2023年9月14日、グローバル・ガバナンス研究所(GGR)は、ニディア・レモリーナ・レオン(シンガポールマネージメント大学AI・データガバナンスセンター業界関係責任者)を講師にお招きし、SMU/GGR合同トークセッション「AIガバナンスと規制 ―世界とアジアの視点」を開催しました。
セッション冒頭では、アジアに具体的な焦点を当てる前に、インテリジェンス規制のグローバルな課題に関する議論が行われました。レモリーナ・レオン教授は、AI技術の発展と倫理的利用を促すためには、政策、規制、フレームワークなどのAI技術のガバナンスが重要であると指摘しました。プライバシー、管轄権の限界、倫理的価値、ガバナンスの基本的な定義など、技術の導入に関するさまざまな考え方や価値観といった課題が議論されました。教授はまた、金融分野においてはアルゴリズム取引の利用が70年代から始まっていたものの、今日になって初めて人工知能の倫理的利用が議論され始めたと指摘しました。トークセッションの主要な論点は、自然言語プログラミングにおいて、性別に特有な意見の結果が不正確で、開発における差別やバイアスの懸念につながるという問題でした。データの制約上、これらのアルゴリズムはジェンダーバイアスをもつ傾向にあるため、依然としてアルゴリズムの結果よりも人間による判断が好まれると論じました。したがって、責任ある、倫理的で、説明責任のあるアプローチを確保するためには、学際的なアプローチが重要であり、これによってモデルが非倫理的でなく、結果が差別的でないようにすることができると論じました。そしてこれこそが、ガバナンスに求めるものだと指摘しました。
レモリーナ・レオン教授はまた、イノベーションと規制のバランスをとることや、プライバシー、サイバーセキュリティ、新しいアーキテクチャへの適応といった潜在的なリスクを管理するという課題を強調しました。また、人工知能の導入には常に人間が介在するべきであると指摘し、分野、ビジネスの規模、場所、市場などによって導入の目的が異なるため、分野ごとの調整を考慮する必要もあると論じました。
質疑応答セッションでは、データベースの制約によるAIのモデルにおける差別的効果や、特にAIを導入する金融アーキテクチャの構造においてその起源についても質問が提起されました。これらの質問に対して、レモリーナ・レオン教授は、ジェンダー、人種、特性など、当局によって除外されがちであるため、より多くのインクルージョンを生み出すために、アルゴリズムが積極的な方法で差別化できるように重みづけを促進する必要性を強調し、これによって性別、人種、またはその他の特徴に基づいてしばしば排除されてきた要素に関わらず、包括性を確保することができると論じました。差別的な結果は管轄権に応じて多くの分野に影響を及ぼしうることから、これは必要不可欠だと指摘しました。
【イベントレポート作成】
スラストリ(国際・公共政策大学院 修士課程)
【翻訳】
中島 崇裕(法学部 学士課程)