2024年12月17日、国連開発計画(UNDP)と一橋大学大学院法学研究科およびグローバル・ガバナンス研究センター(GGR)の共催、如水会協賛で、「2030年に向けて−持続可能な未来のための創造的アプローチについて、UNDP総裁と語らう−」と題した講演会が開催されました。このイベントでは、UNDP総裁のアヒム・シュタイナー氏を基調講演者として迎え、大林一広教授と中谷純江教授が司会を務めました。シュタイナー氏による基調講演では、多国間主義、地政学的な緊張、そして進歩を促す国連の役割を強調しながら、世界的な課題について考察しました。また、日本の第二次世界大戦後の復興を例に挙げ、民主主義、サイバーセキュリティ、サイバー犯罪などの問題に取り組む上での先進国の責任を強調しました。
中谷教授との対談で、シュタイナー氏は持続可能な開発目標(SDGs)について言及し、国家主義の台頭、戦争、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの影響もあり、達成率はわずか17%にとどまっていることを指摘しました。一方で、きれいな水へのアクセス、エネルギー、貧困削減といった特定の目標における進展を強調しました。その他にも、誤情報や偽情報、AIなどの新興技術についても取り上げました。シュタイナー氏は、民間団体の責任ある関与とともに、デジタルプラットフォームの慎重な対応と政府による規制の必要性を強調しました。またシュタイナー氏は、若者のUNDPへの参加を呼びかけ、日本人の参加を増やす必要性を強調するとともに、開発組織で成功するためには、技術、経済、保健、イノベーション等の専門的な知識を身につけることが必要だと助言しました。
質疑応答では、UNDPが緊急性のある危機への対応と、長期的な問題解決の間のバランスをどのように取っているかという質問が出ました。 シュタイナー氏は、パートナーシップの構築と協働することが重要な戦略であると強調しました。また、最も難しいと感じた決断について尋ねられた際は、スタッフに危険な状況下にも関わらず業務を依頼することの難しさを挙げ、例えば、新型コロナウイルスによるパンデミックの際には、リスクがあるにもかかわらず、UNDPのすべての事務所を稼働させなければならなかったことを挙げました。
最後にシュタイナー氏は、世界的な課題、SDGsの進捗、AIによる影響、そして一橋大学とのパートナーシップについて取り上げました。そして、デジタル規制やイノベーション・スキル、若者の関与、そして危機における意思決定が、持続可能な開発とレジリエントな未来を促進していくと指摘しました。
【イベントレポート作成】
ビラル・ホサイン(一橋大学法学研究科博士後期課程)
【日本語翻訳】
熊坂健太(一橋大学国際・公共政策大学院修士課