2025年11月7日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(Institute for Global Governance Research: GGR)はパク・ジヨン先生(一橋大学大学院法学研究科専任講師)をお招きし、第44回GGRブラウンバッグランチセミナー「有権者が形づくる米国通商政策 -トランプ政権2.0時代の世論と保護主義」を開催しました。
パク先生の講演では、特にトランプ政権下において、世論は米国通商政策形成に果たす決定的な役割が強調されました。自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)や関税に対する有権者の態度が、政治指導者の政策姿勢に大きく影響することを指摘しました。ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の調査データを用い、貿易自由化が経済的利益をもたらすにもかかわらず保護主義政策が支持を集めた核心的な謎を解明しました。本セミナーは、特に政治指導者からのエリート層のシグナルが、いかにして国民の選好を再形成し、保護主義的貿易政策を正当化し得るかを示しました。
パク先生によれば、有権者の態度と政策の立場を一致させる上で、政治的リーダーシップが決定的な役割を果たすということです。パク先生は、2016年の大統領選挙でドナルド・トランプ氏がFTAに反対した姿勢が、共和党有権者の貿易協定に対する認識にどのような影響を与えたかを論じました。さらに、2020年の選挙運動中に実施された、日米貿易協定に関する調査実験の結果を発表しました。その結果、回答者の協定への賛成・反対は、支持する大統領候補が協定を支持するか反対するかによって異なることが明らかになりました。
質疑応答では、「トランプ2.0期」における世論の変化に関する質問などが寄せられました。パク先生は、FTAや関税に対する国民の意識は、政治的なレトリックや政策の実施に伴い、顕著に変化したと説明しました。また、トランプ氏の保護主義的な措置、特に関税の使用の増加、そしてこうした政策が純粋に経済的な考慮よりも、有権者の嗜好の変化を反映したものだった点についても議論が集中しました。
結論として、パク先生は民主主義体制において有権者が貿易政策の成果形成に中心的な役割を果たすことを強調しました。本セミナーでは、エリートの示唆や党派的な結束が世論に重大な影響を与え、保護主義の強化といった貿易政策の大きな転換をもたらし得る点が浮き彫りとなりました。理論的洞察と実証的証拠を組み合わせることで、有権者・政治指導者・米国貿易政策の相互作用を明確に理解させるとともに、今後の研究や政策議論に向けた貴重な視点を提供しました。
【イベントレポート作成】
ビラル・ホサイン(一橋大学大学院法学研究科 博士課程)
【日本語訳作成】
ナイモヴ・ベジャン(一橋大学大学院社会学研究科 修士課程)
![]() |
![]() |


