2022年9月27日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は但見亮教授(一橋大学大学院法学研究科)を講師に迎え、第8回ブラウンバッグランチセミナー「『中国式』とは何か−『新時代』の『普遍的価値』」を開催しました。
但見教授は、毛沢東以降の中国国内統治の仕組みに基づいて中国共産党統治下での「法治」や「民主」の意味を説明し、習近平政権以降の「新時代」の展望を論じました。セミナー冒頭、但見教授は党と法の混濁した関係について触れ、中国の法律は党文書として発表されることなどから、「法治」は党による法に基づいた統治を意味していると指摘しました。続いて中国における「民主」概念については、人民が自ら運動を起こして利益を実現する「大民主」から、制度上選挙を行う一方で実質的には党に権力を集中させる「小民主」へとその原理が変化したことを説明し、2012年の習近平政権以降は、党への権力集中が深化していることを指摘しました。また、「西側」諸国から批判が相次いでいる中国の権威主義的統治については、党は95%以上の中国国民が統治に満足していることを理由に「中国式民主」として正当化しているとの説明もありました。そしてセミナー終盤には、技術発展が目覚ましい今後の中国統治の行方を論じました。将来の中国ではAIやビッグデータなどを用いて、人間の思考や言語とは違った形で法整備や法治が発展する可能性を指摘し、こうした将来への懸念を示しました。
教授や学生など約10名が参加した質疑応答では、中国における「人民」の射程と国内マイノリティの位置付けや、毛沢東と習近平の国内統治に対する考えの違いに対する質問が出た他、清代末期と現代中国に共通する合理主義の様相についての意見が出るなど、活発な意見交換がなされました。
【イベントレポート作成】
中野智仁(一橋大学国際・公共政策大学院 修士課程)