民主主義・人権プログラム
【GGRブラウンバッグランチセミナー】 権威主義化と憲法:抑制装置か、諸刃の剣か
日にち2023年3月22日
時間12:30-13:30
開催場所マーキュリータワー3302室
イベント概要

2023年3月22日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、東海林拓人氏(東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻 博士課程;日本学術振興会特別研究員)を迎え、第13回ブラウンバックランチセミナー「権威主義化と憲法:抑制装置か、諸刃の剣か 」を開催しました。

東海林氏は、権威主義化の進行とその国の憲法の関係について研究を行っています。民主主義の後退が世界各国で広くみられる中、東海林氏は「民主的に選出された指導者は、どのような制度下で権威主義化を選択するのか」という問いを立てました。指導者が権威主義化を志向しやすい要因として、執政制度、執政・司法間関係、非常事態宣言などに言及した上で、先行研究には合法的な権威主義化の実行に関する比較憲法の視点が欠落していると指摘しました。そして憲法が権威主義化のコスト・誘因を規定する場合、憲法が権威主義化のターゲットにされる場合、憲法の各規定有無が権威主義化を左右する場合といった複数の仮説を立てました。これらの仮説を検証するために、1946-2020年の全主権国家を対象とし、V-Dem(Varieties of Democracy)における変数を分析しました。検証の結果、①憲法で指導者の罷免が規定されている場合、②指導者の免責が規定されていない場合、③指導者の任期制限が規定されている場合、④指導者の立法拒否権が規定されている場合、⑤指導者の議会解散権が規定されている場合などには、権威主義化しやすいという仮説が支持されました。本研究は、憲法上の執政に対する制約よりも指導者の政治生命に関わる制約規定が権威主義化の誘因となること、また、憲法で議会の選挙制度が規定されている場合には、権威主義化しにくいことを示唆していると指摘しました。

質疑応答には、一橋大学の学生・教員約15名が参加し、活発な質問やコメントがなされました。仮説で見られる罷免と免責の差異は何か、今後指導者の言説を分析することになった場合どのような資料を扱いたいのか、という質問がありました。また、経済格差の拡大、国際情勢の変化が権威主義化に影響を与える可能性、対偶関係で検証することになった場合どうなるのか、というコメントもありました。東海林氏は、こうしたコメントに同意した上で、対偶関係が成り立つかどうかに関しては、制約がなくとも権威主義化が発生するという点は先行研究で指摘されているものの、強すぎる制約は権威主義化を招きやすいという点が本研究から言えるのではないかと述べました。

 

【イベントレポート作成】
チョン・ミンヒ(一橋大学法学研究科 博士後期課程)
中島崇裕(一橋大学法学部 学士課程)