2023年11月14日、一橋大学グローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は小林哲郎(早稲田大学政治経済学術院教授)を講師にお招きし、GGRトークセッション「日本人は権威主義国の非民主的ナラティブに説得されるか」を開催しました。
小林教授は、まず世界的現象としての民主主義の後退と権威主義の台頭に触れた上で、権威主義国家からのシャープパワーに対応する方法が今後より重要になっていくと述べました。そこで、従来の説得の仕方に代わって、近年はストーリーを通じてメッセージを伝達するナラティブの方法が注目を浴びていると説明しました。教授はナラティブの中でも、民主主義的価値や民主主義社会に危険を及ぼす非民主的ナラティブに着目し、日本国民を対象にした三つの実験から得られた洞察を共有しました。一つ目は、国民に対するナラティブの効果及びナラティブに影響されやすい層を特定する実験で、人の属性に左右されない広範囲にわたってナラティブが有効性を持つとの結果が得られました。二つ目は、民主主義国家における主流派ナラティブと非民主的ナラティブは相殺できるのかを調べる実験で、その結果は相殺は可能であり、そこで重要なのは情報に触れる順序でした。最後は、ストレートニュースとナラティブの有効性を比較をする実験で、非民主的ナラティブの方が非民主的ストレートニュースより大幅に有効であることがわかりました。
質疑応答セッションでは、民主的なナラティブと非民主的ナラティブの相殺効果に対する情報量の差の機能、ナラティブの有効性における世代差要因の効果、受信者のナラティブ及びそれを構成する感情に対する耐性の可能性などに関する質問が提起されました。小林教授は、ナラティブの組み合わせも視野に入れつつ、いかなるナラティブがより有効であるかに主眼をおいて研究を進める必要性を論じました。
【イベントレポート作成】
金 浚晤(法学部 学士課程)