2025年10月13日、一橋大学グローバルガバナンス研究所(GGR)は、GGR研究トークセッション「冷戦期におけるソ連政策におけるイデオロギーの役割」を開催し、長谷川毅教授(カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校名誉教授)をゲストスピーカーとしてお招きしました。
長谷川教授は、青野利彦教授(一橋大学大学院法学研究科)、塩川伸明教授(東京大学大学院法学政治学研究科名誉教授)の冷戦史研究を参照しつつ、ソ連政策においてイデオロギーが単なる地政学的利益の正当化以上の役割を果たしたことを強調しました。第一に、イデオロギーは一党独裁や計画経済といったソ連の中核的原理を規定し、それによって「冷戦=相互に排他的な二つのイデオロギー陣営の競争」という構図を生み出しました。さらに、「反帝国主義・反資本主義」対「反共主義」という対立構図や、ソ連指導者層の世界観の形成においてもイデオロギーが中心的な役割を果たしました。また、イデオロギーは冷戦のいくつかの重要な要素に影響を与えました。自らの体制の優越性を証明するという使命は、産業化・近代化をめぐる競争を促進し、体制および中核原理の防衛の強い要請は軍拡・核軍拡競争を激化させました。一方で、ソ連における軍事費の膨張と経済の軍事化は経済停滞を招き、社会主義理念との間に深刻な矛盾を生じました。そして、ゴルバチョフ期のペレストロイカでは「階級闘争」よりも「人類共通の価値」が掲げられ、最終的にイデオロギーの崩壊がソ連の崩壊へとつながったと指摘しました。
トークセッションの後半では、長谷川教授が参加者からの質問を受け付け、活発な議論が行われました。質疑応答では、塩川教授らがイデオロギーの多様な解釈や外交政策への具体的影響をめぐって意見を交わし、1960年代以降の経済改革や市場化の潮流にも議論が及びました。
【イベントレポート作成】
髙倉朱里(一橋大学大学法学部学士課程)
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