2025年11月18日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、第45回ブラウンバッグランチセミナー「新時代における民主主義支援」を開催しました。講師には、リン・リー氏(全米民主主義基金東アジア・戦略的パートナーシップ担当シニアディレクター)をお招きしました。
リー氏はまず、世界的に進行する民主主義の危機について説明しました。現在、完全な民主主義体制下にいるのは世界人口のうちの6.6%に過ぎず、約40%は権威主義体制下に置かれています。民主主義国においても、民主主義の掲げる理想と人々の実体験の乖離から不満が拡大し、選挙で絶対的指導者が支持を集める傾向が強まっています。さらに、権威主義国による情報操作、監視技術の輸出、経済的威圧など、影響力の濫用が拡大しています。インド太平洋地域では、2019年から2024年の間に民主主義が後退した国の数は、改善した国の3倍に上るとされ、日本を含む主要な民主主義国でも民主主義への満足度が低下しています。
続いてリー氏は、全米民主主義基金(NED)の実績を紹介しました。NEDは、フィリピンにおける独立したジャーナリズム環境の維持、スリランカにおけるガバナンス改善の推進、ロシア侵攻前のウクライナ市民社会のレジリエンス構築などに貢献してきました。しかし近年はデジタル権威主義、偽情報、越境弾圧などといった新たな課題に直面しており、さらなる戦略の発展が求められています。具体的には、民主的な文化の養成や、戦略的レジリエンスの構築に注力する必要があります。
最後にリー氏は、日本が民主化支援においてどのようにリーダーシップを発揮できるのかを論じました。日本は、パートナーシップに基づき、実用的かつ被支援国を尊重した支援の実績と、欧米諸国と比較した歴史的軋轢の少なさから、グローバルノースとグローバルサウスの架け橋として信頼される独自の立ち位置を築いています。リー氏は日本が主導しうる領域として、地域間の橋渡し、JICAを通じたガバナンスやキャパシティ構築、AI倫理やセキュア通信などのデジタル技術支援、西側諸国による大規模支援が受け入れられにくい地域での控えめながら効果的な支援、そしてアジアの民主主義国とのパートナーシップ構築を挙げました。リー氏は、アジアの民主的結束は他者から与えられるものではなく、地域主導で築いていくことを発信すべきだというメッセージで、講演を締めくくりました。
【イベントレポート作成】
髙倉朱里(一橋大学大学法学部学士課程)
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