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2025年1月22日に、法学研究科の市原麻衣子教授が執筆した論考、「民主主義のイデオロギー化回避を―イラク戦争の轍を踏まないために」が地経学ブリーフィングに掲載されました。本稿で市原教授は、2024年のスーパー選挙イヤーを振り返り、民主主義の制度と価値に対する一般市民、特にグローバルサウスの人々の信頼低下を指摘するとともに、これに影響を与えた安全保障の文脈における民主主義言説の展開を詳細に論じています。市原教授はまず、ウクライナ支援に関連する言説に着目しました。欧米諸国の政治指導者は、主権侵害からウクライナを守るという枠組みを超え、「民主主義を守るための支援」という形で正当性を訴求した点を指摘しています。この言説は、ウクライナ国内の言説を反映しつつも、その実態は国防を主要な目的とし、「旗の下の結集」効果を促進するために用いられたものであり、本来の民主主義の制度や価値が脇に追いやられ、国家間対立を正当化するイデオロギーとして機能していると論じました。また、ハマスによるイスラエル攻撃に伴う人権被害が、民主主義言説を制度的・価値的側面からさらに乖離させた点にも言及しています。市原教授は、民主主義を巡る言説と政策の転換が国際社会における自由と人権の保護に不可欠であると主張し、論考を締めくくっています。