responsible Investment:責任投資原則)を機に世界の金融業界や民間企業に広まり、投資の意思決定過程に環境・社会・ガバナンスの観点を組み込むことが目指されてきました。その上で御代田氏は、ESG投資の本質について、以下の二点から説明しました。一点目は、企業のESG課題への取り組みが指標化・データ化の上公開され、企業間でESG課題への取り組みが比較可能になったこと、そして二点目は、投資信託、保険会社や年金基金のように長期的な投資を行う機関投資家が、気候変動や人権リスクなどを加味するため(また逆に収益機会に繋げるため)に上記の企業データを利用するようになったこと、です。このように、民間主導でグローバル・イシューに対処するESG投資が拡大している一方で、グリーン・ウォッシュ(見せかけのESGへの取り組み)や、何をESG課題とするのかに関して明確な基準がなく「揺らぎ」があることなど、ESG投資に対しては様々な批判があることが言及されました。

一橋大学の学生・教員計15名が参加した質疑応答セッションでは、ESG投資の現状や課題、そしてESG投資の今後の展望について数多くの質問が提起されました。どの国・地域がESG投資に最も貢献しているのかという質問に対して、御代田氏は、EUが最も率先して取り組みを進めている一方で、投資家の間でも「社会的インパクト」が重視されるようになってきており、社会的・経済的リターンを求めて「グローバル・サウス」に対して投資をする動きが広がっていることを説明しました。また、ESG投資の評価基準の曖昧さを指摘する質問に対しては、欧米の基準によって評価の方向性が左右されており、国家や地域によってローカライズされた評価基準を策定するよう求める動きがあることを紹介しました。

 

【イベントレポート作成】
中野 智仁(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)