民主主義・人権プログラム
【GGR ブラウンバッグランチセミナー】ミルクティーは一日してならず ―国境を超えたネットワークとミルクティー・アライアンスの高まり
日にち2024年6月7日
時間12:40 – 13:40
開催場所マーキュリータワー3302
イベント概要

2024年6月7日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究所(Institute for Global Governance Research: GGR)は、講師に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程在籍しているトゥワノン・パッタラタナスット氏(Tuwanont Phattharathanasut)をお迎えし、「ミルクティーは一日にしてならず -国境を越えたネットワークとミルクティー・アライアンスの高まり」と題して、第29回GGRブラウンバッグランチセミナーを開催しました。

 

パッタラタナスット氏はまず、2010年から2021年にかけて東アジアと東南アジアを席巻した若者主導の抗議デモの波について、その背景を説明しました。彼は、2012年にジョシュア・ウォン氏(Joshua Wong)が率いた “New School for Democracy” などの例を挙げながら、2010年代初頭における国境を越えたネットワークの確立について考察しました。また、台湾の「ひまわり学生運動」、香港の「雨傘運動」、日本の「自由と民主主義のための学生緊急行動(Students Emergency Action for Liberal Democracy: SEALDs)」の2015年における協働の取り組みやネットワークについても言及しました。

 

これら運動のソーシャルメディアの活用(しばしば「ミーム戦争」と呼ばれる)を強調したファッタラタナスット氏は、組織化と情報発信におけるインターネットが、極めて重要な役割を持つことを紹介しました。さらに、既存の活動家が2020年に団結し、国境を越えた若者のネットワークを形成するようになったことを概説し、「ローマは一日にして成らず」ということわざを用いながら、これらの地道な地盤固めの必要性を述べました。続いて、ミルクティー・アライアンス(Milk Tea Alliance: MTA)の発展について議論が展開され、タイの自由青年運動に端を発し、香港や台湾の活動家とのつながりを含め、その大きな影響力が強調されました。加えて、セミナーでは、国境を越えてMTAの影響力を高める上で、連帯キャンペーンが果たした役割の大きさにも言及しました。

 

結論として、セミナーでは、MTAの出現は、自然発生的な活動ではなく、意図的な連帯構築によって成し得たものであると示され、ソーシャルメディア・プラットフォームを超えた持続的な協力の必要性を強調しました。活発な議論が交わらされ、参加者からは、NOYDA(Network of Young Democratic Asians)への日本の取り組みや、国境を越えた協力体制に関連する質問が出されました。社会運動理論に立脚したこのセミナーは、東アジアおよび東南アジアにおける、国境を越えた若者のアクティビズムの高まりを思わせる強固な理論的枠組みをもたらしました。さらにセミナーでは、国境を越えた意義のある変化を促進するため、集団行動の重要性が述べられました。全体として、このイベントはトランスナショナルな若者たちのアクティビズムの複雑さについて貴重な洞察を提供し、この分野におけるさらなる研究と協力のための基盤を整えました。

 

【レポート作成者】

ニン・テ・テ・アウン(一橋大学国際・公共政策大学院修士課程)

中島崇裕(一橋大学法学研究科修士課程)

サッシャ・ハニグ・ヌニェズ(一橋大学法学研究科博士後期課程)

 

【日本語訳】

熊坂健太(一橋大学国際・公共政策大学院修士課程)