8月24日、グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は中西優美子教授(一橋大学大学院法学研究科)を講師に迎え、第7回GGRブラウンバッグランチセミナー「EU法空間における裁判官対話 -欧州逮捕状制度を例として」を開催しました。
裁判を通じて行われる裁判官対話は、欧州連合(European Union:EU)の法制度の発展に寄与していると中西教授は指摘しました。司法判断に疑問が生じる場合、EU加盟国の国内裁判所は欧州司法裁判所(Court of Justice of the European Union:CJEU)などの判事に予備判決を照会・請求ことができます。
中西教授は、欧州逮捕状(European Arrest Warrant:EAW)制度に関する予備判決の検討を通して、基本的権利の保護が考慮されることになった過程に注目しました。例えば、初期段階の判例(CJEU, Case C-399/11, Melloni v Ministerio Fiscal, Judgment of 26 February 2013)をみると、CJEUがEAW制度を重視しながら新しいメカニズムが有効に機能するように期待していた傾向が見える一方、イタリアへの原告の引渡しをめぐる別の判例(GFCC, 2 BvR 2735/14, 15 December 2015)を見ると個人の基本的権利が考慮されるなど、EAWメカニズムが絶対的なものではなくなったと指摘しました。最後に中西教授は、CJEUが欧州人権裁判所の判決を自発的に考慮した事例に言及し、これらは間接的な司法対話と言え司法対話を通じた基本的権利の保障に繋がると分析しました。
一橋大学の教授や学生など約10名が参加した質疑応答では、裁判官対話におけるEUの国内裁判所の役割、EAW制度が挑戦されることになった経緯や、EU加盟国が基本権など価値観を共有することができた背景など、様々な質問が出されました。
【イベントレポート作成】
チョン・ミンヒ(一橋大学大学院法学研究科 博士後期課程)