要旨
2024年3月4日に、法学研究科の秋山信将教授が共同で執筆した論文、「衛星画像を用いた中国の戦略核戦力増強の現状に関する分析」が『東京大学先端科学技術研究センター創発戦略研究オープンラボ』に掲載されました。本論文では、中国が内陸部で進めている大陸間弾道ミサイル基地建設の状況を分析し、その進捗状況を明らかにするとともに、グローバルな軍事バランスに及ぼす影響について考察しています。まず、新疆ウイグル自治区の哈密におけるサイロ建設状況について、衛星画像を利用して分析した結果、サイロに大陸間弾道ミサイルが装填されているかは明らかにならなかったものの、ロシアに類似するサイロ発射型の開発が推測できると指摘しました。さらに、中国の核戦略の変化について、2030年代半ばにおいては、核優越、あるいは最大限抑止の確立が中国の目標に含まれている可能性は排除できないと論じました。最後に、中国の核態勢と米中の軍事バランスについて5つのシナリオを提示しながら考察し、地域レベルでも相互抑止を制度化するような軍備管理の成立の重要性を強調しました。