【GGRブラウンバッグランチセミナー】幻の経済関係 ー戦後日朝貿易の外交史的研究
日にち2022年10月26日
時間12:30~13:30
開催場所マーキュリータワー3302
イベント概要

2022年10月26日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は谷京氏(一橋大学大学院法学研究科博士後期課程/日本学術振興会特別研究員(DC2))を講師に迎え、第9回ブランバッグランチセミナー「幻の経済関係 ー戦後日朝貿易の外交史的研究」を開催しました。谷氏は日本外交史および東アジア国際関係を専門にし、「日朝貿易に関する日本政府の政策決定—1960年代前半における直接輸送と直接決済の実現を中心に―」と題した論文で第14回石橋湛山新人賞を受賞されました。

谷氏は幅広い外交史的位置づけを明らかにしたうえで、受賞論文が扱う1960年代の日朝貿易の制度化を分析しました。先行研究は日中貿易の一環としての友好貿易や政府と企業の間の対立関係の中に日朝貿易を捉えていると指摘し、以下の三点から先行研究とは異なった日朝貿易のイメージを提示しました。第一に、友好貿易にとどまらない経済的重要性と日韓関係との連関性です。国際競争の激化の中で安定した海外市場として北朝鮮が経済的重要性を有していたことと日朝貿易の進展が日韓関係の悪化と好転とリンクしていたことを明らかにしました。第二に、官民の対立だけでなく政府内にも対立があったことです。「冷戦の論理」から日韓関係を重視する外務省とそれぞれの利害に基づいた「経済の論理」から日朝貿易を進展させようとする通産省・大蔵省との対立関係があると指摘しました。三点目に、「論理」の対立です。通産省・大蔵省、加えて経済界がもつ「経済の論理」が、外務省がもつ「冷戦の論理」を上回ったことにより日朝貿易が進展したと論じ、戦後日本の対朝鮮半島外交における対米自主性の存在を指摘しました。

質疑応答では、中国や北朝鮮の思惑、日本の政治家の働きといったアクターに関する質問や「論理」の名称の妥当性といった分析枠組みに関する質問とそれに対する応答がなされ、活発な議論が行われました。谷氏は現在、日朝関係だけでなく日韓関係にも着目した総合的な朝鮮半島研究を進めています。

【イベントレポート作成】
中島崇裕(一橋大学法学部学士課程)