2024年2月21日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、ダヴィデ・バレラ博士(トリノ大学(イタリア))を講師に迎え、第25回GGRブラウンバッグランチセミナー「非国家手続きによる紛争解決-イタリアの事例」を開催しました。
セミナーは、国家が暴力と法執行を独占していることを認めた上で、紛争解決において一般にみられる不参加を探ることから始まり、次に実験的方法論と紛争解決について掘り下げました。博士は、コーカサス、東アフリカ、西バルカン、南ヨーロッパなど多様な地域の事例を挙げ、特にシチリア島に焦点を当てながら、インフォーマルあるいは自己管理型の司法制度が世界的に普及していると強調しました。博士は、映画『誘惑されて棄てられて(原題:Sedotta e Abbandonata(イタリア語))』を引用し、シチリア人が紛争解決のためにマフィアに頼る理由を説明しました。セミナーの中心的な主題として、国家司法とインフォーマルな制度との選択が提示されました。
本研究の画期的な貢献の一つに、従来の研究のように発展途上国に注目するのではなく、イタリアにおいて新たなケーススタディを行ったことが挙げられます。方法論としては、地理的に多様性のある代表的なオンライン・サンプルによって、様々な紛争シナリオにおける回答者の行動を評価するビネット実験が用いられました。バレラ博士は、インフォーマルな司法の微妙な領域について掘り下げ、婚約破棄から殺人のような州法上の権限への対応といった、刑法を超えた問題にまで及ぶ領域を検討しました。フォーマルな法秩序とインフォーマルな法秩序の共存が観察され、法的多元主義に根ざした潜在的な説明として、アクセシビリティの問題(資源の不足)、国家機関への不信(官僚主義、腐敗)、紛争解決に影響を与える地域の慣習が挙げられました。実証では、インフォーマルおよびフォーマルな司法の変数に対し無作為化操作を行い、紛争間の司法の選択における類似性と、操作変数の影響における興味深い非対称性(特に、資源不足がインフォーマルおよびフォーマルな司法の選択に及ぼす負の影響)が明らかになりました。
質疑応答では、教育、ジェンダーの力学、不信の多様な表象を明確にし、政府や地元の伝統に対する不信の根源を探る質問が挙げられました。また、地理的な差異や南イタリア特有の懸念を考慮した上での和解や調停といった代替的手法についての提案も出されました。要約すると、バレラ博士のプレゼンテーションに対して、国家の役割、暴力につながる潜在的な不均衡、非公式の司法制度への選好について懸念が提起されました。特に名誉棄損のようなケースにおいて、イタリアの文化的規範や信条を考慮し、司法制度に対する国民の不信の因果関係を示すことに重点が置かれました。こうした複雑な力学についてさらに探求を深める必要性があると論じられ、イベントが締めくくられました。
【イベントレポート作成】
アウン ニン・テ・テ(一橋大学国際・公共政策大学院修士課程)
【日本語翻訳】
中島崇裕(一橋大学法学部学士課程)