2024年6月3日、一橋大学グローバル・オンライン教育センターとグローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、ロバート・オッペンハイマー博士(Robert Oppenheimer)の孫でオッペンハイマー・プロジェクト(Oppenheimer Project)の創設者であるチャールズ・オッペンハイマー(Charles Oppenheimer)氏の講演会、「世界の繁栄を促進する原子力の平和的利用の推進」を開催しました。司会は一橋大学の秋山信将教授が務めました。
イントロダクションに続いて、チャールズ・オッペンハイマー氏はオッペンハイマー・プロジェクト設立の動機について語り、核兵器の脅威に対処し、核問題での平和的協力を果たすという祖父の価値観を促進していきたいという思いを強調しました。また、原子力の安全な利用を通じて気候変動問題と闘うという意志を表明しました。司会の秋山教授は、原子力技術が有害な目的に使用されることなく、平和的に使用されることを保証できるかという質問から議論を始めました。オッペンハイマー氏は、歴史的に核問題は兵器が中心だったが、21世紀は原子力の平和利用を通じて気候変動に対処することに焦点を移さなければならないと指摘しました。続いて、米露中の軍拡競争が激化する中で、核拡散を抑制することは可能かどうかに関する議論が行われました。オッペンハイマー氏は、気候変動という共通の脅威に対処するためには、これらの大国間の緊張を緩和し、集団的協力を促進することが不可欠であると述べました。また彼は、コンセンサスと危機感を構築するために、大国間による対話とコミュニケーション・プラットフォームの重要性を強調しました。
続いて、国内関係者間の予算配分や、核問題に対する米国のコミットメントの問題に議論が進みました。オッペンハイマー氏は、壊滅的な戦争後の強固な日米同盟を、相互理解と平和がいかにして達成されるかの一例として強調し、それが他の当事国の機運を高め、同様の取り組みへの参加障壁を低下させる可能性を示しました。対談では、核融合技術の将来にも議論が及びました。オッペンハイマー氏はその可能性を認めつつも、予算制約に直面している実用的な核分裂技術を見落とさないことの重要性を強調しました。また、メディアの在り方についても議論が行われ、原子力技術に関する誤った情報によって致命的な誤解を招き、投資判断にも影響を与える点が指摘されました。
最後に、オッペンハイマー氏は広島と長崎、そして福島の原発事故が日本国内をパニックに陥れた過去を取り上げ、日本の人々、特に若い世代に対して、科学的事実を信頼するよう呼びかけました。講演の最後には質疑応答が行われ、オッペンハイマー氏は、原子力技術における人工知能(AI)の展望、炭素産業の管理、日本と台湾が中国に対して核抑止力を追求する可能性、科学と政治の交錯、原発立地の公平性、被曝労働者が直面する人権問題など、さまざまなトピックに言及しました。
【レポート作成者】
ラクウォン・パキット(一橋大学法学研究科博士後期課程)
【日本語翻訳】
熊坂健太(一橋大学国際・公共政策大学院修士課程)