法学研究科の市原麻衣子教授が共同署名した「サニーランズ・イニシアティブ インドネシア声明(Sunnylands Initiative Statement in Indonesia)」が2025年2月25日に発表されました。声明の全文は以下の通りです。
サニーランズ・イニシアティブ
インドネシア声明
2025年2月25日
オーストラリア、日本、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、台湾、タイ、東ティモール、米国の有識者は、2025年2月24日から25日にかけてインドネシアに集まり、インド太平洋地域における民主主義規範とガバナンスを推進するための課題、機会、行動計画について協議した。
2020年におけるカリフォルニアでの初会合から5年を迎えるにあたり、参加者は「インド太平洋における民主的パートナーシップ強化のためのサニーランズ・イニシアティブ(Sunnylands Initiative on Enhancing Democratic Partnership in the Indo-Pacific)」が依然として重要であり、民主主義がもたらす恩恵は明らかであるという点で意見が一致した。すなわち、民主主義は他のいかなる統治体制よりも、安全、経済成長、安定性、世界的な繁栄をもたらす。
しかし、民主的なガバナンスへの挑戦は間違いなく増大している。2024年にはかつてないほど多くのアジア人が選挙で投票したが、地政学的緊張と経済的不安の高まりにより、民主的なガバナンスの強化よりも相対的な利益と権力の集中が強調されるようになった。これはテクノロジー、汚職や腐敗の継続、市民社会空間の閉鎖、そして民主主義への信頼を損なうことを目的とした悪意ある主体が拡散する偽情報によってさらに悪化している。また、民主主義規範を支持する米国のリーダーシップの将来に不確実性があることも指摘された。
一方で、参加者は前向きな展望も指摘した。民主的なガバナンスはインド太平洋全域の市民と有識者にとって依然として優先事項である。これまでの取り組みを通じ、自由な選挙、人権、女性のエンパワーメントが地域の多様な宗教や文化と両立することが示されてきた。
この事実は、サニーランズ・イニシアティブと連携して始まった革新的なプログラムに明らかである。これらのプログラムは、民主的なガバナンスを推進するために地域的な主体性を強化することを目的としている。
- 韓国の「インド太平洋民主主義フォーラム(Indo-Pacific Democracy Forum)」は、韓国の地域における民主的なガバナンス支援への関心を高め、そのような取り組みへの官民からの資金調達を促進している。
 - 日本の「危険に直面する民主活動家プログラム(Democracy Advocates at Risk program)」は、インド太平洋8カ国から数十人の学者を集め、生命の危険にさらされている民主主義擁護者を支援している。
 - 日本を拠点とする「普遍的価値のためのインド太平洋プラットフォーム(Indo-Pacific Platform for Universal Values)」は、民主的指導者、市民社会組織、メディアのネットワークを構築している。
 - 日本の国会議員と韓国の国会議員の間の新たな議会レベルの交流
 - 太平洋諸島フォーラム(Pacific Islands Forum)加盟国の主権強化を目的とする新たな地域協力とパートナーシップ
 
サニーランズ・イニシアティブの5年間の成功を認識し、参加者は地域における民主的なガバナンスを強化するための取り組みを調整し、ベストプラクティスを共有するための不可欠なプラットフォームとして、この取り組みへのコミットメントを再確認した。イニシアティブの有識者による影響力のある発信や、日本、韓国、太平洋諸島フォーラム、議会間対話による地域的な取り組みを通じて、サニーランズ・イニシアティブは2020年に掲げた目標を達成してきた。そして、今後もさらなる課題が待ち受けている。
インド太平洋全域のパートナーは、サニーランズ・イニシアティブの当初の目的を推進するため、主体性をもって取り組みを実施してきた。一方で、インドネシアでの会合において、取り組みを支援する米国の役割は、その招集力(convening power)から技術的専門性、地政学的影響力、資源に至るまで、依然として絶対的に不可欠であることが強調された。インド太平洋の民主的なガバナンスの強化に対する米国の継続的な支援は、米国の国益にかなうだけでなく、米国の世論とも一致するだろう。最近の調査によると、米国人の77%が「米国は国際問題において可能な限り人権と民主主義のために立ち上がる道義的義務がある」という意見に同意している。
世界的な不確実性の中、今こそが民主的な連帯とリーダーシップが求められる決定的な瞬間であり、後退するときではない。サニーランズで検討された取り組みの戦略的影響を高めるために、参加者は以下のことに合意した。
- 絶えず変化する政治的情勢の中でも、共通の目的意識を示し続けること
 - 特に多様な立法府のグループと民主主義擁護者の間の連携強化を通じて、変革を促す機会に焦点を当てること
 - 若者や女性、また宗教組織、教育機関、シンクタンクのリーダーなど重要な利害関係者との関与を強化すること
 
民主的な連帯は現在の選挙で選出された指導者だけの問題ではなく、社会と人々の間の共有価値の問題であることを認識し、サニーランズ・イニシアティブは2025年にソウルで計画会議を、2026年に本会議を再び開催することを決定した。
署名:
| デヴィ・フォルトゥナ・アンワル
 (Dewi Fortuna Anwar) ハビビ・センター理事会議長  | 
デレク・ミッチェル
 (Derek Mitchell) 戦略国際問題研究所上級顧問  | 
| コンチータ・カルピオ=モラレス
 (Conchita Carpio-Morales) フィリピン共和国元オンブズマン  | 
ジャレド・モンドシャイン
 (Jared Mondschein) シドニー大学米国研究センターリサーチディレクター  | 
| キャスリーン・ドハティ
 (Kathleen Doherty) アネンバーグ財団信託(サニーランズ)最高戦略責任者  | 
マーティー・ナタレガワ
 (Marty Natalegawa) 元インドネシア外務大臣  | 
| クトゥト・プトラ・エラワン
 (I Ketut Putra Erawan) 平和民主主義研究所所長  | 
オーイ・コック・ヒン
 (Ooi Kok Hin) 連結で公正な選挙のための連合(マレーシア)元エグゼクティブディレクター  | 
| マイケル・J・グリーン
 (Michael J. Green) シドニー大学米国研究センターCEO  | 
ファディー・ピツワン
 (Fuadi Pitsuwan) スリン・ピツワン財団代表  | 
| ヴァージリオ・ダ・シルヴァ・グテレス
 (Virgilio da Silva Guterres ) 国際オンブズマン機構東ティモール人権・正義オンブズマン  | 
ディナ・プラット・ラハルジャ
 (Dinna Prapto Raharja) シナジーポリシーズエグゼクティブディレクター  | 
| 市原麻衣子
 一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター、大学院法学研究科、 国際・公共政策大学院教授  | 
アミナ・ラスル
 (Amina Rasul) イスラム民主主義センター(フィリピン)代表  | 
| リン・リー
 (Lynn Lee) 全米民主主義基金東アジア・地域プログラムディレクター  | 
ジェイコブ・スレシンジャー
 (Jacob Schlesinger) 米日財団代表理事  | 
| イー・スクジョン
 (Sook Jong Lee) アジア民主主義研究ネットワーク代表、インド太平洋民主主義フォーラム代表  | 
シン・ガクス
 (Kak-soo Shin) 韓国元外務次官  | 
| ルー・イェジョン
 (Yeh-Chung Lu) 台湾国立政治大学国際関係学院教授・副学部長  | 
高須幸雄
 普遍的価値のためのインド太平洋プラットフォーム代表、 元国連日本政府代表部大使  | 
| ユ・ヒョンソク
 (Hyun-Seok Yu) 元駐マレーシア韓国大使  | 
【日本語翻訳】
中島 崇裕(一橋大学大学院法学研究科修士課程)


