2025年7月7日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究所(GGR)は、マシュー・D・ステファン教授(国際政治経済学・ドイツ・ヘルムート・シュミット大学/ハンブルク連邦軍大学)を講師に招き、第41回ブラウン・バッグ・ランチ・セミナー「中国はライバルの国際秩序を構築しているのか、そしてそれをどうやって知るのか」を開催しました。
ステファン教授の発表内容は、中国が共同設立者として名を連ねている国際機関や組織の本質を分析することを目的とした研究プロジェクトに関するものでした。はじめに、国際自由秩序(International Liberal Order: ILO)の役割に関する現在進行中の議論と、トランプ大統領の政策を含む最近の現象が、この枠組みをいかに弱体化させているかについて説明をしました。
ステファン教授は、ILOが本当に安定的で強固なものなのかという疑問が、中国が対抗的な国際秩序を構築するという全体的な懸念と対になっていることを指摘しました。「対抗的」な国際秩序を示す証拠はほとんどなく、むしろ「追加的」な国際秩序である見解を述べました。その裏付けとして1990年以降、中国が創設メンバーとなっている国際組織の93のケースを調査した予備的な結果を示しました。また、その中で、中国がリーダーとして成長している、または「二国間」と呼ばれるフォーラムで中心的な役割を担っているケースについても特定しています。
質疑応答では、中国に対する米国の国際秩序における役割や、中国の台頭による国際自由主義秩序と規範遵守の変化などが議論の焦点となりました。
ステファン教授の結論としては、以下の点を含みますが、これらに限定されないと述べました。権威主義的な国を含む組織を構築する中国の傾向は世界の平均より大きくないこと、 中国が設立した組織に米国を含めることは時間の経過とともに減少していること、中国政府は中国に、より中心的な地位や役割を提供する制度の枠組みを徐々に構築している可能性がある点です。
【イベントレポート作成】
サッシャ・ハニグ・ヌニェズ(一橋大学大学院法学研究科博士後期課程)
【日本語翻訳】
小山朋恵(一橋大学大学院法学研究科博士後期課程)
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